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ルート日常  作者: まれ
11/15

ルート⑦ 11月の文化祭(後編)

二話目

「そういえば、二人ともお昼は?」

「まだです」

「じゃあさ、うちのところ来てもらおうよ、陸人」

 それいいねと天ノ川先輩の同意を得たことで自分たちの店がある中庭まで来た。

 実はすごいことが起きていた。いない間にものすごい行列が中庭一面に起こり、まさにお昼戦争と言ったところか。行列はうちのクラスのような主食になるものをやっているところが中心になっている。

「これ残ってるかな?」

 俺はこの列を見てそう言葉をこぼした。

「まあ並ばなきゃ大丈夫だろ」

 そう言って、空は俺たちの分の焼きそばパンを取りに行った。

 空がなんか順番抜かしとかを超えるほどの人数を順番抜かししていてクズに見えてきた。

 空が持ってきた焼きそばパンの数は四つ。内訳は俺と空が一つずつ。残る二つが天ノ川先輩の分らしい。一応年上の人に頼まれてないのに数を増やすとは空やりおる。まあ、大丈夫か。先輩はあの性格だし、ペロっと食べるんだろうなとふと先輩を見た。すると、まさかのまさかだ。もう二つ目の焼きそばパンを食べきったところだった。俺、まだ食べてない…。

「二人とも私追加で買ってくるね」

 先輩はどこかに行った。

 しばらくして、先輩が帰ってきた。腕には大量のアメリカンドッグ。その数二十本。いや、多すぎでしょ。いくらなんでも食えるはずがない。

「先輩、それ食べきれるんですか?」

先輩は満面の笑みでこう返してきた。

「当たり前でしょー。食べきれる分だけ買わないともったいないでしょ?」

 俺たち二人はそんな先輩にちょっといやかなり内心引きながら頷いた。

 



 しばらく休憩してから、空は例の模擬店へと戻っていった。

 俺はというと天ノ川先輩と別れ、ある生徒というか先輩に尋ねられていた。

 何を訊かれたのかというと、うちのクラスの模擬店の場所だった。

「ありがとうございます。まさか、お声をかけた方がごクラスの方とは」

 この人の名前は水無月麗、先輩。ある会社のご令嬢でおっとりとした性格みたいだ。そしてとんでもなく方向音痴らしい。だから、場所を訊いてきたようだ。これでも一応この学校の生徒なのだが、迷子になるとは今までよく大丈夫だったな。

「いえいえ、それより早く買ったほうがいいですよ。うち、人気なので」

 ハッとそうでしたという感じで並ぶ水無月先輩。

「せっかくなのでご一緒に並んでいただけませんか?」

 まぁいっかと軽い気持ちで彼女に付き合うことにした。

 それから五分後。ようやく注文にありつけた。

「焼きそばパンなるものをお一つくださいな」

 水無月先輩は優雅な言葉遣いで注文し、クラスメイトの男たちは一瞬固まっていた。

 決して、俺が隣にいたというわけではないだろう。

「はい。こちら、焼きそばパンです」

 うちの商品お渡し係がそう言って水無月先輩に焼きそばパンを渡した。

 俺たちは近くのベンチに座ることにした。

「これが噂の焼きそばパンですのね。わくわくします」

 先輩は目をキラキラ、キラキラさせて焼きそばパンを見つめていた。

「水無月先輩は焼きそばパンは初めてなんですか?」

「ええ。近頃、噂はよく聞きますが食べるのは初めてです」

 まさか、焼きそばパンを知らないなんて。さすが、お嬢様といったところか。

「これ、おいしいですね。でも、ちょっとカロリーが高いと思います」

「まぁ、炭水化物×炭水化物ですから」

 

「あ、陸にぃだ!」

 そんな元気で明るい女の子の声がどこからか聞こえてきた。

「ここだよここだよ」

 声が聞こえた方に顔を向けると空の妹・あかりちゃんがいた。

 後ろには遅れてやってきた空たちの両親であるおじさんとおばさんがいた。

「ねえ陸にぃ、その人誰?」

「えっと…」

わたくしは水無月麗と申します。天道くんには迷っていたところを助けていただきました。以後お見知りおきを」

 水無月先輩は優雅な立ち振る舞いと言葉遣いで自己紹介をした。

 あかりちゃんは水無月先輩に圧倒されて、あっけらかんとしている。

「では、天道くん。わたくしはそろそろ行きます。またいつか、ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう」

 俺は思わず普段使わない言葉で返してしまった。

「何あの人!めっちゃきれいなんだけど!」

 あかりちゃんは水無月先輩に骨抜きにされているようだ。

「それより、陸にぃ。お兄ちゃんとお店は?」

「それならあそこで着ぐるみ着てるよ」

 今朝悩んでいたもう一つの着ぐるみ。茶色のカウボーイハットを被り、両手にヘラを持ち胸にYの文字が入ったキャラクター。やき〇〇〇ンマンというらしい。

「なんでそれ?」

「さあ俺にはわからん」

 まあ多分うちで扱っているものと同じだからだと思うんだけど、でもなんでそれ感は正直ある。

 あかりちゃんはすぐに兄・空のもとへ駆けた。俺もちょっと後から追いかけた。

「おっ!あかり―。早くしないともうすぐ売れきれるぞー」

「っということは売れ行きは好調な感じか?」

「陸人!そうだね。売り切れるのは時間の問題だと思う」

「さすがだな。主食になるやつはやっぱり強いな」

「お兄ちゃん、おごってよ」

 あかりちゃんが空に対して家族や友達との相当仲が良くないとできないようなことを言った。仲の良い家族。それも兄妹ならよくあるんだろうが生憎と今の俺に家族はいない。少し寂しさが込み上げてきた。



「っしゃー、売り切ったぞー‼」

 うちのクラスの男子生徒が大声でそう叫んだ。と同時に学内放送が流れる。

『以上で文化際を閉会します。ご来場の皆様は速やかにお出口の方へ係員の指示に従ってお進みください。また、集計を行いますので各クラスの実行委員は至急生徒会室に売り上げ表を持って集合してください』

 各クラスの実行委員たちが一斉に紙を持って生徒会室の方へ走り出す。


五分くらい経った頃だろうか。再び放送が流れる。

『ただいまより、二年生の売り上げ順位を発表する。第四位、二年一組。第三位二年三組―』

 三位は開始早々すごい売り上げを誇っていたポップコーンの三組だった。うちのクラスはこれで上位確定だがかなり接戦だったんじゃないかと思える。

『―栄えある第一位は二年、四組‼』

 四組⁉ってもしかしてアメリカンドッグの?

『ということで、第二位は二年二組という結果になったわけですが、なんとすごい接戦だったそうで、売上金額が数百円差!まさに一つ二つの差だったみたいです』

 えー。じゃあ、売り切った俺たちは向こうの売り上げ次第だったのか。ってか、天ノ川先輩のやつ貢献しすぎだろ。いやまあ文句はないけど、知り合いの売り上げで負けてるとなるとさすがに悔しい。

 クラスのみんなは売り切ったことでの嬉しさと僅差で負けたことの悔しさで変な感じになっていた。


まだ続きます

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