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動画

作者: 稲作稲穂

動画


 「みなさんこんにちは!我々は”おカル調査隊”でーす!」

スマホ片手に青年は動画を撮り始めた。その背後には3人の若者が映っていた。

「今日はなんと!」

『なんと〜』

「廃寺でかくれんぼをしてみた!です」

「え?かくれんぼ?マジで言ってんのシン」

「もちっすよ先輩。今日来たここは調べたとこによるとマジで出る場所らしく、それもこの境内でかくれんぼをすると何かしら怪奇現象が起きると言うわけなんですよ」

「うわ、マジかよ俺ぶっちゃけお化けとか怖く無いんだけど、マジで出んの?」

「マムちゃ〜んそんなこと言ってほんとは怖がりなの視聴者さんたちに知られてるよww」

「は!?何言ってんだよ!そんなんじゃねえし、、」

「あ、そうだ!忘れる前に自己紹介しないと、カメラ担当のシンです。はい先輩も」

カメラの画面を3人の方に向けると左から自己紹介を始めた。

「この調査隊のリーダー。チョコです。」

「うっす!じゃあ次は俺!マムちゃん、マスコット担当っす。今日はバシバシゴーストゲットしてやるぜ」

「おおーマムちゃん威勢いいですね〜最後は、今回のゲストのご紹介!どうぞ!」

「アカネです」

「、、、、、、え?それだけ?ちょっとアカネくんクールすぎるよwもっとテンション高めで行こうぜ!」

「そうですよ。ちなみにアカネくんはほんとに霊感がある方でチョコ先輩が今回のために、大学で見つけて来てくれたんです」

「そ、だから今日は期待してるからねアカネくん」

「まあ、はい」

「あはは、変わらずクールですね〜では本題に入りましょう、皆さんいいですか?」


 彼らがここにきた目的は、先日、視聴者から寄せられたメッセージだった。ある村にある廃寺に入り、かくれんぼをする事、それも朝が来るまでに必ず四人以上でやること。などの条件が揃えば怪奇現象が必ず取れると言うもので、これまで心霊系の動画配信を始めてから一年近く経っても全く見どころもあるものを撮れてこなかった彼らにとって、好機と張り切っているのだ。


「じゃあ、早速、中に入ろっか」

「そうですね。ここで話してても何も起きないですからいきましょうか!」

「にしても、シン。お前、めっちゃ張り切ってんじゃん!」

「そりゃ、今回は本物の霊感ある人もいるわけですからやる気しかありませんよ」

「ねえ、質問だけど君たちは今まで何回こんなことやってきたの?」

「そうね、30回くらいかしらかね。そうよねシン」

「まあ、一年近くもやってればそれぐらいにはなりますね。まあ、全部何も映ってないですけど、、」

「お!もしかして俺らになんかついてるとかって感じ?」

期待の目でアカネを見る3人。

「、、、いや」

「なっなんだーいないのかーざっ残念」

「何よ期待しちゃったじゃない」

「あ!皆さんここがスタート位置ですね」

と四人は鳥居の前に立つと送られてきたメッセージを再度確認した。


 かくれんぼのルール

・鳥居の前で鬼を決めること、決め方はなんでもいい

・鬼が決まったら鳥居の右側の柱で10数える、鬼は鳥居をくぐってはいけない

・鬼以外の子供たちは鳥居から境内に入り隠れる


と始め方のやり方が書かれており、追伸で”それ以外は君らの知っているやり方で構わないよ”

と視聴者からのメッセージは終わっていた。


「んま、始めてみようぜ。鬼はじゃんけんでいいだろ?」

そして、四人は鬼を決めて鬼になったマムちゃんは柱に向かった。

「マムちゃん待ってください。皆さんも動画ってこと忘れないでくださいね。ハイ、カメラそれぞれ持って」

「ワーオ!シン、これって360度撮れるカメラじゃん。どうしたの?自腹?」

「違いますよレンタルです。流石に4人分は懐が痛いですってばww」

「でも、レンタル代はシンがもちろん持ってくれるのよねw」

「え!?チョコ先輩そこは経費みたいなのでどうにかなりませんか?」

「これが終わって、いいのが撮れてたらねー」

「そんな〜」

肩を落とすシンと冗談だと笑い飛ばすチョコと静かなままのアカネの3人は鳥居をくぐり、ガハハと釣られて笑うマムちゃんは鳥居の下で数え始める。

 


 するとどこからか子供たちの声が生暖かい風に乗って聞こえてきた。

ーカクレンボ

ーかくれんぼ、オニダ

ーカクセ、カクセ

が、誰も気が付く者は居なかった。

 

 

 かくれんぼが始まり、チョコはまず寺の中に入った。中は風化してしていて畳や壁などはボロボロだったが、その一番奥に一際輝く仏像があった。

「最初だしここでいいか、私一人ってのも心細いけど、、ったくあの二人始まってすぐ裏に逃げるなんて卑怯な奴ら」

チョコは一番奥に向かい、仏像の下に隠れに行く。

「ん?なんかここ綺麗過ぎない?、、埃ひとつないんだけど、、こわ」

奇妙に思ったチョコはそこに隠れるのに躊躇したがもう10秒たったようで、外からマムちゃんの声が聞こえ、慌ててその場に隠れた。


 次にシン。彼はアカネと共に寺の裏側に回っていた。そこには6畳ほどの壁のない柱と屋根だけの建物があり、その中には小さな祠があった。

「ここってなんですかね?」

「本堂だよ」

「本堂ってなんですか?」

「そこの小さな祠を祀ってるとこ、つまりこの寺の中心って感じ」

「へー表にあった建物じゃないんですね。そっちの方がデカかったからてっきりそっちかと」

「大抵こんなもんだよ、君たちはそういうのに詳しいわけじゃないのか」

「あっいや、自分は別の目的でこのサークルに入ったもんなんで、、あっ!マムちゃんの声だ!急いで隠れましょう」

「ああ、、」

アカネは祠の後ろにあった隙間に、シンは本堂の裏側に隠れた。


 マムちゃんが2回目の”もういいかい”と声をかけたが誰からも返答がなく、この静かな状況に彼は怖がりを隠すかのように大きな声を出した。

「ったく、、お前ら!もう探しに行くからな!」

マムちゃんは鳥居の外側から境内に入り、10メートルほどの参道をゆっくりと歩き、左右を探しながら目の前の建物に向かった。

「まずはここからが定番だろうな。おーい!誰かいるか?」

入り口を開け、声を掛けるが静まり返る建物内は人の気配を全く感じられなかった。

「ってこんなんではーいなんていうやついねーよな、、、、やっぱこれって建物の中に入らなきゃいけないかー」

渋々中に入り、手元のライトで建物内を照らす。

「うわ、、中荒れ放題じゃん。もうやだなー」

奥の方まで確認をしたが誰もいなかったので、彼はそのまま外に出た。

「えー皆さん、ここには誰もいないようなので、次いきまーす」

カメラに気を利かせながらも彼は裏の方に回った。


 そこには池があり、彼は何かに足を取られ、池の中に入った。中はヘドロまみれで悪臭を放っていた。

「うわ、、くっセーな最悪だぜ、にしても3人ともどこに行ったんだよー?10秒しか数えてねえはずだけどな」


ーピコン!


「うわ!びびった〜、、あ?シンからか、、マムちゃんどこにいますか?って逆にお前らがどこにいんだよ!」

とシンに電話をする。

『あ?マムちゃん?よかったです。そっちに繋がったっす!』

「シン!おまえら今どこにいんだよ!全然見つかんねえんだけど」

『大丈夫ですよ。それよりちゃんと動画配信してくださいね』

「わかってるけどよ、、お前ら見つかんな過ぎてつまんねえだろ」

と二人は割と大きめの音量で会話を続けていたが、電話以外でシンの声が聞こえないことにマムちゃんは疑問を感じていた。

こんな静かな夜に響くのが自分の声だけなんて不気味だった。

『それじゃあ、マムちゃんもうちょっと頑張ってくださいねww』

「おい!待ってくれ!なんかここおかしいんだよまじで!お前らほんとにどこにいんだよなあ!」

雰囲気に耐えられなくなった彼は必死に助けを求めたが、次に聞こえて来たのは今まで敬語ばかりの後輩の声ではなく、ガラガラのおっさんの声で

『コッチニコイ!』


ープツ


「、、はあ?、、、どういうことだよシン!おい!ったくあの野郎、何しやがった、クッソ全然繋がねえ!」

とマムちゃんの周りを急に生暖かい霧が出始め、背後からは子供の笑い声と誰かの視線を感じた。

「ヒイ!だっ誰かいんのか?なあ?チョコ?アカネ?、、悪ふざけとかすんじゃねえよ!、、シンだろ?おい誰か、、」

助けを求めるようにスマホの配信動画を見ると、いつの間にか砂嵐の画面になっていて、その中心に黒い人影がこちらをじっと睨んでいた。

「うわ!」

驚いて後ろにのけぞった彼。その背中を掴むように背後から複数の白い手がのびる、必死になってもがくが全く意味がなく、彼は池の方に連れていかれた。



 火が昇り、その足で警察に話したがマムは池から見つかることはなく、行方不明者として捜査されることになった。その後、僕らは憔悴しきっていて大学どころではなかった。翌日、アカネくんから動画が届いた、そこで僕らは衝撃的なことを聞かされた。

 あの廃寺は昔偉い僧侶が、村を襲う鬼から逃げるために作られた場所で、境界線を越えた鬼は僧侶がかけた術によって殺されてしまうと。

そして投稿にあったルールの「鬼は鳥居をくぐってはいけない」というのは本当は「もぐってはいけない」という読み方で、この廃寺での

鳥居は裏にあった池のことを指していて、池はその奥にあった本尊の祠を守っていたのだ。

「この投稿メッセージを送った後、君たちに誘ってもらえてほんとに嬉しかったんだよ、、あまり興奮を見せちゃいけないと思って静かにしてたけど、こんな現象が見られるなんて最高だよ。ありがとう3人とも、、」

動画はここで終わっていて。感謝の言葉の後に見たアカネくんのこの世のものとは思えない不気味な笑みを僕とチョコ先輩は彼がいなくなった今でも忘れることができずにいる。

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