至高の冷やかしとは
鷲見ヶ浦高校入学式中の事だった。
「おい、お前?どこ中だ?」
茶髪で髪もセットした如何にも最近の若者ですよと主張せんばかりの奴が囁いてきた。
「俺は加世田中だ」
「・・・・・加世中?・・・・知らねーなあ」
「まあ、知らなくて当然だろ。ここらへんじゃねーし」
「そうか」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「っておい!お前はどこ中とかねーのかよ!!」
「ああ、俺引っ越してきたばかりでここら辺の土地勘ないんだよ。だから聞いても良いリアクションしてやれねーからさ」
「お前引っ越してきたのか?!どこからだ?」
「だからそのさっき言った加世田中付近からだ」
「あ、確かにそうだよな。そんで今更だがお前の名前は?」
「高駄心酔だ。あんたは?」
「俺は高坂浩二だ。とまあ、これからよろしく頼むぜ!高駄ぁ!」
「ああ、高坂。よろしく頼む」
「はいそこ、静かに!」
「「あ、すいません…」」
近くにいた教員からありがたいご注意をいただいてしまった。
入学式後
「高駄、今日どこ見学行くんだ?」
入学式の時の男に声をかけられた。
「・・・・・そうだな。行こうとしてるとこあるけど、せっかくだからお前に着いていこうかな」
「お!さすがファーストフレンズ!ならよ、生徒会に行こうぜ!」
「・・・いいけど、思ってより斜め上なやつきたな。お前みたいな奴はどうせテニスとか言い出すんだと思ったてたわ。どうして生徒会なんだ?」
「俺だってさ、正直意識高い系の温床なんかには行きたかねーよ。だがな、お前知ってるか?ここの生徒会長の西園寺先輩ってめちゃくちゃ美人なんだぜ!」
「ああ、そういうことね。知ってるよ。去年の冬にここの学校説明会来た時に壇上で挨拶してたな。因みにああいう黒髪ロングの巨乳生徒会長・・・・・・・・俺も嫌いじゃあないぜ!」
心酔はキランと歯を煌めかせながらサムズアップをした。
「それじゃあ、決まりだな」
そして生徒会室に向かった。
「あ、そうだ!じゃんけんやろーぜ!で、負けた方が罰ゲームな!」
向かってる最中に高坂が提案をした。
「お、いいねぇ。で、罰ゲームの内容は?」
「西園寺先輩に『おっぱい触らせてください』って言う」
「ちょ、ちょ、ちょ!入学初日からそれはキツイって!」
「あれ?高駄くん?逃げるの?勝てばいいんだぜ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!お前、言い出しっぺの法則って知ってっか?」
「ぐわあああああああああああああ!!!」
「んじゃ、高駄!俺楽しみにしてっからさ」
心酔は顔を両手で覆いながら発狂していた。
「・・・・ック、まあ約束は守るよ」
「さすが心の友!その域だぜ!それじゃ、入ろうぜ!」
そうして彼らは生徒会の扉を彼らは叩いた。
「はーい、お入りくださーい」
中から男性の声が聞こえた。
「「失礼しまーす」」
彼は扉を開けた。
「君たち新入生だね。入学おめでとう!」
眼鏡をかけた学生が挨拶をしてくれた。この学校では学年ごとに履く上履きの色が違うらしい。それでこの学生は彼らが新入生だ即座に気づいたようだ。
「僕の名前は副会長の丸川純だ。君たちは?」
「俺の名前は高坂浩二です。それでこいつは高駄心酔です」
「うっす」
「高駄くんと高坂くんだね。この時期ってことは君たち、生徒会活動の見学に来たのかな?」
「「はい!」」
「お!いい返事だね!」
(・・・・・・・なんだろう。心が痛い)
「それじゃあ、説明させてもらうね。生徒会の部署は現在~~(中略)~~感じだよ」
一通り説明してもらった。現在は副会長と会長しか生徒会にはいないらしい。どうやら、現生徒会長が何でもやれるので、書記や会計は不在でも問題ないらしい。特に募集などはしたりしないが、席は空いているから歓迎するとのことだった。
「あれ?そういえば西園寺生徒会長は居ないんですか?」
高坂がふとした疑問の様に聞いた。
(おい、余計なこと聞くなよ。このまま静かにフェードアウトしようと思ってたのにいっ!)
「そうだね!会長のことを説明するのを忘れていたよ。会長は今、外の用事があって居ないんだ」
「そ、そうなんですか…入学式の挨拶はしてたのでいると思ってたんですけどね…」
高坂が下を向いて悲しそうな顔をした。
(間近で見たかった気もするけど、これで俺は逃げ切れる!そして、ご愁傷様だ。高坂)
「ご、ごめんよ。せっかくなら副会長なんかじゃなくて会長から話を聞きたかったよね」
「・・・・・・・・・・・」
「いえいえ、丸川さんから話を聞けて不足はないです。ただ…生徒会長を間近で拝みたかっただけです」
高坂が声が出せない程落ち込んでいるようだったので心酔が代わりに答えた。二言目は小声気味で言った。
「・・・・・・・・・・・・・・拝む?君!素晴らしいな。新入生にして西園寺会長を崇拝しているなんて!是非とも共に活動したい!」
(そうなんだけど、そうじゃないんだ....優しすぎるよ丸川さん)
「まあ、残念だったな高坂!」
「うっせ!」
その時だった。突然、ノックもなしに生徒会室の扉を開ける音がした。
(ノックが無いということは部外者ではないはず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか!?)
「丸川君、ただいまー」
「西園寺会長!おかえりなさい」
丸川さんが一瞥した先には例のあの先輩の姿があった。特徴的なのは扇子を持っていることだ。前情報で西園寺会長は扇子を肌身離さず持ち歩いていると聞いていた。
「あら?そこの御二人は?」
「・・・・!生徒会の活動に大変興味があり参りました。新入生の高坂浩二です!」
いきなりスイッチ切り替えて高坂がとても明るい表情で挨拶をした。共に俺をニヤリと見てきた。
(・・・・・・なんかムカつく)
「同じく高駄心酔です。西園寺会長、失礼しています」
遅れて俺も挨拶をした。
「御入学おめでとうございます。それと生徒会に見学に来てくれて二人ともありがとう」
「ありがたき幸せ」
高坂が召使いの様に言った。
「丸川くん。今はどれくらいのことを教えてあげたの?」
「一通りは説明したのですが不安なので会長から再度説明して頂いてもよろしいでしょうか?」
「分かったわ。高坂くんと高田くんそれでいいかしら?」
「御意!」
高坂が下級忍者の様に応答した。こいつは会長の前だと短い文章でスマートに決めたいのだろいうか。言葉のチョイスが既にスマートじゃないけど。
「俺も大丈夫です」
「じゃあ、説明するわね」
その後、二人は会長から当活動について色々と享受してもらった。
「説明は以上よ。二人とも長い時間聞いてくれてありがとう。入学初日だから他のところも見てから決めてもらって構わないわ。それと何か質問があれば答えるわ」
隣にいた高坂が心酔を肘で小突いた。
「・・・・・・・・・・・・・西園寺先輩俺からお願いよろしいでしょうか?」
心酔は挙手して言った。
「お願い!?・・・・・・・聞くわ。何かしら?」
疑問符を頭に浮かべながらも彼女は話を進めた。
「ふぅー・・・・・・・・・・・・・・・実は俺、去年の冬の学校説明会に来た時の西園寺会長を見て感動したんですよ。最初は生徒会の挨拶なんざ、七三分けの横文字好きな眼鏡が登場するんだろうと思っていました。そしたらなんと!黒髪ロングで清楚な大和撫子を具現化した西園寺千鶴先輩が出てきたんですよ!もうこれは俺にとって途轍もない衝撃でしたよ」
「ちょ、ちょっと!高駄くん、感動だなんていきなり何を言い出すんだ!というか下の名前まで...」
彼女は開いた扇子で口元を覆い隠しながら顔中を赤くしていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・七三分けの眼鏡?・・・・・・・なんざ?」
丸川副会長が人差し指で自分の顔指しながら呟いた。
(えーーー!なんか高駄のやつ、西園寺会長に対して凄いバックグラウンド持ってたぁーーーーーー!)
高坂が驚いて心で呟いた。そして心酔のターンに戻る。
「俺はあの日決めました。俺は鷲見ヶ浦高校に行こう。あの先輩に会うために!そして会ってあることを頼む為に長きに渡る受験勉強をしました。どんなに辛いことがあっても、俺は西園寺会長にあることを頼むことを想像して切り抜けてきたんです。そして俺はここまで来たんです!」
「・・・・・・・・私に感銘を受けてここまで・・・・・・・。それでさ...その…頼みって…なに…かな?」
以前にも増して顔を赤くしながら彼女が言った。
「ふー」
心酔が深呼吸をした。
「西園寺会長!一生のお願いです!おっぱい触らせてください!お願いし」
「このバカぁ!」
「ぐわっ!」
顔を赤くしていた彼女が勢いよく扇子を投擲して、心酔の眉間に命中した。
「う…う…う…くそっ!うたかたの夢か...」
心酔は倒れた。
(えーーーーーー!こいつ、どんだけあの一言に命かけてたの!)
「高駄くんのバカぁ!私、おうち帰りゅ~」
西園寺会長は投擲した扇子を回収してダッシュで生徒会室から出て行った。
「お、お待ちください!西園寺会長!・・・・・そ、そんな...僕の前ではあんな顔したことないぞ…」
丸川さんが崩れ落ちている。
(ここは危険だ。早く下界に降りなければ!)
「あ、それじゃあ今日はありがとうございましたー!」
気を失っている心酔を背負って高坂は生徒会室から避難した。
数時間後、学校から離れた公園にて
「あれ?ここどこだ?」
「おー、高駄!やっと起きたか!ここは公園だ」
「こ、公園!俺達って入学式の後から今まで何してた?」
「あ。お前もしかしたら強い衝撃を受けてその周囲の時間の記憶失ったのかもな」
笑いながら高坂が言った。
「おい!それこえーよ。マジで思い出せねーよ。今まで何があったんだ?」
「いや、知らない方がいいから教えない」
「おい、教えてくれよ!た、頼む!今日眠れねーよ」
心酔が高坂の体に軽く取っ付きながら言った。
「まあ、お知られねーが言えることは一つあるよ」
「な、なんだ?」
「お前と知り合えて良かったよ。明日からも頼むぜ」
「その言葉は嬉しいけど、え?今まで何があったのぉーーー!!」