78.フルドレクス国立魔法学校①
ガルナドール王子との接見を終えた俺達は、その足でフルドレクス国立魔法学校へとやってきた。
まずは校長に挨拶、ということになったのだが……。
「皆さんには四人でひとつの研究室を預けます。あとは好きにしてください」
「えっ……他のクラスへの転入ではないのですか?」
他の生徒との交流を楽しみにしていたラウナが落胆したような声で訊ねる。
「……クラスですか。セレブラント王都学院ではそういう古いやり方が未だに蔓延っているのでしょうが、我々の学校では我々のやり方に従っていただきます。学びたければ好きな講義に出ていいですし、学校の設備の利用も立ち入り禁止区域以外は自由です」
なんとなく予感していたけど、目の前の校長を名乗る老人もガルナドール王子と同じくこちらに興味がない様子だった。
仮にも友好国の王太子と自国の第二王女がいるというのに。
リードも当然のように抗議した。
「仮にも我々はセレブラントの代表として来ている。それなのに、こんな扱いなのか……?」
「なにか誤解があるようですね。他の生徒たちと同じ扱いをしているだけですよ。それに我々は来てくれと頼んだ覚えはありません。さて、他にわからないことがあったらその辺の教員を捕まえて好きに質問してください」
取り付く島もなく俺達は校長室から追い出されてしまった。
校内を案内してくれるはずだった教員も、俺達に割り当てられた研究室と寝泊まりに使う寄宿舎の場所を教えてくれただけでどこかに行ってしまった。
「まさか、こんな雑に放り出されるとは……」
「兄上と会ったときに多少の覚悟はしてましたが……」
たった四人なのに狭く感じる研究室に押し込められたリードとラウナがため息を漏らしている。
「うーん、でも人類の対応ってこういうのじゃない? よくわからないものを警戒するときって」
「そ、それは……」
ミィルがあっけらかんと言うと、ラウナが口ごもる。
「そうか、今の我々は昔のアイレンの立場と同じということか」
リードが苦笑した。
「まあ、俺のときはミィルって味方がいてくれたし……今回はみんながいるさ!」
俺が王賓クラスでの孤立に耐えられたのはミィルの存在が大きかった。
今回、お互い四人以外に頼れる人はいない。
たしかに平民だからといって偏見の目が向けられることもないけど、それもあくまで俺たち四人が一括りで『招かれざる客』として扱われているからだと……そう感じた。
「いや、でも、そうですね。わたくしたちは少なくともひとりではないのです。四人しかいないというなら、四人だけでできることをしましょう」
「そうだな。ひとまず状況を整理するとしよう」
リードから目配せが来たのでサイレンスフィールドを展開して盗聴を防ぐ。
「もともと我々の目的は神の調査だった。この点に変わりはないし情報収集はしっかりと行なう……が、もうひとつ。フルドレクスの政情も気になる」
「兄上がお父様やお姉様をどうしているのかも気になりますね……」
ラウナが心配そうに家族の身を案じる。
リードが頷いてから全員を見渡した。
「全員が固まっていてはできることも限られる。まずは別行動としよう。アイレン、すまないが私と講義を受けながら情報を集めてほしい」
「もちろん。どっちみち人類裁定に必要だしね」
「ラウナリースとミィルさんには同じように別の講義を受けた後に、図書室で神の調査をお願いしたい。実際に人類の中で神がどういう扱いになっているのか、竜王族との伝承との齟齬を実際にミィルさんに見てもらったほうがいいだろう」
「わかりました、リード様」
「はーい!」
さすがはリード、しっかり場を取り仕切ってくれている。
これ、俺は楽ができていいなあ。
「幸いなことに我々は互いに身分も立場も異なる。だからこそ自分の得意分野をしっかり生かしていこう。だから違和感があったら必ず仲間に明かすこと。いいな? 特にアイレン、お前は『これが人類の当たり前なのかなあ』みたいにスルーせず、気づいたことがあったら私かラウナリースに言うように」
「あっ、はい」
リードからの鋭い指摘に思わず返事をしてしまった。
なんだか俺の思考パターンがバレてそう。




