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竜に育てられた最強  作者: 原案・監修:すかいふぁーむ 執筆:epina
セレブラント王都学院編

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68/121

68.愚者の末路④

 その日、ノールルド伯は王宮行きの馬車を急がせていた。


(ビビムをああまで泣かせるとは……許せん!)


 息子に泣きつかれたノールルド伯は怒っていた。

 もちろんビビムは自分のやらかしを父に伝えてはいない。

 だから自分の怒りは親として正当であることをノールルド伯は微塵も疑っていなかった。


(まずは不正行為で入学した平民の件、全責任を学院長に押し付けるとしよう。ダンジョン事件も大いにスキャンダラスな内容だ。件の平民のせいで王賓クラスが危地に陥らされたのだ。如何に公爵家ゆかりの学院長といえど辞めざるを得まい。ついでに平民に加担していた教官も追放だな)


 新しい学院長には子飼いのキグニスをつければいいなどと考えるノールルド伯。

 学院での逮捕劇は秘匿されていたため彼の耳には届いていなかった。


(そしてビビムは竜王国の使者の娘に辱しめられたというし、そろそろ連中にも自分たちの立場というものを思い知らせてやるとしよう)


 これまで竜王国など放っておけばいいと思っていたが、愛息子が実害を受けたとなれば話は別だった。

 此度の無礼をしっかりと抗議して自分たちの罪を自覚させ、賠償として財宝を根こそぎ差し出させる。

 自分もその一部ぐらい受け取る権利はあるだろう……。


「何が竜王国だ。何が竜王族だ。盟約ある限り……直接手出ししなければ、連中は我々人類には指ひとつ動かせん、まさに張り子の虎だ。こちらが何も知らんと思ってるのだろうがな」


 森に送り込む冒険者にも、その点をしっかり伝えてあった。

 新たに送り込んだ山賊どもにもだ。

 何一つ抜かりはない……ノールルド伯はそう考えていた。




 ◇ ◇ ◇




「私からの進言は以上となります、陛下。学院長には退いていただくしかありますまい。そして竜王国にも人類裁定などという戯言を撤回するよう正式に通告すべきかと」


 セレブラント王宮、謁見の間。

 王侯貴族に囲まれる中でノールルド伯は玉座に腰掛ける王の正面に跪き、道中で考えておいた進言を終えた。

 聞き終えた王は大きく頷く。


「……そちの申すことはよくわかった」

「で、あれば後のことはいつもどおり私に――」

「もうよい、ノールルド伯。余は甘く考え過ぎておった。そちの無学浅識を……」

「…………はい?」


 王の言葉が理解できなかったノールルド伯は思わず(かお)を上げてしまった。


「皆の者はどう思うか」


 しかし王は咎めず、他の王侯貴族たちに呼びかけた。


「いや、まさか、これほどとは……」

「やはり竜王族に関する教育をもっと広げるべきだったな」

「いや、王国の発展には中級以下の貴族たちにある程度の自由と権力を許す必要はあった」

「竜王族を恐れすぎると王国の沽券にも関わる」

「いわば王国の歴史の汚点だ。そこの部分でノールルド伯だけを責めるのはいささか酷かも知れぬな……」


 王侯貴族たちから向けられる視線。

 それはいつもノールルド伯が浴びていると錯覚していた羨望などではない。

 憐憫――いわゆる、かわいそうな者を見る目だった。


(なんだ?……なんでそんな目で私を見る??)


 ノールルド伯はこれまでにない居心地の悪さを感じながら、嫌な予感を覚える。


「で、あるか。さて、改めて伯に問わねばなるまいな」

「は、ははぁー!」


 王の言葉で自らの非礼に今更ながら気づいたノールルド伯は慌てて平伏しなおした。


「そちが余に献上した特別な品の数々。はたして、何処より手に入れたものか?」

「あ、あれは我が領地の特産物でして……」


 さすがのノールルド伯も竜王国の森を略奪しているとは言えなかった。

 盟約があるとはいえ自分の所業を王家に知られるのは体裁が悪すぎる。


「余をたばかるか?」

「い、いえ。滅相もありません! 本当なのです!」


 王の指摘を受けてもノールルド伯は必死に訴える。


(露見するわけがない! ()()()の持ち掛けてきたアイデアは完璧だ!)


 そもそも、この竜王国略奪プロジェクトはノールルド伯自らの発案ではない。とある人物が持ち掛けてきたアイデアに乗っただけに過ぎない。略奪の方法について詳細に記されたマニュアルが事前に用意されていてそのマニュアル通りに実行すれば良かった。普通なら眉唾な話と疑うところだ。しかし物事を深く考えない伯はノーリスクなのにハイリターンだと飛び付いた。提案者から竜王族は人間に一切手出し出来ないことを示唆されたのでなおさらだった。

 冒険者への依頼は一見すると自分と無関係な代理人を通していたし、略奪品の受け渡しも秘密裡に行っていた。

 だから特産物ということにしておけば実際にそういうダンジョンが領地内にあることになる手筈だったし、少なくとも王家に露見するリスクはゼロになる。

 そのはずだった。


「例の物をこれへ」


 王の指示で文官が冊子を持ってきた。


(おもて)を上げよ、ノールルド伯。これに見覚えは?」

「ば、馬鹿な。それは……!」


 今度こそノールルド伯の両目が驚愕に見開かれた。顔面が蒼白になる。


 文官がこちらに広げてみせている冊子は、ここにあるはずのないもの。

 幾重もの警備の奥に厳重に保管してあるはずの。


「そちの屋敷から発見された取引の裏帳簿だ。何か申し開きはあるか?」

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