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竜に育てられた最強  作者: 原案・監修:すかいふぁーむ 執筆:epina
セレブラント王都学院編

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60.ビビム・ノールルドのやらかし⑥

 王賓クラスが授業時間が終わっても神滅のダンジョンから戻ってこない。

 事態を重くみた学院長はすぐさま教官たちを派遣し安全な三階層まで捜索させた。


 調査の結果、一階層の空間に転移痕(てんいこん)が発見された。

 未発見のトラップが起動して全員が深層へ墜ちたのではないかというのである。


 学院長はすぐに王へ状況を伝えた。

 ただちに冒険者ギルドに王から勅命が下り、全てのSランク冒険者に動員がかかり大規模な捜索隊が送り込まれるという。

 これらの噂は瞬く間に学院中に広まり、キグニスからビビムにも伝わった。


「僕たちのことはバレていないよな?」

「も、もちろん大丈夫です。それに今回の神滅ダンジョン探索は学院長が許可を出したのですから、我々に責任はありません!」

「そうだよな」


 もちろん、そうはならない。

 土塊のダンジョンが使用不可能になった理由が先日の雨ではないとバレたら、彼らは一巻の終わりだ。

 そもそも、ここまで大ごとになると思ってなかったビビムは土塊のダンジョンの封鎖をアースコントロールで行なっている。

 入り口を塞いだ土砂に雨の水分はほとんど含まれていないし、学院が本気で調査すればビビムによる意図的な封鎖行為が露見するのは時間の問題であった。


「それに、これなら当初の計画どおりじゃないか。王賓クラスの皆さんなら何も心配ないだろ」

「ほ、本当にそうでしょうか? あのダンジョンはまともに生きて帰れた者がいないことで有名なのですよ」


 キグニスはビビムほど事態を楽観視していない。

 ビビムの命令に従ったのは神滅のダンジョンがこれまでは安全だったからだ。

 本当に危険な場所に送り込むつもりではなかったし、仮に学院長に問い詰められてもキグニスはそのように釈明するつもりだった。


「大丈夫さ。リード様だっているんだ。あの御方は学院始まって以来の天才だからな。あんなダンジョン楽勝さ」


 ビビムの楽観主義は親譲りだ。

 これっぽっちも今の状況を深刻に捉えていない。

 今回のことがバレたとしても注意を受けるのが嫌だな……ぐらいにしか思っていなかった。


 もし、このスキャンダルが明るみに出れば父親が破滅するとは想像もしていない。

 彼の中では父親は国王より偉大な存在なのだ。国王より偉い父親を罰することが出来る者など皆無である以上、その父の息子である自分を罰することが出来る者もいるはずはないのだ。


「それに本物のダンジョンでの戦闘ともなれば不正行為ばかりで孤立している田舎者のメッキも剥がれるさ」

「しかし、下手をすれば死ぬのでは?」

「たかが田舎者ひとりが死んだところで騒ぐ話か? 似合いの末路じゃないか。アイツを始末してくれる魔物に感謝したいぐらいだ。それにだ、もしそうなったら学院長だって責任を取らなきゃならなくなる。そうなれば次の学院長はキグニス、お前じゃないか」


 学院の生徒がダンジョンで死亡する。

 今までにもなかったわけじゃないし、まして平民なら大した問題にはならない。

 それがビビムの考える当たり前だった。


「はあ、ありがとうございます。それはそれとして、ひょっとしたら別の生徒が死ぬ可能性もあるのでは……」

「大丈夫大丈夫。そうはならないんだ。なにしろ王賓クラスには竜王族の使者だっているんだからな」

「……は?」

「あ、これ僕が言ったって言うなよ? 父上が教えてくれた誰にも言っちゃいけない秘密なんだからな」


 とんでもないことを気安く打ち明けたビビムがケラケラと笑っている。


「竜王族の使者が、この学院に……?」


 このときキグニスは知ってはならないことを知ってしまった予感がした。

 竜王族についてはピンと来ないが、それでも彼らが使役するドラゴンが恐るべきモンスターであることぐらいは知っていた。


「ああ、そうさ。なんでも人類を生かすか滅ぼすかを見極める、みたいなことを言っているらしい。まったく、ちゃんちゃらおかしい話だよな。たかだかトカゲ人風情が」

「そ、そうでございましたか」


 得意げに語るビビムに相槌を打ちながらキグニスは悟った。

 今回のことは万に一つも明るみに出てはならないと。


 ビビムを守るためではない。すべて自らの保身のためだ。

 竜王族の使者が王賓クラスにいる――その情報を持っていながら今回の作戦を立てたビビムに、キグニスは底知れない危うさを感じ取っていた。


 間違いない。

 捜査の手がビビムに辿りついた瞬間、自分も破滅する。最早、次の学院長どころの話ではなかった。

 

 暢気に笑っているビビムを焦る気持ちで眺めながら、キグニスは全力で隠蔽工作をしようと決意した。


 このときすべてを学院長に正直に打ち明けていれば違う未来があったかもしれないが。

 残念ながら、キグニスはそういう人間ではなかったのだ。

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