49.冒険者ギルド①
俺とミィルは冒険者ギルドに向かった。
侵入者が依頼を受けたギルド支部は、人類が竜王族に無断で森を開拓した街インウッドにある。
実を言うと最初は人類裁定をこの街でやるって話もあった。
だけど、この街を裁定基準にしてしまうと人類鏖殺一択になってしまうとサンサルーナが反対した。
公平さを保つため、未来の為政者を見定めるという目的も兼ねて、セレブラント王都学院に白羽の矢を立てたのだ。
さて、インウッドの冒険者ギルド支部はひとつしかなかったので寄り道せずに向かったんだけど……。
「はぁ? あなたたちが竜王族の代表?」
ギルド受付嬢に身分を明かしたときの第一声が、これだった。
「はい。こちらから派遣された冒険者が森を荒らして迷惑なので抗議しに来ました」
「竜王族が文句言いにくるわけないでしょう? 嘘を吐くならもっとマシな嘘を吐きなさいよね」
この回答は一言一句、ギルドに向かう俺にサンサルーナが予言してくれたとおりだった。
限定的にではあるが橙竜聖母は未来を見通すことができるのだ。
『竜王族のこれまでのやり方は人類を信じるあまり人類を増長させてしまったの。甘やかしてきた竜王族にも責任はあるんだから人類を滅ぼすのはやめて共存の道を模索しましょうね』
竜王族の赤子が攫われそうになったときに人類の肩を持ったのがサンサルーナだ。
師匠とサンサルーナ、七支竜同士の壮絶な意気合わせの結果……人類鏖殺派と人類共存派の折衷案ができあがった。
それが人類裁定。
だけど今回の俺は裁定者ではなく、あくまで警告のために来ていた。
「嘘じゃありません。証拠もあります」
ギルドで俺たちがやることは、ふたつ。
救命措置を終えた冒険者たちをギルドに送り届けること。
そのひとつ目を果たすべく、俺は封印の宝玉を取り出した。
「リリース」
コマンドワードに反応して封印の宝玉が輝く。
次の瞬間、ギルドのど真ん中に捕らえた五人組がドサッと現れた。
俺たちに馬鹿にした視線を向けていた冒険者たちも目を丸くする。
「えっ……!?」
「うちの森を荒らそうとしていた冒険者たちですが、死んではないです。気絶してるだけですので。引き取ってください」
「そ、そこで待っててください!」
受付嬢が慌てた様子で奥に引っ込んでいった。
ミィルがこそこそと耳打ちしてくる。
「サンママの言うとおりになってるねぇ」
「予言が当たってるならギルドマスタ―が来るはずだけど……」
ギルド内から向けられる視線が一気に剣呑なものに変わった。
あきらかに敵視されている。
サンサルーナは何も言ってなかったけど、予言するまでもないってことなのかな?
「竜王族の代表者っていうのはお前らか」
受付嬢と入れ替わりに現れたのは大柄の中年男性だった。
それなりに修羅場をくぐってそうな迫力がある。
「俺がギルドマスターだ。お前らは?」
「レンです」
「ルミだよ」
ふたりして偽名を使う。
王都学院はかなり離れているとはいえ、万が一にも学院の生徒に俺が竜王族の使者だとバレないためだ。
「ところで場所を変えませんか?」
「いや、ここでいい」
ふむ……サンサルーナの予言の分岐によると誠意があるなら応接間、そうじゃなければ受付ロビーのままって話だったな。
どうやらギルドマスターはやる気みたい。
「で、竜王国の使者様とやらが正式に抗議しにきたってか?」
「ええ、そうです。今後、冒険者はあの森に立ち入らないでください」
「あの森で採れる素材はとても貴重なんでな。今更森に来るなって文句を言われても困るんだ。駄目だって言うならなんで今までは何も言ってこなかったんだ?」
「ある程度は目こぼしをしていただけですよ。送還した冒険者たちに何度も警告を伝えていたはずですけど?」
「そうかぁ? 俺は『何も聞いていない』がな。そもそも、お前らみたいなガキが使者っていうのがお笑い草なんだよ。痛い目に遭いたくなければこのまま大人しく森に帰るんだな?」
ギルドマスターがニヤリと笑った。
「ハッ、そーだそーだ! 森に帰りやがれ!」
「お前らは大人しく搾取されてりゃいいんだよ!」
「ここは人間様の街だぞー!」
ギルド内の冒険者たちの反応も似たようなものだった。
竜王族に対する敬意なんて欠片も見られない。
「それがあなたたちの答えですか」
「そういうこった。それにな、お前らが俺たちに本気の暴力を振るえないのはこっちだって知ってるんだよ。もっとも元Sランク冒険者だったこの俺がいるからには、森の支配者気取りのトカゲどもに後れを取るつもりはねえがな」
ひどい言われ様だ。
もし学院で最初にここまでの対応をされていたら、俺も人類鏖殺に賛成せざるを得なかったかもしれない。
抗議を受け入れてくれればと思っていたけど、こうなっては仕方がない。
強硬策だ。




