21.神眼王女ラウナリース②
屋上の扉は開いていた。
やはり許可を取って鍵を持ってきているらしい。
扉を開けると、探し人はすぐに見つかった。
見渡すまでもなく屋上にはひとりの女生徒しかいない。
「来てくれましたね、アイレンさん。いえ……来て、しまいましたのね……」
「あなたは……」
案の定クラスメイトだった。
肩口で短く切り揃えられた金髪はともかく、左右で瞳の色が異なるヘテロクロミアの特徴は一度見たら忘れられない。
王賓クラスの中でも一際輝いてみえる美少女だ。顔のパーツ配置も完全な黄金比で成立している。竜王族の姉さんたちに匹敵すると表現しても過言ではない。
だけどせっかくの美しさは表情に見え隠れする憂いで陰っている。
俺に向けられる右の赤眼と左の碧眼には怯えすら混じっていた。
「ご機嫌麗しゅう、ラウナリース様」
貴族社会の礼に則り、王族への正式な敬礼をする。
そう、相手は王族だ。
彼女こそフルドレクス魔法国の第二王女ラウナリース。
セレブラント最大の同盟国から留学してきている麗しき才媛だ。
「そのような格式ばった挨拶はおやめ下さい。わたしたちはクラスメイト同士なのだから、普通にお話しになって」
「そうですか。では御言葉に甘えさせてもらいます」
敬礼を解いて謝罪する。
どうもまた不興を買ってしまったらしい。
絶対これが正しいってものがないから人類とのやりとりは難しい。
俺も人間のはずなのになあ……。
「えっと……手紙、読みました。俺に何か用でしょうか?」
真正面からまっすぐに見返すと、ラウナリースの身がわずかにたじろいだ。
首を横に振ってから、緊張に負けじと深呼吸を繰り返す。
あれっ、これはひょっとしてシェリーおばさんの言ってた告白ワンチャンある?
「失礼しました。どうしても、あなたに聞かなくてはいけないことがありまして」
ラウナリースはあきらかに勇気を振り絞ろうとしている。
ゆらゆらと泳ぐ赤と青の瞳からは葛藤が見て取れた。
「俺に答えられることでしたら」
誠意には誠意で返すのが、故郷の掟。
それ以上に俺がそうしてあげたいという気持ちから、可能な限りは応じようと頷き返す。
果たしてラウナリースの口から漏れた、それは――
「あなたはいったい何者なんですか? いったい、何の目的でこの学院に?」
俺に答えられないことでした。




