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竜に育てられた最強  作者: 原案・監修:すかいふぁーむ 執筆:epina
フルドレクス魔法学会編

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人類裁定終了のお知らせ②

 司教たちが「竜王族の使者に攻撃を!?」「いったい誰が!」と叫んでいる。


「攻撃だなんてとんでもない。今のはほんのご挨拶ですよ」


 そう言ってリリスルの逃げ道をふさぐように前に出たのはバルミナ司教だった。

 神の代行者として力を振るえる機会を得たことに法悦の笑みを浮かべている。


「……そう。使者に光属性の魔法攻撃を当てるのが天神のやり方なのかしら?」


 事態を理解できずにいたリリスルだったが、サンサルーナの予言を思い出してなんとかキリッとした表情を整えた。


(アイレンのことで頭がいっぱいで忘れていたけど、天神側が仕掛けてくる可能性は高いという話なんだった。とはいえ今のは人類が使えないはずの光属性魔法。天神が攻撃してきた場合は人類の仕業とは言えないわね)


 リリスルは冷静さを取り戻して目の前の無礼者を見据えた。

 ガルナドールが人類としてノーカンだったように人類が攻撃してきた扱いとはならない。それを知ったうえでの暴挙かと思いきや、バルミナ司教の答えは予想外のものだった。


「いいえ、我々は神造人類。あくまで人間です。つまり今の攻撃も、竜王族の脅威から人類を守るという我ら人類の総意なんですよ」

「えっと。それマジで……あ、本気でおっしゃっているのですか? 人類を代表して竜王族に敵対すると?」

 

 あまりのバカさ加減に思わず素が出たリリスルに、バルミナ司教は続ける。


「ようやく神造人類量産の目途がたったんですよ! これで人類は竜王族と戦える力を得ました! 我ら最新の神造人類……天神衆は先駆けとして竜王族最強と名高い七支竜を討伐し、竜王族への回答とします! まずは貴女からというわけです!」

「いや、急に知らない言葉をたくさん持ち出されましても……」


 確かにリリスルは別に人類なんてさっさと滅ぼしてしまえばいいと思っている。

 だけど、愛する家族のアイレンが同族のために頑張っているのだ。

 自分がきっかけで人類裁定を終わってしまうとアイレンに嫌われちゃう! と恐れているのである。


 ところがどっこい、バルミナ司教の愚かさはリリスルの想像ナナメ上を行っていた。


「それで……フフッ、いつまで時間稼ぎをしているつもりなんです?」

「は?」


 リリスルは話についていけずに混乱する。


「先ほどの攻撃で実は大ダメージを受けているのでしょう? ずいぶんと朦朧としてましたねぇ!」


(ダメージ? わたくしフツーに無傷でしたけど?)


 怪訝そうな顔のリリスルを完全に放置したたまバルミナ司教のご高説は続く。


「さすがは七支竜といったところでしょうか。天魔戦争当時の竜王族であれば《裁きの光》を喰らった時点で瀕死だったらしいですのに」

「天魔戦争って……それ、わたくしが生まれる前の話ですよね? いったい、いつの話を――」

「ですが、わたくしが神造人類となって得た能力は百を超える《裁きの光》を同時に放てること! つまり貴女は死から逃れることはできない! そして! この大神殿は既に我ら天神衆が包囲しています! ひとりひとりが竜王族を圧倒できる神造人類を十二人ね!」

「なんでわざわざ全部言っちゃうの……?」


 さすがのリリスルも威厳を保てなくなって素で返してしまった。

 力を手に入れたと思い込んでる人類ってここまで愚かなの? とは思わずにいられない。


 しかしリリスルが困惑すればするほどバルミナ司教は優位を確信する。完全にドツボだった。


「どう? 絶望的でしょう? でもねぇ……それが今まで人類があなたがた竜王族に抱いてきた感情なんですよ! たっぷり味わってもらわないと帳尻が合わないというもの。竜王族に気分ひとつで滅ぼされるかもしれない時代は終わりを迎える。ついに人類は解放されるのです!」

「えっと……」


 リリスルとしても、もはや心配になるレベルだった。


(本当にこんな頭の沸いた女のせいで人類滅亡が決まっちゃっていいのかしら?)


 ノールルド伯爵でも、ここまでではなかった。

 確かに愚か者が生まれる可能性があるだけで滅ぼすべきだという者もいるけど、リリスルはそこまで極まってない。

 アイレンと会うまで人類なんてどうでもいいと思っていた多数派だ。


「さて。言い残すことがあれば聞きましょう。他の竜王族に遺言を伝えてあげますよ」


 どうやら《裁きの光》を百発撃てるという話はハッタリではないらしく、実際にバルミナ司教の周囲に無数の光球が浮かび上がった。

 圧倒的優位を確信するバルミナ司教は竜王族の命乞いが楽しみだといわんばかりに哄笑する。


 しかし、リリスルの胸に沸き起こったのは深い(あわれ)みの念だった。

 人間の前で保つよう心がけていた威厳はどこへやら、完全に砕けた口調で語り掛ける。


「あ、その。人類が愚かなのは充分にわかったから、自分で責任が取れる範囲にしておかない? こう、やらかしちゃったときにめってしかられる範囲にしておかないと、いろいろ取り返しがつかないっていうか。わたくしも結構やらかすほうだったから、今の貴女は目に余るというか……アイレンがいなかったら自分もこうなってたかもしれないと思うと、やるせない気持ちになるのよ。今ならさっきの攻撃も見なかったことにして帰るから、もうやめておかない?」


 ここにアイレンがいたら「リリスルに心配されるってよっぽどだよ」と頭を抱えた場面である。

 とはいえ、これは人類が生き残る最後のチャンスだった。

 リリスルがブチ切れなかったのは望外の奇跡であり、バルミナ司教はそれこそ神に感謝して慈悲を乞うべき場面である。


「最後まで上から目線ですか。いつまでもそうやって人類は愚かだと上位種気取りだから、こんなことになってしまったんですよ? まったく。そんなこともわからないから人類が強くなるまで眠りこけていたんでしょうけど」


 ハァ……とため息を吐くバルミナ司教。


「もういいでしょう。では、赤竜王女リリスル。これより貴女に神の裁きを下します!」


 バルミナ司教が抹殺宣告とともに《裁きの光》を解き放った。

 無数の光が飛んでくる中、リリスルはお昼の献立を考えているような顔のまま思考を巡らせた。


(これ……もう、さすがにいいわよね? アイレンにも嫌われないし、わたくしのやらかしってことにはならないわよね。そうよね、だって、もともとわたくしが使者に選ばれたのは――)


 リリスルが、ろうそくの火を吹き消すような優雅さでふっと息を吐いた。

 次の瞬間、リリスルの前方数キロの範囲が光の球とバルミナ司教、神都の街並みと無数の人々を巻き込んで劫火に包み込んだ。


「無差別攻撃しかできないからだものね」

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