表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

1回死んでやり直せばいいのに

 事の発端は俺、月本(つきもと)友也(ともや)がこのVRMMOゲーム世界にダイブしたことから始まる。

 つらく厳しかった受験を乗り越え、見事志望校に合格した俺はVRMMOゲームの1つ「Vivid Sense」を購入した。


 このゲームは1年前から話題になっていたものの、俺は勉強でそれどころではなかったので、プレイすることはなかった。

 自由の身となった俺はやっと出会えたゲームをすぐに持ち帰り、セットし、電源を入れた。

 

 ずっと空を飛んでみたかったんだよな。

 その夢は子どもじみていたが、俺にとっては大切なものだった。

 空を飛ぶって羽のない人間じゃできない。

 

 それに飛行機に乗って飛ぶのとは違って音も心地いいはず—————————まだ飛んだことないけど。

 それにVRゲームでは魔法も使える。エフェクトもキレイと話題になっており、女子のプレイヤーも多数いるとか。

 

 俺は専用のメットを被り、ベッドの上に寝転がって目を閉じる。

 初めてプレイするので、名前や照度などの設定を行った。

 エルフとか色んな種族があったけど、俺は普通の人間を選んだ。


 人間でも空を飛べるらしいから、無難な選択をしたんだよな。

 容姿は基本リアルと同じだが、髪色は金髪にして、身長を少し高くした。

 190㎝台の身長に憧れていたんだ。ゲーム世界だし望んだようにしたいんだよ。


 そうして、カスタマイズし、スタート画面が目の前に現れる。

 いよいよだ。やっと空を飛べる。

 どんな世界が待っているのだろう??


 そっと目を開ける。

 そこには鮮やかな緑の草と自分の手があった。手はリアルとの感覚とさほど変わりなく、自由に動く。

 そして、耳から入ってきたのは銃声の音だった。

 

 「撃ち合ってる!?」

 

 思わず声を上げる。

 周囲を見渡すとただの森で平和そうに感じたが、銃を撃ち合う音が響いていた。

 そんでもって隣には、

 

 「やっほー!! 違うゲームの世界に来れたわ!! やった!! やった!!」

 

 と両手を上げて喜ぶ少女。黒髪の彼女はターコイズブルーのキレイなドレスをまとっていた。

 

 「よかったわ。婚約破棄される前にこっちの世界に来れて……………………ほんとあの王子、クソだわ、クソ」

 「あの……………………」

 「あんな女のどこがいいのかしら?? ドジばっかして、みんなに迷惑かえてさ。そりゃあ魔法の能力はあったでしょうけど。私はあんな女嫌いだわ」

 「あの……………………」

 「まぁ、あんな世界とはおさらばだし。……………………ん??」

 

 黒髪の女の子はやっと俺に気づいたのか、目をこちらに向けてくれた。

 艶やか黒髪、吸い込まれるような水色の瞳、そんでもって、瞳と同系色ターコイズブルーのドレス。

 俺はその少女を見たことがあった—————————乙女ゲームの世界で。

 なぜ俺が乙女ゲームのキャラクターを知っている理由についてはおいおい説明するが……………………なぜこんなところに乙女ゲームのキャラクターが??

 

 「君って『True Closer』の悪役令嬢と言われるアイシャ??」

 「そうだけど……………………なんで乙女ゲームのこと知ってるのよ」

 「それはまぁ色々あって……………………」

 

 とその瞬間。

 アイシャのこめかみにレッドのレーザーポインターが見えた。

 まさか狙われてるっ!?

 俺はすぐさま走って、彼女を押し倒す。

 その後すぐに一発、誰かが撃ってきた。

 

 「ちょっと……………………何してるのよ」

 「いや……………………狙われてたから」

 「それはどうもありがとう。でも、早くどいてくれるかしら」

 

 俺は体をどかすと、アイシャはキレイな自分のドレスのすそをビリっと大胆に破った。

 

 「何してんのっ!?」

 「邪魔だから切っただけ。もうこのドレスには用はないわ」

 

 冷静な彼女はそう言って、太ももの部分までドレスを短くした。白く美しい足が見える。

 

 「どこ見てるのかしら」

 「いや……………………なんでもないっす」

 

 女の子の足を見るのは初めてだったからつい。

 すると、アイシャは俺の手首を掴み、走り出す。俺もついていくため、足を動かした。

 

 「どうしたっ!?」

 「どうした、じゃないわよ。さっき狙われてたのよ。逃げなきゃやられる」

 

 この世界、ゲームだから1回死んでやり直したらいいじゃないか。

 というと背を向けて駆けるアイシャは、

 

 「そうね。あなただったらそうよね」

 

 と呟くだけだった。

 そして、俺たちは近くの廃墟化した街へと逃げていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ