旅立つふたり(6)エピローグ ☆
最終回です。
「守屋君!守屋君! 受かったわ!! 合格よっ!!」
3月9日の午前10時。
パソを開き、半ば死ぬような思いで、大阪浪速大学のホームページにアクセスした。
そして私は、自分の受験番号の「合格」を確かにこの目で何度も確かめると、真っ先に守屋君に電話をかけていた。
『おめでとう!!』
携帯からも興奮した声が伝わってくる。
「もー、どうしよう。半分浪人覚悟でいたのに」
思わず嬉し涙がこみ上げてくる。
『馬鹿だな。二次の英語と世界史、全部解答埋めたって言ってただろ。それで落ちるわけないんだよ』
「でも、あのセンターからすれば覚悟もするわよ」
『何にせよ、これで来月から神崎は浪速大生、俺は甲楠大生になるわけだ』
守屋君は、第一志望の環彩学院にこそ落ちたものの、舘成大学、幸楠大学、管辺学院に見事合格していた。
そして、神戸の幸楠大学に進学する。
就職率の高い舘大とブランド色の強い幸楠のどちらに進学するか、最後まで悩んだけれど、学風が自分に合っていそうという理由で神戸の幸楠大に決めたのだ。
大阪と神戸と少し遠いけれど、そのくらいは仕方がない。
逢おうと思えばすぐ逢えるんだ。
私達、「大学生」になるんだ。
春からの晴れがましい大学生活を思い、私は胸が熱くなった。
その後、学校への合格報告。
入学手続きや大学在学中に住む部屋探し。
それは慌ただしく、三月はあっという間に過ぎて行った。
梅は散り、桜吹雪の花びらが暖かい日差しに舞い踊るその春、四月。
そうして、私は希望を胸に大阪へと発って行った。
物語は大阪と神戸へとその舞台を移すことになる。
了




