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ワールド・エスケープ  作者: 泉エト
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少年の空想

「流川幸次郎」高校生の時に読んでいた小説家の名前に似ていた。気づけば窓の外は暗くなっていた。夏至が近いというのにこんなにも暗いのは雨のせいだ。ここ最近は夕方を過ぎると毎日降っている。僕はそろそろネットサーフィンに飽きてきたのでパソコンを閉じそのままベッドに転がった。父母ともに帰りが遅いので何気なくテレビをつけた。ちょうどやっていたのは、先日から世の中を騒がせている「研究者の不審死」についてだ。このニュースは、正直に言ってもう見飽きた。同じことしか繰り返し言わないアナウンサーと世の中の暇人がいかにも見てそうだなと思った。チャンネルを切りかると、幾分興味深い番組をしていた。「あなたの名前は?」「僕はジェームズ」「パイロットが危ない、今すぐやめさせるように言わないと」最初はヒスを起こしているように見えた。「君はどこにいるの?」「アメリカだよ」いや、アメリカではないだろう。どう考えても日本語で返答し、さらには黄色人種の幼児ではないか。僕は思わず声に出して言った。一人で見ていることを思い出し少し恥ずかしくなった。僕が一番驚いたことはその証言を調べると第二次世界大戦のときに亡くなったアメリカの兵士に該当する人物がいたのだという。5年経った今ではその幼児も小学生になりすっかり前世の記憶が消えたという。前世は本当に存在するのだろうか。小さい頃から考えていた。前世があるのならば僕はどこにいつ存在したのだろう。どうして前世の記憶がないのだろう。何年後に生き返れば前世の記憶を持ち合わせているんだろう。そんなことを思いながらベッドに横になった。


「もうご飯だから、降りてきなさい」母がいつも通り降りてくるよう催促する。階段を降りているときも窓に雨が打つ音が聞こえてくる。それと同時に雨、独特の香りがする。1階に降りると僕の好物であるハンバーグの匂いがした。席につくとビールを父はいつもビールを注ぐ。泡がモクモクとなる音がする。「今日は何してたの?」「特に、何もしてないよ。テレビ見てた」「なんか面白いものでもしてた?」「例えばだけど、生まれ変わりって信じる?」「あるんじゃない。最近ね、おじいちゃんのお墓にカエルがいるの。いつも同じところにいるからお母さん、おじいちゃんじゃないかなと勝手に思ってる。」「えっ、おじいちゃんの来世はカエルだったの?」僕はおじいちゃんのことを可哀想だと思ったけれど、おかしっくて笑ってしまった。なぜなら、おじいちゃんは僕の知っている限り優しくて、いい人だった。なのに生まれ変わりがカエルだなんて、可哀想だと思った。ぼくなら、また人間に生まれ変わるか、お金持ちに変われる犬か猫になりたい。


その日の夜は久しぶりの夢を見た。僕は窓から星が遠くで輝いている宇宙が見える。そして、そこはどうやら小さい建物のようだ。「もうすぐだぞ。ここに別れをつげよ」誰かに背中を押されて下に広がっている穴に落とされた。


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