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バカと天才は"神"一重  作者: 抹茶
入学編
40/88

第32話 



「ちょっと待ってくださいよ」


 怒りの籠った声と共にシンが前に出てくる。


「いくら先輩でも言っていいことと、悪いことがあるんじゃないですか?」


 その隣には鋭くナルゴールを睨み付けるグラン。あんな台詞を言われちゃ黙っていられるわけがなかった。


「ほぉ、なら君達は僕に勝てるというのかい? この学内9位のこの僕に?」

「ぐ……」


 嫌味な笑みを浮かべそう言うと、グランもシンも押し黙るしかなくなった。


「勝てるわけないよね? 君達は落ちこぼれなんだから。僕は君達と違って才能に恵まれているんだから」


 両手を広げながら独裁者の演説のように語るナルゴールを見ていると、流石に俺も苛立ってきた。


「フィル……と言ったね。君はこんな奴らと一緒にいるべきではないよ。美と才能と強さのある僕に着いてくるべきだ」


 胸糞悪くなる言葉を並べながらフィルに向かって手を差し出す。

 今まで沈黙していたフィルだが、ここにきて漸く口を開いた。


「お断りします」


 キッパリと明らかな敵意を込めてそう言った。


「私は兄さんと、兄さんのお友達と一緒にいるのが楽しいので……貴方のような方と馴れ合う気はありませんわ」


 強い口調でナルゴールを非難するフィル。

 それに対し、まさか断られるとは思ってなかったのだろう……ナルゴールは信じられないというような顔をしていた。


「何を言っているんだ! 君は僕といてこそ輝けるんだ!」


 何なのコイツ、何で2分前に初めて会った女の子の事をそこまで口説けるの?


「どう考えても君は別格だよ。よく見てみなよ。君の両隣の女を。右はまあ僕に相応しい顔立ちだが、落ちこぼれだ。左にいたっては何だその赤い目は、化け物もいいところじゃないか」

「なっ!」

「っ!!」


 驚いて言葉が出せないテトラ。

 無言で目を見開くリリー。


「赤い目なんて見たことも聞いたこともないな! 化け物じゃないなら何か薬でもやってるんじゃないのか?」


 ハハハ……と高らかに笑い出すナルゴールに合わせるように、取り巻きの女共も笑い始める。

 リリーは何も言うことなく、ただ黙って俯いていた。唇を強く噛み、その目はいつものような鋭いものではなく悔しさに耐えているのがわかる。


「何だ、誰も何も言い返せないのか。それはそうだよね! 君達は落ちこぼれなん…ぐぁっっ!」


 ここまで来ると流石に温厚な俺も怒っちゃうわ。

 俺の左ストレートにより壁に打ち付けられたベルゴール。


「キース様!!」


 ぶっ飛んだベルゴールの元に女達は慌てて駆け寄る。


「お、おいリオード!」


 焦ったように俺へ声をかけるシン。

 それを手で制して俺は1歩前に出る。


「ちょっと聞いてりゃペラペラとくだらないこと抜かしやがって」


 何回も同じような事言われて黙ってられるリオードさんじゃ無いんだわ。


「貴様……」


 奴は殴られた頬を抑えながら俺を睨む。それに対して俺は負けじと見下ろす。


「わりいな。つい殴っちまったわ」


 さっき殴った左拳をブラブラと振りながら俺はゆっくりベルゴールの元へと歩いていく。


「落ちこぼれが……僕に手を出してタダで済むと思ってるのかい?」


 周りの支えを受けてゆっくりと立ち上がったベルゴールは怒りの籠った目付きを見せる。


「それはこっちの台詞だ。テメーこそタダで済むと思ってんのかよ」


 今更そんな凄みに怯む俺ではない。


「カッコいい自分が正しいとか、冗談はそのイケメンフェイスだけにしろよ。テメーはあれですか。何不自由なく育ってきた坊っちゃんですか」


 さて、今日の俺は止まりませんよ。

 言いたいこと全部言っちゃる。


「まず前髪のかきあげかたが一々カッコつけすぎ。見ててチキンスキンがヤバイ」


 そう言って俺は左手で前髪をかきあげる。え?お前もやってるじゃんって?それは気にしたらダメよ。


「次に言葉のチョイスがキモい。詩人にでもなったつもりか? 聞いてて寒気しかしないわ。今時ポエマーなんて流行らねえよボケが。んで、お前らも一々“様”とかつけやがって。これだから顔しか見てないビッチ共は……つまりお前ら纏めて人間的にアウト。レッドカードで退場だ消えろボケ」


 ハイ、言いたいこと1から10まで言ってやりました。

 何か顔を真っ赤にしてプルプル震えてるけど正論だよね俺が言ったこと。


「貴様……言わせておけば調子に乗りやがって…。この学内ランキング9位の僕に歯向かってただで済むと思うなよ……!」


 ベルゴールはこめかみに青筋を浮かべながらも魔力を練り上げる。


「上等だ」


 俺はポケットに手を突っ込んだまま余裕の表情を崩さない。

 魔力を纏うベルゴールと特に構えることをせず立ってるだけの俺。


 緊迫した雰囲気に誰もが声を発することなくただその場の成り行きを見守っていた。



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