1/2
~プロローグ~
どうしてこんなに早く目覚めたのだろう。まだ雨の匂いが残るベランダを眺めていた。夏が始まったとはいえ午前四時はまだ暗く、一日を迎えるには随分と早い気がした。いつもであればまた目をつぶるのであろうが、その日はすぐに身体を起こした。眠くはない。目が冴えわたっているという訳ではない。ただ毎朝感じるあの気怠さと頭の重さがない。昨晩の酒の量を減らしたためだろうか。いや、そんなことはどうでもいい。昨日やり残したことの続きをしよう。一言にやり残したこととは言ってもそれはあまりには途方もなく、到底朝の数時間で終わるようなものでもないのだが。逃げるのだ、この国から。この世界から。