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喫茶アトリ/JACK+ 番外編  作者: sungen
2018年 喫茶アトリ福みくじ ※気になる色を選んでください。
7/24

おまけ


表が犬、裏は烏。

「可愛いです」

小雪が絵馬を手に持ち、良く見て言った。


「さすが通称「カラス神社」って言うだけある」

速水も絵馬を見て言った。

カラスは小雪の持つ絵馬を見て、首を忙しく動かしている。

興味津々と言う感じだ。

「…お前も欲しいのか?」

速水はカラスに聞いてみた。


カラスが、がぁ、と短く鳴いて、速水にすり寄ってきた。

これはおねだりの仕草だ。

「うーん。でも、邪魔になるし…やめとこう」

速水が言うと、カラスはガーガー鳴きながら速水を盛大につついた。


「うわ、わかった、わかったから。――」

速水は絵馬を購入した。


「ハァ」

速水は溜息を付いた。速水の右腕でカラスは絵馬を咥えてご機嫌だ。

「素直に買ってあげればいいのに」

カオルが苦笑気味に言った。

「いや…。こいつすぐ興味無くすし、家に絵馬があっても困る」

速水は買ったものの、もてあます気がしていた。


「けど、速水さん大大凶だから、もっとソラちゃんにサービスした方がいいですよ?多分」

乙川が言った。

「確かに。そっすね。店長、いつもソラちゃんの扱い悪いッスよね」

桂馬も言った。

「そんな事は…」

「あ!そうだ。朔がいらないって言うなら、俺がこいつウチに連れて帰ってやろうか?」

寿が笑い、カラスを持ち上げた。


カラスは首を傾げて、寿を見つめた。特に反応は無いが、寿にはカラスの気持ちが何となく分かった気がした。

「うんうん。おっ!えっ!?そうか!そか、そうだよなー!うん。そうだって!朔より絶対俺ん所の方が良いって!なんたって年中ケーキ食べ放題だぜ?」

寿に言われて、ガー?と、カラスは首を傾げた。


「一緒に風呂に入ったり、一緒に布団で寝たり?あ、それは朔も実はやってんだっけ?じゃあ、一緒にお菓子作ろうぜ!」

ガぁ。

寿の言葉に、カラスはそこそこ乗り気になったようだ。

寿は大いに満足した。

「よし!じゃあ早速今日からキミに来てもらおう」


決まりかけたその時、右から手が伸びて、誰かがひょいとカラスを攫った。

「それなら、じいちゃんの家も良いッスよ。ほら、ソラちゃんもスゲー気に入ってたし?――ってあ!」

桂馬が言ったが、また手が伸びてきて、今度は乙川がカラスを攫った。

「じゃあ、僕の家はニワトリいるし、新鮮な野菜が食べ放題!特にトマトは最高だし。ソラちゃんだって美味しそうに食べてたよね、おいでよ!」


「あ、ずっり!食べ物で釣るのか。じゃあ俺は――」「それなら」「僕は」

自分の事は棚に上げた寿が言った。三人そろってカラスを厚遇する気らしい。


速水は焦った。

…まさかこんなにカラスが人気だとは。

「――駄目だ、コレは俺の…!」

速水はカラスを取り返した。


「「「「これぇ??」」」」

「う。あっ…!」

一同にジロリと見られて速水は固まり、その隙にバサッとカラスに逃げられた。

カラスは速水を飛び越えて後ろへ飛んで…、急に羽音が止んだ。誰かにとまったらしい。

速水の背後には小雪、カオル、響、ノアがいる。

「!?うわ?びっくりした」

止まり木になったノアが、頭にカラスを乗せて目を丸くしていた。


ノアは頭上のカラスに手を伸ばし、ふんわりと抱きしめた。

カラスもノアが好きなようだ。ノアの肩の小鳥も喜んでいる。

「ハハ。ソーシ、ソーアイってヤツ?」

ノアは天使のように笑った。


次の瞬間、ノアは真顔になり。

「ハヤミ。―俺もカラスが欲しい。割とマジで」

……明らかに本気で言った。目がマジだ、と全員が思った。


「親友ポイント使ってモナカと交換する!」

「あっ。えっと、ノア??え?――返せ!……いや、あれ?お前、カラスは苦手じゃ――」


「とっくに克服した!かわいいよねカラスって。実はもう一万三千三百二十六ポイントたまってるんだろ!?――ふふふ、ふふふふふふ…よしよし、ふふふふ、ふふふ」

ノアはカラスを撫でながら、にへ、と笑わらった。


「…の、ノア?」

速水は若干引いた。…だいじょぶか?

…ノアの肩の上で、小鳥のモナカが悲しそうにさえずった。

「あっ、モナカごめん嘘!」


その様子を見ていた小雪が、くすくすと頬を染めて笑っている。笑いすぎて、少しにじんだ涙をぬぐう。

「面白いですね。ここのおみくじ、当たるって聞きました。あ…速水さん、…ソラちゃんに凄くつつかれてる」

「助けるべきか、否か?面白いな。もう少し様子を見ようか」

響が苦笑した。


「って。こらヒビキ。それは駄目よ。もう、皆、静かにしなさーい!」

カオルが腰に手を当てて叱った。


「「「「はい…、すみません」」」」


「速水君まではしゃがない!三が日過ぎて、だいぶいてると言っても」

ちょうど参拝客は速水達だけだった。

「はい……」

速水もカラスを腕に収めて謝った。



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