黒色のおみくじ
★★★ 大大凶 ★★★
暗闇で蜘蛛の糸にからまる象
このおみくじにあう人は、なにをやっても空回りする。尊敬する者には先立たれ、友人には嫌われる。小鳥やカラスにはつつかれる。万事あきらめたほうがよい。風邪と大怪我と事故に要注意。危険な場所には近寄るな。
絶体絶命の時は死……………………が、………………………じ。
「…大大凶ですね」
小雪が言った。
「……俺、死ぬのかな」
速水は項垂れた。最後は印刷がかすれて読めなくなっている。
「……そこに結べば何とかなるんじゃない?持って帰るのも微妙だし」
カオルがおみくじ機のそばの紐を指さして言った。
「じゃあ、そうするか。ノア、昼はカレーにしよう…」
速水はノアを見た。
「うん!カレー食べたい」「よっし!すぐそこのデリイチカレーに行こうぜ!!」
ノアと寿はじゃりじゃりと、上機嫌で小石を踏んで歩く。
ばさ、と羽ばたく音がして、カラスのソラが木から降りて来て、速水の肩ではなく、寿の肩にとまった。
「お。今日はこっちか?」
寿が笑う。
「…」
速水はカラスを見た。『カラスにはつつかれ』って―今日から良くつつかれるのか?
「あ。すみません、お父さんへのお土産に、お札と絵馬買って良いですか?」
晴れ着姿の小雪が言った。
「うちも買っていこうかしら」
同じく晴れ着姿のカオルも言った。
――小雪とその他の面々はおみくじ機の隣の販売所で絵馬を見た。
そのうち、寿に「重い」と言われ、カラスは速水に返却された。
「?重いかな?――痛った!」
速水はカラスに耳を盛大につつかれた。
絵馬には色々な絵柄があるようで、受付台の上に絵馬の写真見本がある。
柴犬、白い犬、チワワ、ボーダーコリー、シベリアンハスキー。
「チーフ、どれにしまっス?」
桂馬が言った。
「ええと…?確かここの神社に――カラスちゃんの絵馬があるって、隼人さんが…」
小雪は見本を探すが。それらしい物は無い。
「あ。これじゃないかな?」
乙川が言った。柱にくくり付けられた絵馬にはカラスが描かれている。
裏返すと柴犬だった。…値段は同じようだ。
「じゃあ、この絵馬とお札を一枚下さい」
小雪は微笑んだ。