第2話 JACKにインタビューしてみた(強制)
インタビュアー:
あれ?ついさっき、スタジオを出たと思ったんだけど……。
――ここは、どこだろう。
インタビュアーは、速水のダンスを撮り終えて、スタジオを出たはずだった……。
しかし彼が、そのまま足を踏み入れたのは《《第二の撮影スタジオ》》。
(おかしいな。ん……?そうだ!今日は特別ゲストがもう一人いるんだった!)
いそいそと席に着き、ネクタイを締めなおすインタビュアー。
セットは速水のインタビューと変わらない。しかしなぜか若干ぼんやりとしている。
(ピンボケしてる?カメラさん、ちゃんと映してくれるかな?おーい!)
インタビュアーはカメラに向かって手を振った。
……カメラマンが手を振り返した。
インタビュアーが、テーブルに視線を戻す。
……インタビューする相手がいつのまにか、向かいの席に座っている。
――いや、先ほど現れて座ったのだ。確かそうだ。向こうの扉から、このスタジオに入ってきたのを覚えている。
年齢は十代後半。細身の、若い男性だ。
髪は腰を過ぎるくらい、いやもっと長い……?服は黒くて丈の長い服。中世風かもしれない。
服の袖にはトランプのモチーフがあしらわれている。
(おお、初めて見た!!)
――知らない人物のはずなのに、インタビュアーは速水朔に出会った時と同くらいテンションが上がる。
【以下質問内容】
イ「ほ、本日は!わざわざ遠いところをお越しいただき、ありがとうございます。いや、お会いできて光栄です!」
?「……たまには外に出ようと思って。握手します?」
イ「はい、ぜひ!」
(握手するインタビュアーと誰か)
イ「(もうこの手は洗わないぞ!)」
――インタビュアーは目を凝らして、その姿をしっかりと見た。
超美形であることには間違いない。誰かにそっくりな気がするが、誰だったか思い出せない。
イ「では、失礼ながら。自己紹介をお願いします」
「はやみさくです。ダンサーやってます」
イ:そうなんですね。はやみさんは犬派ですか? それとも猫派ですか?
「猫派です。理由も添えるんですよね。目が可愛いから。あとしっぽと、体が柔らかいところ。黒猫が好きです」
――ノリノリで答えるはやみさん。
イ:速水さんはカラス派だと言っていましたが。
「カラス?……。じゃあ、それも好き、かな」
イ:大切な人はいますか? いたとしたら、なぜその人が大切なのですか?
「大切な人……。この質問はパスで」
イ「じゃあ、次の質問です。10億円あったら、何をしますか?」
「世界征服!」
(いい笑顔で)
「――というのは冗談」
イ:ここ最近で一番楽しかったことや面白かったことはありますか?
(顎に手を当てて考える)
「楽しいこと?ここ最近……ってどのくらい?」
イ「一年とか、半年くらいでしょうか」
「特にないな。カラスが芸を覚えたくらい」
イ「どんな芸ですか?」
「俺が横断歩道を渡るときに、左右を見る芸」
――はやみさんの代わりに安全確認をして、危なく無かったらガーと鳴くそうです。
イ:悲しかったことはありますか?
「即パス」
イ:目の前に傷ついた子供がいるとします。どうしますか?
「近寄って行って、さらう」
見覚えがない異性が声をかけてきました。どうしますか?
「え?普通に――=====」
イ「放送コードに引っかかったようです(汗)」
【自由に質問】
イ「FAXは――……。届いていないようですね。すみません」
「………いえ」
※しばらく無言になる。
イ「で、では、速水さんと同じ質問でどうでしょう!?」
「それな」
イ:――ちょっと乗ったのかテンションを上げるはやみさん。よかったーー!!
①――ジャックさん、いつもかっこいいですが、何食べてますか?
「サンドイッチとハンバーガー!」
(元気に即答)
イ:サンドイッチおいしいですよね。ハンバーガーもお好きなんですよね。
他に好きな食べ物は?
「鶏肉。ささみとか」
イ:鶏肉・ささみ(笑)カラスは食べないんですか?
「あいつら、食べようとすると逃げるから……」
(深いため息)
②――行きつけの美容室やエステサロンを教えてください♡
「そのへんで適当に。……また行ってくる」
③――足を長くするには……、じゃなくて、ダンスが上手くなるには?
「毎日踊ること。たまには休むこと。基本はしっかり、あと踊っている自分の姿を鏡でよく見ること。観客を意識すること……。誰もいなくても意識する。……いると思えば君のファンはそこにいる?」
(微妙に投げやりに語尾を上げるはやみ)
イ:最後に、このインタビューを読んでいる人にメッセージをどうぞ。
「インタビューお疲れ様」
―――。
目が覚めると楽屋だった。
<おわり>