─上─
「マルシア・ドロマー!ここへ!」
あっ。断罪ルート回避でけれへんかった。
私はマルシア・ドロマー。公爵家の生まれだ。
といってもただの公爵令嬢ではなく……いわゆる「転生者」というものである。いや、それだけではない。私は、この世界が前世でゲーム……乙女ゲーム「まじぇすてぃか♡らぶ!〜シュガー編〜」だったことを、そしてこの「マルシア・ドロマー」がそのゲームに登場する、美しくも横暴で恐ろしい悪役令嬢だということを、よくよく知っている。……しかしすごいタイトルだなこれ。
私はかつてこことは別の世界———ここの世界の大導師からは「テレストラ」と呼ばれているらしいが———に住んでいた。日本という国に生まれ、育ち、平凡に生き……どうやら死んだらしい。
どうやら、というのは私自身なぜ死んだのか、いつ、どのように死んだのかが全く記憶にないためである。
とはいえ大学を卒業した記憶はあり、職について働いた記憶も少しはあるので、おそらく大学卒業から1〜2年で死んだものと思われる。
2歳で前世の記憶を思い出したときなどは、自身が悪役令嬢になってしまった事実に気づかず、それよりもまずこのような大いに権力の或るドロマー公爵家の娘に生まれたことに対して「よっしゃあ内政チートじゃあ!!!」などと思ったものであった。
まあ、双子の兄のマーク・ドロマーもまた内政チートかな?というレベルの知識と知恵と頭脳を持ち合わせており、私がチートすることは全くなかったのだが。
ちなみに双子の兄がその知識を一体どこで身につけて来たのか全く不明である。転生かな?とも思ったが、それにしては振る舞いがあまり前世の世界の者っぽくなかった。いやもしかしたら前世でもいいとこの御坊ちゃまだったのだろうか。知らんけど。
そう、私には双子の兄がいる。「まじぇすてぃか♡らぶ!〜シュガー編〜」のマルシアにはいなかったのだが、なぜか私には私にとてもよくしてくれる、輝く銀髪に美しいサファイアのような瞳を持つ双子の兄が居るのであった。
この双子の兄マーク・ドロマー、幼い頃から私のことを心から大切にしてくれていた。
例えば私が記憶を断片的に思い出していたその日、鏡を改めて見たとき。
自分の体についてるその美麗な銀髪とルビーのような美しい瞳からさらに記憶が芋づる式に飛び出してきて、自分の転生先が悪役令嬢、しかも行く末は断罪ルートからの没落追放後なんやかんやの果てに落下死エンド……であることに気づいた私はもう絶望に満ち溢れてしまってその場で卒倒。
マークはそんな私を見つけて「たにあー!!まるしあが!まるしあが!!」と私たちの乳母を務めてくれていたタニアを真っ先に呼び、さらに「まるしあ!しんじゃいや!おきて!!」と、まるまる三時間話しかけ続けてくれていたらしい。
ちなみにタニアと共に私の母もが駆けつけてくれたが、二人とも倒れた私を見てさらに卒倒しそうになったので結局母上の侍女のサヴラと家政婦長のミリーがなんとかしてくれたそうだ。
自分が悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた後の私は、断罪ルート回避のために出来る限りのことをした。
……まあもちろん一番の原因、第一王子との許嫁関係はもうなんかどうしようもなかったので、他のことを頑張った。
他の貴族の幼い子供達と仲良く遊び良い関係を築くこと。
件のヒロインとして現れるはずの男爵家を公爵家として陰に陽に手助けし、「たとえヒロインが現れ、自分を害することがあっても彼女の父親自身がそれを咎める」という状況を作ったこと。
ヒロインことリリカ・フェイン男爵令嬢自身とも親しくし、「困ったときは助け合うこと」を約束するとてもよい友人関係となった。
なおこの射干玉の黒髪黒目が美しいリリカ・フェイン嬢、なんと私同様「テレストラ」とこちらから呼ばれている世界からの転生者で、最押しが作中ではモブ友人ながらも大変美しいアクアマリンの御髪にシレスティアルブルーの瞳を持つ大変な美少女のミロア・カーブレン伯爵令嬢という百合女子であった。
ちなみにミロア嬢も百合女子であったようで、結果リリカ嬢とミロア嬢は大変仲の良い百合ップルになっていた。
要するに私は、無事に布陣を敷きすぎて安心していたわけだ。
———ここはエニストル王国唯一の学校、エニストル王立学院。今日は卒業記念パーティということで、学生、教師のみならず多数の人が詰めかけている。
冒頭の呼びかけは、この国の王子にしてわかりやすいほどの金髪碧眼イケメンのジュリアス・エニストルによるマルシア断罪シーンの最初の一言だ。
間違いなく覚えている。あんなに横暴で、気高く、それでいて美しかったマルシアが、それまでの姿とはうって変わってとてもあわれっぽく泣き叫ぶ姿が可愛すぎて可哀想すぎて何度もゲーム内のマテリアルを閲覧したから間違いない。
「マルシア・ドロマー!貴様はフェイン男爵令嬢リリカ・フェインを様々な方法で傷つけた!貴様のような奴をこの国の王妃として認めることはできない!エニストル王国第一王子ジュリアス・エニストルの名において、貴様との婚約を破棄し、国外永久追放とする!」
ああ、このセリフも全く同じだ。違うところはただ一つ、リリカ嬢本人がミロア嬢にあーんしている体勢のまま目をまるくしてこちらに向けているところだろうか。
「……様々な方法、とは?」
「惚けるな!貴様はリリカの私物を盗み隠したばかりか、教科書を見るも無残なほどに切り刻み、さらには階段から突き落としたというではないか!」
リリカ嬢の方を見る。驚愕の表情のままふるふると首を横に振るリリカ嬢。ミロア嬢などはなんとも言えない顔で泣きそうになっている。
「……確かな調べでございますか?」
「信頼できる情報源からの情報だ、間違いない!」
「信頼できる情報源とは?」
「もちろん我が近衛の者達だ!これ以上信頼できる者はいない!」
堂々と並び立つ第一王子の腹心の者達。この国のもう一つの公爵家であるコラーグ公爵家の長男ルーカス・コラーグ、武官ジャンダレス伯の息子にして騎士団長を兄に持ち自らも騎士として鍛錬を積んできたセリオ・ジャンダレス、そのセリオのよき友として辺境伯の息子として共に研鑽に励んできたユアン・ルリクス、そして王立魔術研究所の所長エスペリア伯の息子にして自身もまた優秀な魔法剣士のプリス・エスペリア。……全員、攻略対象だった男性達だ。
「その者達は全員間違いなくまことを申している、と言い切れますか?」
「貴様!リリカのみならず、わが盟友達をも愚弄するか!!」
「お、恐れながら申し上げますが……」
おずおずと手をあげるリリカ嬢。小首を傾げたお陰か天鵞絨のように美しい黒髪がつやつやとして光を照り返している。美しい……とか思ってる場合じゃなかった。
「私、そのような行為をマルシア様からお受けした覚えがありません……」
「リリカ、そのような者を庇う必要はないよ。君の苦しみは恋人である私が一刻も早く取り除いてあげよう」
話が通じない…といった呆れたような悲しいようななんとも言えない顔でリリカ嬢がこちらを見た瞬間、
「お待ちくださいませ!その発言!我が国の第一王子であれども聞き捨てなりません!リリカ嬢と恋仲にあるのはわたくしでございます!」
ミロア嬢が飛び出してきた。美しいシレスティアルブルーの瞳に涙をたっぷりと浮かべて、必死にこぼさないように耐えている。
「リリカ嬢を世界一愛しているのはわたくしです!リリカ嬢との恋路を邪魔するものを追放なさるとお言いなら、このミロア・カーブレンを追放なさいませ!」
「そんな!それならば私リリカ・フェインはミロア・カーブレン嬢が追放されるようなことがあれば!共についてまいります!私は彼女と離れることは決してありません!」
「リリカ……!わ、わたくし……」
「ミロア……私は絶対、あなたを一人になどしません……!」
「ああ!ああ……リリカ……わたくしも……わたくしもです……!わたくし、あなたを守りたいばかりに……」
「ミロア……涙まで朝露のように美しいミロア、あなたをこそ、世界で一番愛しています……」
「リリカ……!」
突然始まった夜のような美しい美姫と深海のような美しさの美姫による白百合咲き誇る美しいラブラブシーン。こんなの百合厨でなくても見入っちゃうの仕方ないよネ!と思っていたところ、間接的にフラれたショックから立ち直ったと思しき我が国の第一王子ジュリアス・エニストルがおもむろに咳払いをした。
「……今の話はまことか?」
「もちろんでございます。わたくしミロア・カーブレン、竜神様の前でリリカ嬢への永遠の愛を誓いました。この愛に間違いはありません」
「私リリカ・フェインもまた、竜神様の前でミロア嬢への永遠の愛を誓いました。申し訳ありませんが、ジュリアス王子と恋仲になった覚えはございません」
「……お前達、どういうことだ?」
王子、振り向いて側近達に確認を取る。コラーグ公爵家の嫡子ルーカスが前に出た。
「……殿下。申し訳ございません。殿下の許嫁であるドロマー公爵令嬢が嫌がらせをしていると聞いて、すっかり殿下と親しくしているリリカ嬢への嫌がらせだと思い込み……」
「マルシアが嫌がらせをしている事実は相違ないのだな?」
「ええ、確かでございます」
「……マルシア」
王子がひたりとこちらを睨みつける。といっても私にもそのような記憶はない。毎日リリカ嬢やミロア嬢と茶会にいそしんだり、マークと共に家の用事を済ませたりするので忙しくも充実した時間を過ごしていた。そんなくだらないイビリに使う時間などなかったともいえる。
「……いえ、記憶にございません。見間違えではございませんか?」
「まだいうか。それは竜神に誓えるか?」
———またでた、竜神!
先ほどからミロア嬢とリリカ嬢もこの竜神の前で誓ったとか。いや確かに私もいるところで竜神にそんな感じのことお祈りしてたけど。それにしたって前世でゲームを楽しんだときは普通に神、だったのになぜ竜神なのだろうか?いつの間にそんな設定が生えたのだろうか。
「答えられないか。やはり貴様とは婚約を破棄———」
「———殿下。まさかあなた様がご存知ないわけありますまい」
マークだ。今までいったいどこにいたというのか。私が困ったとき、いつの間にか現れて助けてくれる双子の兄。
「何をだ。申してみよマーク・ドロマー。内容如何によっては貴様も共に放逐だ」
「もちろん、我が妹マルシア・ドロマーこそが竜であり、竜神の御使にして竜神の化身であることをです」
えっ、なにそれ。私全然知らんのやけど。
「何だと?」
「完全な竜となれる娘としてマルシアはこの世に生まれ落ちました。私はそのマルシアが人の世で生きる助けとして竜神に遣わされ、共に生まれた者。彼女の見る世界が竜神の見る世界であり、彼女の聞く世界が竜神の聞く世界であります。いつかマルシアはその翼で大空を羽ばたくでしょう」
「……初耳なのだけれど……」
「ああ、マルシア本人には今日まで秘密にするようにと母上、いや先代の竜神の御使からのお達しだったんだ。誕生からずっと、ゆっくりと御使としてのいろいろなことが移譲されて、今日で全部終わるんだそうだよ。まあ、まさかこんなばらし方にするなんて思ってなかったけど……」
つ、つまり私自身が竜神の御使にして竜神の化身?しかも竜になれる?いやもうちょっと頭がパンクしそうだけど、そういえばミロア嬢とリリカ嬢は私の目の前で竜神への誓いの祈りをしていたはずだ。ミロア嬢達、教えて。ていうか助けて。
「……ミロア嬢」
「マルシア様、秘密にしてごめんなさい。私たち、マルシア様を通して竜神様に誓っておりました」
「やはり、お咎めになられますか……?」
「……いえ、その……なるほど……いえ、問題ありません、もちろん不問です。知らなかったとはいえあなた方の愛は本物、お、おそらく竜神もお認めになるかと……?」
「マルシア、今はもう殆どマルシアの言動が竜神の一存みたいな者だからそんなにかしこまらなくていいんだよ」
「で、では竜神の名の下にあなた方の愛の誓いを再び受け入れ、祝福しましょう」
「ああ!祝福まで……!ありがとうございます、マルシア様!」
「嬉しゅうございますわ!」
わあ!私の言動が竜神の言動だそうだ!怖いね!
そういえば母上も度々全く関係ない貴族や平民の結婚式に赴いたりしてたっけ。もしかしてこれだったのかな。
「あ、あの、そんなに畏まらないで。友として応援したい気持ちが一番大きいの」
「まあ……!私、竜神様として祝福していただけて、舞い上がってしまって……友としても応援してもらえるなんてこれ以上ない至福だわ」
「ありがとう、マルシア様。私も、友としても応援してもらえるなんてとても嬉しいの」
「これからも、私と友でいてくれるかしら?」
「ええ!」
「もちろん!」
少なくとも、私が竜神の化身だとしても二人はまだ私と友でいてくれるそうだ。ああ、良かった、そんなに大して変わることはないな、とか思っていたらまたおもむろに我が国の第一王子ジュリアス・エニストルが咳払いをした。そうだ私いま断罪シーンの途中だった。
「……マルシア。君は……竜神の化身、だったのか……」
「ええ、ゆえにマルシアが竜神に誓うことはありません。マルシアが誓いを立てるとしたら竜神として、民に誓いを立てる時でしょう」
「……つまり、私と彼女との婚約関係は……」
「気づいたか、ジュリアス」
「……父上、」
いつの間にか到着していたらしい国王が、近衛騎士に囲まれて階段上から降りてきた。私も含め、皆急いで頭を下げるが、すぐに「皆の者、楽にして良い」と声がかかり、顔を上げた。その瞬間、太陽のように輝く金髪が目に飛び込んでくる。そして晴れ渡る夏の青空のような吸い込まれそうな青眼は、迂闊で哀れな王子の姿を捉えていた。
「……そうだ。私が是非とも竜神の血筋をわが王家に、と望んでのものだ。それを……」
「……私が台無しにした。そうですね父上」
「そうだ。あまりにも浅慮で、あまりにも幼稚であった」
「……私は目が曇っておりました。如何様な罰もお受けします」
「成る程」
す、と王がこちらを見る。わ、私だろうか。いや確かにこの状況では私の方向いたら私しかいないか。
「……マルシア・ドロマー、いや竜神の化身マルシア嬢よ」
「はい」
「……この愚かな息子を、王家と同等、いやそれ以上の貴さをもつそなたの婚姻相手とするわけには行かぬ。だが、私はどうしても竜神の血筋がこの王家に欲しい」
「……はい」
「……故に、どうか、王家のものと婚姻を結んで欲しい。第二王子オリヴァーでも、第三王子ジェレミーでも、……そなたさえ良ければ、この老いぼれでも」
「ち、父上?!」
そうだ、ジュリアス王子の母であらせられる正妃のシェリー様は、すでに儚くなられていたのだった。
えっ?じゃあ私いま新しい現王妃になって欲しいって言われてるの?この壮年の男性の魅力を一身に集めたような輝く太陽のようなお人に?ちょっと!私ずっと誰にも言ってなかったけど前世からだいぶ国王ってかスティーブン様推しだったんだけど!!まじで?!
……と思ったがもちろんすぐに返事はすべきでないことはわかっている。私は公爵令嬢。そういったことは親を通して話さなくてはならない立場なのだ。
「……両親とともに、会談の場を設けていただけますと幸いです」
「勿論。そなたの都合さえつけば、いつでも伺いたいところだ」
「そんな!陛下にご訪問いただくなど恐れ多く……」
「そなたは貴い竜神なのだ。是非私に参拝の機会を与えて欲しい」
「そそそ、そ、そんな……身に余る光栄で……恐れ入ります……」
ぎゃー!太陽のようなイケオジったらそんなに優しく微笑まないで!!春の日差しの如しよ!!とか内心で思っている私をさておいて話はとんとん進んでいく。
「……ところでコラーグ公の嫡子ルーカスよ」
「……はい」
「竜神の前でもう一度問おう。先ほどの、このマルシア嬢が何者かに嫌がらせをしていたというのは、誠か?」
「……」
「答えぬか」
「……」
真っ青になって固まるルーカス。見たわけがないのだ、幻を見た場合以外に。答えられないのも仕方がない。しかしそこまで竜神は重んじられるものだったのか。ちょっと緊張しちゃうぞこれ。
「……答えぬ場合はこれを是とする。竜神の前で偽りを申したとあれば、さらなる罪に問われることは間違いないぞ」
「……誠ではありませぬ」
「ほう」
「……私が全て独断で行ったものにございます」
「ルーカス?!」
騎士団長の弟セリオ・ジャンダレスが声をあげる。この反応はもしかして「お前全部引っ被る気か!」的なやつだろうか。
「恐れ多くも申し上げます!ルーカスの独断などではありません!私が竜神の御使の継承を知らずにルーカスを誑かしたのです!野心があったのは私です!」
「……ほう?」
「いいえ陛下、私が全て行ったものでございます。コラーグ家はドロマー家に一歩劣る立場。此れを覆せば国内で有利に立てると思ってのものです」
ほら見たことか、と言いたいところだが。なぜこんなにも熱心にお互い庇うのだろう?
「……国内で有利となって何を為すつもりであったのだ?」
「同性同士の婚姻を認める法を作りたかったのです」
…………えっ?
「ジャンダレス伯の次男セリオ・ジャンダレスを私の婿としてコラーグ家に迎えてもよい、という法を作りたかったのです」
「やめろルーカス!もういいんだ!」
「……我々も同じ理由です」
さらに後ろから出てくる辺境伯の息子ユアン・ルリクス。「魔法卿」の息子プリス・エスペリアもおずおずと出てくる。びっくりするくらい顔がいい四人がずらりと並びたっていてなかなか圧巻だ。
「その法ができれば、私もプリスを婿としてルリクス家に迎え入れたいと思い彼らに協力いたしました」
「僕……じゃなかった……わたしたちが企んだものなのです。ジュリアス王子とルーカスが行ったことの責任はわたしにあります」
つまり、平たく言うと。
どうしても現法では結婚できなかったから、そう言う法を作りたいために、うちを、ドロマー家を追い落としたかったと。
いやいやいやそれこそ私とかマークに言えばよかったんちゃうん?とか思ったがもはや後の祭りなのは明白。私にできることは特にないのであった。
「……マルシア嬢。私は……このルーカス・コラーグは……愛に狂って、友であったはずのあなたに許されないことをした。竜神からの祝福の加護が得られない、いや、罰すらうけるであろうことは承知の上だ。だが、どうか……愛だけは、セリオへの愛は本物であることを、あなたに、竜神に証明し、誓わせていただきたい……!!」
「ならぬ!コラーグ公子ルーカスよ、貴様は今……」
「……わかりました」
「マルシア嬢!」
「……罰の如何によっては2度と私に会えない可能性があります。私を通し竜神に誓うというのなら、いま、この場でなさいませ」
「有難き幸せ……!!」
誓いの言葉を私に向かって発し始めたルーカスとセリオ。ユアンとプリスも同様に誓いを述べ始めた。
っていうか誰かなこの平和な「まじぇすてぃか♡らぶ!〜シュガー編〜」をBL時空にしたお友達は。そりゃ「(前略)〜ビター編〜」の展開だって聞いて……
———あれっ?
「ありがとうございました、マルシア嬢」
「悔いはありません。如何様な罰もお受けいたします」
「マルシア嬢の寛大さに感謝するように。沙汰は追って言い渡す。それまでは各々の家で謹慎とする」
「はっ」
———マーク・ドロマーってビター編主人公じゃない?
その場は「後日王家主催にて卒業祝賀会を開催する。今日はこのような形になってしまったが……当初卒業記念パーティの予備日として設定していた日にではあるが、王家から、いや私個人として、改めて皆の卒業と進級を祝わせて欲しい。追って手紙で連絡しよう」という王のお達しによりその場で解散となった。