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コード・オブ・ジ・ランカー  作者: カクカラ
1章 つながる世界と無慈悲な人情
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2話 走り続ける少女?

カーテンで閉め切られた一室。

天井にはロープのようなものが吊られていた。

閉め切られた部屋に1人の少女らしき人。

吊られていたロープに手をかけて脚立に1段1段上がっている。

息が荒くなってきて首にロープをかける瞬間がわからない。

誰も呼びに来ない。

本当に静かな場所。

家なのにこんなに物静かなのは何でだろうか。

家族が呼びに来てもおかしくないのに。

誰も呼びにくる者はいなかった。

あの日を思い返せば嫌な事ばかりだ。


高校入ってすぐの頃、何故かいじめの対象になってしまった。

しかも、対象がたった1人。

毎日のようにいじめを受けていた。

机に落書きされたり、イスに画びょうが置かれていたり・・・。

お昼の時もお弁当を捨てられたり、頭にかけられたりといろいろな事をされた。

毎日何時間ものいじめを受けて精神共にボロボロになっていった。

家に帰っても安息はない。

親にご飯も与えられない、お風呂にも入れない、体罰を与えられていたりと。

1日1日がボロボロになるぐらいにまでやられていた。

それが3か月も続けられていると、体力的にも精神的にも限界を達していた。

誰も助けてくれない。

ただ見たふりをしているだけ。

声をかけてくれない。

心が折れそうになった。

折れそうになった瞬間、何かが音を断てて崩れていった。

そして、すべてが崩れた瞬間。

人間という概念が崩れた。


そして、今。

決心をしてロープを首にかける。

これで終わる。

もう何も怖がることがなくなる。

こんな事をしてはいけないってみんなに伝えるために。

さぁ、終わろう。

脚立を足でどけた瞬間だった。


「さぁ、君が世界を変える瞬間だ。人間という概念を、社会という概念を変えるんだ」


その声が響いた瞬間、時計の針が止まった。

気が付いたら自分は走っていた。

木々をかき分けて先にある道をひたすら走った。

後ろを振り向くと、何かに追われているような気がした。

草木が揺れている。

風じゃないなら何かがいる。

必死になって走って行った。

息が切れそうになる。

このまま立ち止まりたい。

でも、立ち止まったらどうなるんだろうか。

襲われる。

いや、食われるかもしれない。

得体の知れない物に追われているなんていう恐怖心は計り知れない。

道があるまでは走り続けていくしかない。

光の射す方へ向かって。

黒い髪が光に透けていく。

少し焼けた肌が汗と混じってヒリヒリとさせる。

顔には大きな傷のような痣。

少年のように見えて少女のように見える。

まぶしい太陽が木の影に隠れている。

何もない場所に出たらどんな景色なんだろうか。

わからないまま走り続けた。

つまずきそうで、足が攣りそうで。

早く光が見えてほしい。

そう願い続けた先にようやく光が少しずつ差し込んでくる。

小さな光が大きくなっていく。

その先に何があるのか。

ここがどこなのか。

わからないまま走った先の光。

酸素が切れそうになっていく。

意識が遠のく。もうダメだ。

でも、その先に何があるのかを見てから立ち止まりたい。

光に向かって一心不乱に走った。

追いかけられている相手が何なのかを知らずに。

木々や草木がなくなり、まっさらな場所に着いた。

そこには山が見え、木々が色づき始めている。

鳥のさえずりが聞こえ、透き通った風が吹いた。

辺り一面、山や木に覆われている場所が一望できる場所にたどり着く。

息を切らしながらも見上げる景色は何か違った。

それは新鮮で見たことのないような景色にも見えた。

1歩1歩歩く。

だが、その先に道はなかった。

バランスを崩しそうになった時、小さな石ころが下に落ちていった。

ここは崖。

下には緑が生い茂った木々や草木だけ。

地面につけば花だって咲いているかもしれない。

でも、高さが約7メートルある崖からどうやって先に行けばいいんだ。

ここから落ちれば死ぬかもしれない。

なら、後の手段はないのか。

そう思った矢先。

グオォォォォォッ!!!

何がか鳴いたような声がした。

すぐに後ろを振り向くと、何かが迫ってくる。

地響きがしていて近づいてくるのがわかる。

何かが来る。緊張感が走る。

少しずつ音が鈍くなっていく。

草木の揺れが荒れていった。

追われていたのは何なのか。

音とともに次第に恐怖感を増し始めていた。

押し殺すように暗示を頭の中に叫び続けた。

そして、その正体は音と共にやってくる。

大きい巨体で毛が生えていて、鋭い牙。

鋭い目つきに獲物を捕らえようとするような睨み具合。

間違いない、こいつは熊だ。

しかも、あのツキノワグマ。

2メートル級の強者。

こんなものを敵に回すなんて無理な話だ。

汗がしたたり落ちていこうとしている。

どうしたらいい。

このまま落ちるかそれともこの熊を退治するか。

でも、武器なんて持ち合わせてない。

立ち向かうなんて無謀にも程がある。

死にに行くのと一緒だ。

なら、もうこの手段しかない。

熊に背を向けて一息入れて勢いよく崖まで全速力で走った。

熊も獲物を狙うようにまた走り出した。

崖まで近づくと下に落ちるのを覚悟したかのように飛び出した。

宙に浮いたみたいに一瞬だけふわっと浮いた。

熊は崖の先すれすれで立ち止まった。

諦めがついたのだろう。

だが、まだここからだった。

恐怖という怖さが。

ジェットコースターみたいに一気に急降下していくように落ちていく。

1秒ごとに降下する速さが増してくる。

このままでは落下だけでは済まされない。

頭だけでも守ろうと両手で頭をおさえた。

もうそろそろ地面に着く。

生い茂った大木の木々に擦れていく。

切れていく皮膚からにじみ出す血。

衝撃が少女を襲った。

痛みに耐えながら地面に着地できるまで堪えていた。

だが、大木の太い木に当たってしまい頭をおさえていた手が離れた。

その勢いで地面に叩きつけられた。

土の感触と切れた傷口が混ざってわからない。

意識が朦朧としていて辺りを見回すことが出来ない。

衝撃が強すぎたのか立ち上がることすらも困難になっていた。

一難去ってまた一難。

次々降りかかる災難が彼女の意識をさらに朦朧とさせた。

誰も通らない場所にただ1人うつ伏せになって倒れていた。

何が出てくるかわからない。

だが、もう逃げれる体力もない。

うっすらと景色がぼやけた。

その瞬間少女は意識を失ってしまった。

これから何が起こるのかも知らないまま。

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