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「んぅ…?」
気持ちよくすやすやと眠っていた瑠璃は、首筋から肩にかけて急に熱を帯びた違和感に意識が浮上する。
(なんだか熱い…)
「あれ?みんな?」
さっきまで、一緒に膝で寝ていたはずの5匹が水の壁の向こうに勢揃いし、誰かと話していた。
瑠璃が声を出した瞬間5匹は一瞬で瑠璃のそばに戻って来た。
『るり おきたのか。』
『もうすこし、ゆっくりねててよかったのですよ。』
「大丈夫。ありがとう。気持ちよくって寝ちゃってた。」
残念そうに言ってくれるみんなが可愛い。
膝に戻ってきたシオンを撫でつつも、水の壁の向こうが気になってしょうがない。
「ね?これってシオン?」
『そーだよー』シオンがのほほんと答えてくれるが、向こうに居る人は放っておいて大丈夫なんだろうか。
「誰か居るみたいなんだけど…?」
その人を見ると瑠璃はなんだかそわそわ落ち着かない気持ちになり、なんだか熱さが増すような気がしてならない。
『あぁ。りゅうおうだ。』
『るり、気にしないでだいじょぶー。』
クロウとシオンがのんびり答えてくれるも、瑠璃は焦る。
「え!?王様!?それってダメじゃない!?」
『いえ、もんだいありませんよ?』
ミントも、にこやかに酷い。
「なんだか、凄く気になるし、首が熱いんだけど…。」
瑠璃がぼそっと溢すと、クロウとミントが目線で会話する。
(ちっ、るりも感じるみたいだな。)
(そのようですね。もっと私達だけて過ごしたかったのに。)
『るり、ほんとうはもっとゆっくりとこのせかいについて、しっていってほしかったんですが、るりもきになっているようですし、きいてもらえますか?』
ミントが改めて説明の態度になり、それに合わせて瑠璃も、ちょっと気を引き締める。
『と、そのまえに、しおん、あっちにはなしにいってくれるか?』
『うん。いーよー。』
クロウがシオンに話しかけて、シオンはのんびりと瑠璃の膝から降りて、竜王の元へと向かう。
『さてと、るり。このせかいには、つがいってもんがあるんだ。』
「番って動物とかでよく言うあれ?」
『そう。それのことです。』
『でだな、いま、るりが感じてるあついかんじ。それはつがいがそばにいるとかんじるげんしょうなんだ。』
「え!?つまり、私の番がそこにいる人ってこと!?」
『そうなります。こちらにわたったときに、るりにも つがいもん といわれるしるしがうきでているんです。』
『それは、1つとしておなじもようはないから、ひとめでつがいだってわかるんだ。まぁ、みなくても、とうにんどうしはかんかくでわかるだけどな。』
この熱さがその感覚ってことなら、ばっちり分かる。
分かるけど、瑠璃は何と言えばいいか困惑していた。
両親からは並々ならぬ愛は貰っていたがどこか欠けた胸の感じを持て余していた。
首筋は熱を持っているし、鼓動は確かに高鳴っている。
でも、いきなり番だなんて言われてもすんなりとは受け入れられる気がしない。
「えっと。それって、私はどうしたらいいの?」
『るりは、なんのしんぱいもいらないぞ。』
『えぇ。わたしたちがいますしね。』
『るぅりぃっ。すき。』
『ろずもるりのみかたよ〜?』
「みんなっっ!」
ぎゅっと両手で抱きしめる。
感じたことない感覚に不安でいっぱいだったのだ。
『るりの、こころにしたがえばいい。むりにうけいれるひつようはないんだぞ。』
『えぇ、どうしてもいやだったら、けしましょ。』
「いやいや。ミントさん?笑顔がちょっと怖いぞー?」
つい、引き攣ってしまう瑠璃に、更に笑みを深めるミントに、若干引きつつも心が落ち着いてくる。
(そうよね。この子達がいるのに、怖がる必要なんてないんだ。この子達がそばにいてくれるだけで幸せなんだもん。)
『むぅー!ぼくも!』
ぎゅーぎゅー4匹を抱きしめていると、シオンの拗ねた声が聞こえきたと同時に、金木犀のようないい香りが漂って来た。
そちらを見ると、漆黒の美丈夫が近寄ってきて、残り2メートルほどのところで膝をついた。
その姿を改めて間近で見ると、瑠璃の首筋が更に熱を持ち、落ち着かない。
切長の二重が瑠璃から1秒も視線を離さず見つめる。
その視線でも、なんだか火傷しそうだった。
『おう。しおん。そっちも終わったか。』
『うん。』
『わりぃ。ありがとな。』
『いーよー。』
シオンはすでに瑠璃の膝の上に戻り、丸まった。
これ以上話すつもりはないアピール全開である。
(えっと...どうしよう。)
シオンが乗り、身動きが取れなくなって、気まずい。
「私はこの国の竜王で名をドヴェルグという。そちらの水の精霊様とのお話をお伝えしてもいいだろうか?」
場の空気を読んだドヴェルグが穏やかに話し出した。