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可愛い5匹と竜  作者:
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ペロッ...ペロッ...

「うぅ...ん...」

顔や、腕を舐められる感覚に瑠璃は少しずつ覚醒していく。


「うぅ...ん...みんな?...............無事っ!?」

愛犬に舐められていると理解した瑠璃は

かばっと起きあがり5匹を抱き締める。

途端に頭がくらっとしたが目を瞑りなんとか

やり過ごし、ゆっくりと目を開く。


「え。...ちょっ...ん?............どこ、ここ?」

くらくらする頭を支えながら、辺りを見渡す。

瑠璃は青々と茂った野原に座っていた。


『りゅうおうの くに だよ るりっ』

「竜王?ってあの竜?」

『あのって なぁ〜に? りゅうはりゅうだよっ』

「竜って、鱗とかついてるあのりゅ......え?......レモン!?ローズ!?喋ってる!?!?!?」

瑠璃、絶賛パニック。

「あ。ダメだ。 頭打った。しこたま打った。

どうりでくらくらするし、幻聴がするはずだ。」

『るりっ』

『るぅ〜りぃっ』

『げんちょってなぁ〜に?』

『あたまいたいのか?』

『だいじょぶですか?』

上から、シオン、レモン、ローズ、クロウ、ミントの順で瑠璃に話し掛ける。


「本当にみんななの??」

頭の痛みも大分やわらいで来たからか、冷静になろうと試みる。

『うん そうだぞ。 おれたちだぞ。』

代表してクロウが喋り出す。

『るり、やっと おれたちのことば わかる なったんだな。』

『ほんとに おそい。 しんぱいしましたよ。』

ミントが続く。

『おれたち ずっと、つたえる してた るり ぜんぜんわからない から こまってた』

クロウが耳と尻尾を哀しそうにぺたんとたらしながら尚も続けて喋る。

「そ、そうだったの...ごめんね。みんな...。」

『い〜よ〜』『るりすき〜っ』

場違いな軽さで答えるレモンとローズに、瑠璃は(あ、この子達はアホの子属性なのね)と理解する。

勿論、可愛いくてしかたがないが。

『やっと いっぱい おはなし できるねぇ〜』

と嬉しそうにニコニコと笑うシオンに(シオンは癒し系でクロウはオレ様?って言ったらちょっと違う気もするが、ミントは冷静なタイプだったのかぁ...)と認識を新たにする。

繰り返すが、勿論!可愛いくてしかたがないが。


「そ、それで、何度も悪いんだけど、あなた達は犬ではやっぱりなかったのよね...?」

『おれたちは せいれい だよ。るりのそばにいるために るりのせかいの いきもの まね して うまれたんだ。』

「精霊なの!?だからごはん要らなかったの!?」

『おれたちのごはん ばんぶつのき だからな』

(成る程ねぇ...)瑠璃の中にストンと収まった。

(消えたり、いつの間にか側に居たり、まぁ犬じゃないっては思っていたけど...)

クロウが説明を続けてくれる。

『ほら みてろ。』

そう言うと、クロウがぽんっと可愛らしい音を立てながら背中から羽根を出した。

クロウの艶やかな色彩そのままに正に濡れ烏のように美しい翼だった。


「っっっっ〜〜!!!!なにそれ!!!可愛いすぎるっっ!!!!」

瑠璃は興奮そのままにクロウを抱き締める。

クロウもまんざらではなく、瑠璃の頬に擦り寄る。

『あ〜くろ ずるいっ』『ずるい〜』

とアホの子

2匹もぽんっと音を立ててそれぞれの色彩の羽根をだして瑠璃に抱っことばかりに飛び付く。

2匹も難なく抱き締めて瑠璃は余りの可愛いさに

精霊ということも、今、どこに居るのかもすっかり頭から抜け落ちていた。


3匹を抱っこしたまま、

「シオンとミントも見せて〜〜」とお願いする。

『いいよっ』満面のシオンと『しょうがないですね』といいつつ嬉しそうなミント。

ぽんっとまたも可愛いらしい音を立てて2匹も羽根をだした。

『しお かわいい?』

小首を傾げるいつものシオンポーズ。

『みんとも どおですか?』

ツンデレなのか!と思わずにはいられないミントのはにかみながらの台詞。

「っっっっ〜〜!!かっ可愛いぃ〜〜〜!!!」

瑠璃のノックアウトに成功した5匹だった。



『でなっ これからなんだけどな さっきもいった

けど、ここはりゅうおうのくに で、りゅうが とうち してるんだぞ』

瑠璃が散々5匹を弄り倒して、撫で回して思う存分楽しんで、落ち着きを取り戻した頃に、改めてクロウが説明モードに入る。

そうでした。と、瑠璃も真剣に聞き入る。

『ほかにも いきもの いっぱい すんでる、ゆたかなとち だぞっ』

ふむふむと聞きながら、瑠璃は思ったことを質問する。

「クロウ、詳しいのね。あなた達もここに住んでいたの?」

『わたしたちは せいれいなので、どこにも ぞくさないんですよ。』ミントも説明してくれる。

『せいれい だからな、とち にくれば だいたいのことはわかるんだぞ。』

「そうなんだ...。」

(精霊って便利過ぎるなぁ〜クロウ達って凄いんだなぁ)などと膝で寝てしまったシオンを撫でながら考えていた瑠璃は、ふと先程の言葉を思い出す。

「...さっき私の側に居るために生まれたって言ってたよね?それってどういう意味なの?」

アホの子、レモンとローズは少し離れた所で蝶々を追いかけ回していた。

『るり 1000ねんに ひとり うまれるかどうかの まりょく を もつにんげんなんだぞ。

まりょくをもつ にんげんがうまれたら おれたちも うまれる。いっしょうを ともに すごす。

おれたち るりの ちから なる。』

隣で頷いていたミントも続けて喋りだす。

『そうなんです。るり、わたしたちの からだのいろがそれぞれの ちからなんです。 ためしに わたしのちから つかってみましょう。わたしはち(地) をすべるものです。はつどうは なまえ と おねがい と さきに いってから ないよう を どうぞ』

「地?木とか草とかってこと?」

ミントはにっこりと笑って頷いた。

(う〜ん...使えと言われもなぁ...そうだ!)


瑠璃は今、座っている野原で、ジリジリと焼ける背中をどうにかしたかった。

「ミント、お願い。大きな木を1本生やしてくれない?」

『まかせてください。』


ミントが尻尾を天に向けてピンっと伸ばしたら、元々胴体よりも濃ゆい緑の艶やかな尻尾がさらに濃くなったと思ったら、ぱちんっと弾けて緑の光がキラキラと舞った。

すると、思い描いた通りの場所に通りのりんごの木がズズズっっっっと音を立てながら、立派に実った。

「すごい...りんごの木とは口に出さなかったのに...」

瑠璃はア然とりんごの木を見上げた。


『るりと わたしたちは つながっていますから』

誇らしそうにミントが言った。

『いめーじ は だいれくとに おれたちに つたわるぞ。 すごいだろ?』

クロウまで誇らしげに補足する。

『それぞれの すべるもの は、くろうはやみ、しおんはみず、れもんはひかり、ろーずはひ です。』

「成る程ね。分かりやすくていいわね。【名前+お願い】で、詠唱が発動なのね。ミント、ありがとう!」

ミントはそれは嬉しそうににっこり笑った。






**********************

瑠璃が転生の光に包まれていた頃、竜王城の執務室では竜王、ドヴェルグは宰相のエルオラと共に机に山と積まれた書類を片付けていた。


せわしなく動かしていた手がピクリと止まる。

「ドヴェルグ様?いかがなさいました?」

「いや、何でもない。」

「左様でございますか。」

また、書類に目を戻し、手を動かしながらも、

やはり何か気になるのか、先程よりも手が遅い気がするエルオラ。


「ドヴェルグ様?やはり何か?」

「いや、気にするな。」

そう言われても、やはり身が入らない様子のドヴェルグにエルオラは休息を勧め、茶をいれることにする。


その時、ハッと2人で同時に顔が上がり

見合わせる。

「まさか、移り人でございますか!?」

エルオラが声を上げ、ドヴェルグが頷く。

それは丁度、瑠璃がりんごの木をもりっと生やしたときだった。



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