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可愛い5匹と竜  作者:
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ジリリリリィー!!

鳴り始めた目覚ましにもう朝が来たのかと

寝返りを打ちながら腕を伸ばす。

目を擦りながら起き上がり、カーテンを開ける。

朝日が部屋中に降り注ぎ、背伸びをした。


初夏の気持ちの良い青空が広がり、顔を綻ばせる。

(なんだか素敵な1日になりそうな気がするっっ)

そんな事を考えていたら、足にすり寄って来る可愛い愛犬を抱き上げるとペロッと鼻を舐められた。

「おはよう。シアン」

首周りと、尻尾の先だけふさふさのふわふわの毛に

おおわれており、胴や顔は短毛、全体の色は今日の空のように澄み切った淡い水色をしており、尻尾の毛だけはそれはそれは濃い青色の変わった愛犬。

生まれた時から一緒に居る唯一無二の存在だが、本当に犬なのかよく分からない。

というのも、いくら調べても犬種が分からないのだ。


同じく犬種が分からない犬(?)が後4匹おり、いずれも姿形と、瞳の色が金色なのは同じだか、それぞれのもふもふの色彩が異なる。

淡いピンクに尻尾は真っ赤のローズ、淡い黄緑に濃い緑の尻尾のミント、淡い黄色にオレンジの尻尾のレモン、艶やかな黒に尻尾は光が当たると青く見えるクロウの5匹が私が産まれた病院から退院し、家に着くと何処からともなくやって来て居座ってしまったのだとか。

これには両親も困り果てたが、5匹はとても利口で、こちらの問いかけに対しての返事の時か、赤子が泣き出す前にしか吠えなかった。

ベビーベッドで眠る私をそれは愛おしそうに短い前足を一生懸命に伸ばし、柵の隙間から覗いていたので引き離せなくなってしまったんだって。

野良とは思えない毛並みの美しさにどこかの飼い犬かと警察に届け出たが、どこからも捜索願いがなかったので、結局家で飼うことになったという経緯がある。


とはいえ、17歳の時に不慮の事故で両親を亡くしてからは、1人娘だった私はこの子達のおかげで立ち直ることが出来たのだから、5匹を飼う決断をしてくれた両親に感謝しかない。


幸いにも私名義で多額の口座を作っていてくれていたし、自分達に何か起こった時の為にと両親の友人で私のこともよく可愛がってくれている弁護士に全ての準備を頼んでいてくれていたので、17歳の私でも、立派に式を執り行うことが出来た。

大学も決まり、1人暮しをする部屋の準備も終わった頃の出来事で本当の別れになるなんて思ってもみなかったが強く生きていかなければと決意をした。


しかし、つくづく不思議な生き物だと腕の中で甘えるように胸にすり寄っているシアンを見つめる。

この子達は全くエサが要らない。

ふらりと順番に消えたかと思えば、いつの間にか側に

居るのだ。

この部屋にもいつの間にか現れる。

両親が亡くなったばかりの頃は5匹は片時も離れず

側に居たが、今朝はシアンしか居ないようだ。

小さな頃からそうなので、今更特に驚きもしないが。

「シアン、みんなはどこに居るの?」

返事はないとは思いながらもつい、何度目になるか分からない疑問を問いかける。

「くぅ〜ん?」と分かっているのかいないのか

小首を傾げる姿は可愛らしい以外何者でもないが、

やはり答えは分からない。


ともかく、そんな事を考えながら私、小鳥遊(たかなし) 瑠璃(るり)はそんな事情で1人暮しをする部屋でいつものように身仕度を整えなければと、シアンを床に下ろし、準備に取り掛かる。

見慣れた顔を鏡に映すと、日本人離れした瞳と髪の色に写真でしか見たことはないが、お祖母様を彷彿とさせる。

両親共にご近所でも評判な美男美女だったがザ・日本人な黒目、黒髪だった。

母方の祖母がそれは美しいクオーターで、特徴を瑠璃がバッチリ受け継いでしまったのだ。

(それにしても、安直よね...)

瑠璃は鏡を見る度に思う。瑠璃の瞳は瑠璃色、髪はブロンドなのである。

(5匹の名前も見た通りだし...)

おっとりとした両親らしいと苦笑する。

こんな見た目だからか、どこに行っても遠巻きにされ、話しかけて貰えず、こちらから話しかけても皆一様に伏し目がちになり、2.3言話すと逃げるように去って行くのだ。

大学生になってからは、割と話しかけられる事も増えて、お昼を共にする人もいたが、どこかよそよそしく感じる対応をされることもしばしばでやはり1人が楽だと思うことが多く、寂しい胸の内を埋めてくれるような人は居なかった。

実際はあまりに美人過ぎて、牽制しあい近づくことが出来なくなっていただけで、瑠璃に話しかけられたら緊張のあまり直視できなかっただけなのだが、本人は知るよしもない。


「さてと、そろそろ行かなくっちゃ」

準備を終えた瑠璃は、いつの間にか5匹揃っていた

愛犬達に行って来ますを言おうと両膝をついた

その時だった。

ガタガタと地面が揺れる。

「きゃあっ、地震!?」

その瞬間、ラグから目が眩むほどの光が溢れ魔法陣のような絵柄が浮き上がる。

5匹が飛びついて来るのを受け止めながら、瑠璃は光と共に消えた。


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