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特急の荒業
何とか列車を走らせている。一方、萩野さんの方は、
「ハハッ、こいつぁいいや。腰はしっかり落ち着いてるし、何より左肩壊してない‼」
極めて楽しそうだ。さっき気がついたことだけど、割りと助士席に座っている時間が長い。つまり、必要最小限の投炭で圧を維持しているのだ。これはベテランの技だ。やはり、萩野さんはすごい人だ。
通過駅前の速度制限標識が!閉めた方がいいかな?
「閉めんでいい。特急は再加速が命だ。ブレーキだけで減速しろ、いいな?」
ア、ハイ。
「遠方、オーライ!」
二人で声を合わせて歓呼する。
「場内進行、通過、オーライ!」
「いいか、第二出発でブレーキを解け。はい、本線出発、進行!」
「――、―!」
「はい、第二出発、進行!今だ、ブレーキを解け。」
「――、―!」
ブレーキの縛めが解かれた機関車が軽快な重低音を立てて加速して行く。