表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

目覚

 夜行列車のあとの仮眠はなかなか楽しい。入れ換えのB6等の甲高い汽笛と、ジョイント音を夢うつつに聞きながらなのだから。


 目が覚めて、妙な違和感を感じた。身体中が妙に重苦しく、痛い。重苦しいのは常日頃感じているものと違い、本当に重いというようなものだ。しかもこれまであまり感じたことがない、節々の痛みがついている。特に左の肘から肩にかけて。ゆっくり眼を開けてみる。目の前には見覚えがあるような、ないような少年とも少女ともとれる人物が寝ている。自分と、その周辺の機関区の乗務員は大抵知っているはずだから、新入りだろうか?そのわりにはくたびれた仕業服なっぱふくを着ている。煤と油に汚れた凄味のある仕業服だ。というか、この繕いあとは見覚えがある。というか、ボクのだ。鏡を極力見ないことと、鏡を見るのとは僅かに異なるから気づかなかったが、これは明らかにボクだ。じゃあ、ここに居るボクは?よく見れば、着ている服は古くなった制服を使い回した二種仕業服だ。仮眠明けの人向けの姿見を恐る恐る見れば、そこには、萩野機関士が居た。どうしていいか解らないうちに、目の前の『ボク』のまぶたがゆっくりと開く。


「んぁ、なんで、俺が目の前に居んだよ。」


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「つー事はだ、俺達の中身は入れ替わっちまったと。」


 どっかりとあぐらをかいた『ボク』が、それを言う。中身は萩野機関士だ。


「戻れるかどうか、という心配より、先に帰りの仕業どうするか、だな。」


時計を見れば、帰りの仕業迄、あと一時間半もない。


「あー、くそ、小便してくらぁ」


待って、大丈夫だろうか。全くついていけない。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「ええ、クソ。厄介だなーッ。出切った感がせんし、いちいち拭かにゃならん。めんどいな、もう。」


はい、女はそんなもんなんです。お分かりいただけたでしょうか。


「でだ。帰りの仕業、お前が運転しろ。罐焚きは俺がやる。」


「――?」


「あのな、その体は、俺のだ。腰痛めてるし、左肩壊してる。だから許さん。」


えーっ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ