出会いのエピソード
悪役令嬢、つまりは主人公を邪魔して、攻略対象を取り合う少女のことだ。
こういうのは性格に難ありでも、主人公より美人と決まっている。
美人で俺を一途に慕うなら腹黑でもいいぞ!
しかし、もしかしてヒロインに惚れられたらどうするんだ俺、、まあないわな。
この世界は乙女マンガベースだけあって美形は半端ないマンガ顔だ。
きらきらとホントに輝いていて、暗い場所では照明の代わりになる。
戦争ならいい標的になりそうだ。
そんな美形が闊歩する世界で俺のような前世ではフツメンの下位は、今世ではブサメンになるらしい。
自分のことなので一応フツメンとしておきたいのだが、俺はおやじ似なのでそういう評価になるだろうな。
おやじはそんなに悪い人間ではないのだが、母や周囲の評判ではまずブサメンだけどがつくのだ。
いくら攻略対象補正があっても、そんな親父似の俺がキラキラ光る人達と勝負にならんだろう。
もう俺のハーレムはないんだから、悪役令嬢一人でもありがたい。
そんなしょうもないことを考えながら帰ろうとすると下駄箱のところで何やら騒いでいる。
「おいおい、ここら臭いにおいしないか?」
「するする」
「こんなとこにぞうきんがある」
頭の悪そうなガキが女の子を取り囲んで髪の毛を引っ張ってる。
眼鏡で地味なその子の髪は天然パーマなのだろう、くりくりとした髪がもさもさとしてるので、からかっているんだろうが悪質だ。
俺は止めるべくため息をつきながらそちらに行った。
「君たち、女の子にそんなことしちゃだめだよ」
俺はそう言って悪がきどもと女の子の間に入った。
「うわ、立花だ!めんどくせえいくぞ」
「そうだなーいこう」
あっと言う間にがきどもが去っていった。
さすが攻略対象補正だ。
女の子はびっくりしたようだったが、すぐに俺に礼を言った。
「ありがとう」
「いや、君にけががなくて良かった、えーっと高橋さんだっけ」
俺は名札に書かれた名前を見ていった。
「あ、はい高橋今日子です」
彼女は律儀に名前を名乗ってくれた。
「俺は立花薫、一応生徒会長もしてるから何かあったら、、」
そう言いかけた俺に彼女は青くなった。
「あ、あの、、立花薫さんって他にもいるんですか?」
「は?いやこの学校には俺だけだけど」
何言ってんだこいつという思いで俺が返事をすると、彼女は震えて言った。
「どうして、立花薫はこんな、ここはゲームの世界ではないの」
「ゲーム?」
俺がそう切り返すと彼女はあわてたように口をおさえて走り去ろうとした。
「待ってくれ、ゲームって何だ」
ここを逃したら彼女は警戒して何もはなさないだろう、俺はもしかしたらと思い彼女の肩をつかんだ。
そしてこういった。
「ここは、乙女ゲームの世界なんだな」