唯一のモテを無くす
俺は電話で高橋さんと話し合うことにしたんだが、彼女の声が不安に揺れているのが感じてとれた。
「ということは、やはり高橋さんも一日を繰り返しているんだな」
俺の言葉に彼女が息をのむ。「原因はやはり、公立を志望したことかな」
俺の言葉に高橋さんは押し黙ったままだ。
本人もわかっているんだろう。
「多分ゲーム補正がかかったんだろうと思う、このままじゃ進まないので、俺は志望を変えるよ、高橋さんの件はまたあらためてルートを変えよう、すべてのルートで硫酸おちでないなら他のルートを選ぶべきかと思うんだ」
高橋さんはおしだまったままだ。
「あなたはどうころんでも、何もないですもんね。ヒロインを好きになるかならないかですもんね、もう二度とお目にかからないようにします。では」
冷たい声でそう言うと電話を切られた。
でも、こうして俺たちの人生選択に強制性があるのだったら、合わないわけにはいかないとは思うのだが、恋も発生しないならば、前提から崩れさるのでこれはこれでありかもしれないと思った。
次の日から高橋さんは俺を無視し、俺も彼女を避け、学校を卒業した。
彼女がループを外れたか、それともやむおえずに選択したのか知らないまま。
モテないどころか唯一の悪役令嬢に熱愛されるというのも無しじゃね、やってられん。