9話 回想
9話 回想
僕はずっと昔の事を思い出していた。
僕は友達を作るのが苦手だった。
他の人は、クラスが変わっても1週間くらいで打ち解け合うのに、僕はいつまでたっても、仲良くなることができなかった。
でも、僕にはあるおじさんがいた。
平方 六助おじちゃんだ。
おじちゃんは今ではボロコウバで働いていて貧乏な街の修理屋さんだが、
昔は凄かったらしい。
一流大を卒業し、ノーベル物理学賞の候補として選ばれたくらいだった。
永久機関について研究していた。
アインシュタインの特殊相対性理論では
物質か消えると、
それに伴い莫大なエネルギーが出るいう事を示していた。
いわゆる原子力発電の基本的な理論だ。
そこで、おじちゃんこう考えた。
消えた物質は異空間に行き、その時、異空間から膨大なエネルギーが放出されると考えた。
つまり、物質が異空間への扉を開け、
それが開けている間だけ、莫大なエネルギーが放出されるとおじちゃんは考えたらしい。
つまり、異空間とこの世界を常に接続する何かがあればそれは永久機関になれるらしい。
おじちゃんはそれを研究していた。
僕がおじちゃんにであったのは、
小学1年の時だ。僕が公園で友達が作れないと泣いていると、
「どうした、小僧、いじめられでもしたんか。…なるほど、友達が欲しいんだな。おじちゃんが、友達になってあげよう。それとも、こんな年寄り論外か?
少し待ってなさい。
いいもんを持ってきてやる。」
そう言っておじちゃんは、
どこかに消えた。
僕はまた見捨てられたと思った。
でも、しばらくすると、おじちゃんが帰ってきた。何か手に持っていたようだった。
科学図鑑だった。
「小僧には、少し難しいかもしれんが、
いい友達だと思うぞ。」
僕は「もらってもいい?」と聞いた。
「もちろん」おじちゃんが当たり前のように返事をした。
「もし分からないときは質問に来なさい。いつでも公園にいるから」
そうおじちゃんは付け足した。
嬉しかった。図鑑をもらったのもそうだが、何よりもおじちゃんが友達になってくれたのだから。
僕は毎日おじちゃんのところに図鑑を持って会いに行った。
ある日僕は図鑑の最後の方に
おじちゃんの顔写真が載っていることに
気が付いた。
下には、大きく『永久エネルギー、未来の可能性』というタイトルと、『ノーベル物理学賞候補 平方六助』と書いてあった。
さっそくおじちゃんに質問しに行った
「おじちゃん、ノーベル物理学賞ってなに?」
「歴史に残る大発見や、誰も思いつかないような理論を編み出してそれを証明した時にもらうことのできるすごい賞だよ」おじちゃんがいつものように話す。
「それじゃあ、おじちゃんは偉いの?」
「え?」
おじちゃんが不思議そうに言った。
「だっておじちゃんって候補だったんでしょ」
「だったけど、実験に失敗したから、
今では悠々自適だけどね、でも、お前は俺と違って、やると決めたことはやり通せよ。
俺はお前が絶対に何か凄いことをしてくれる。そう信じてる。」
「分かった」僕はそう答えた。
その3日後、おじちゃんが加齢で死んだと耳にした。
葬式なんて誰一人ともこなかった。
僕の友達が……死んじゃった。
僕は、暗闇でずっと一人で泣いていた。
『僕』は、友達を作っちゃいけないの?
僕はそう思った。
僕は必死で科学を勉強した。もしかしたら、おじちゃんが現れるかもしれないから。
でも、現れなかった。
僕は、ある小説を思い出した。
(ケルンという少女がいた。
その人は、いつも汚い服を着ていた。
実はその人は平和を司る神だったのだ。
その人はある能力を持っていた。
それは自分が不幸になることで、
みんなを幸せにするという能力だった。
だからみんながすごく幸せな時は彼女は
地獄を味わっていた。
でも、それでも彼女はよかった。
みんなが幸せだったから。
しかし、それは変わった。
みんなが彼女をいじめ出したのだ。
人間は、自分より下のものをさらに蹴落としたくなる。
人間はそういう生物だ。
自分が幸せでも、もっと幸せになろうとする。
自分が助けられているとも知らずに。
少女はとても辛かったから自殺した。
それからだ。
彼女がいなくなってから戦争が勃発して、半年も経たずにその国は廃墟とかしていた。)
人間は所詮小さなパズルのピースに過ぎない。
なくなっても分からない。
でも、必ずどこかに影響を及ぼしている。
おじちゃんは所詮、公園のホームレスだったのかもしれない。
でも、おじちゃんがいなくなることは、僕にすごく大きな影響を与えた。
僕はケルンやおじちゃんが日の当たらない場所で死んでいくのがが許せなかった。
だから、僕は、人間が嫌いだ!
踏み台のことなんか見ようとせず、
踏み潰す人間が!
僕も踏み台だった。いつもみんなに踏まれていた。
踏み台は汚いから友達なんかできない。
いつもそうだ。
寂しかった。
そんな絶望を救ってくれたのは、
2番目の友達、角田 修二だった。
シュウジは僕と話があった。
二人とも科学が好きだったから。
「科学っていいよね。美しいたくさんの現象。虹や星や雲…どれも美しい。
でも人間は美しくない。」
それが僕たちのいつもの口癖だった。
シュウジも踏み台だったのかもしれない。
シュウジはとても、病弱だった。
だから、シュウジもおじちゃんのように
僕だけ残して『天国』に行ってしまった。
なんで僕を残すんだよ!僕はそう思った。
でも僕はもしかしたらまた2人に会えるような気がした。
いや、そう思わないと生きていけなかった。
僕は中学生になっていた。
僕は、生きて2人に会うんだ。
そう思っていたがダメだった。
先輩から「脇役っていうのは、人に踏まれて喜ぶ生物だ。お前みたいにな。
そして、
使えなくなったらまた新品のに交換される。
そう、不要な踏み台は捨てて処分しないとな」
それじゃあ、おじちゃんとシュウジは
処分されたのか。
だとしたら、僕が二人分頑張って、
『彼らは立派な人だった。踏み台なんかじゃない。僕だけが踏み台なんだ』って
思ってもらえるようになるために
優秀な脇役になろうとした。
でも、できなかった。
僕が、脇役になろうとすればするほど、
みんなが僕のことを面白がる。
僕が謝るごとにみんなが僕をあざ笑う。
おじちゃん、シュウジ、ごめんなさい。
僕は身代わりになれなかった。
でも、こんな踏み台を拾って、綺麗にしてくれて、さらには、僕に生きる希望を与えてくれた3番目の友達(恋人)がいた。
そう、レイだった。
でも、僕は、レイを殺してしまうのだろうか?
もうこれは、これ以上考えることのできない問題だった。
これ以上考えたらまた泣いてしまう。
今は、運命に身をまかせるしかないのだ。
そのうち最善策が
思いつく。そう信じていた。