最終話 生と死
最終話 生と死
俺は、救急車でレイを総合病院まで運んだ。
「この娘は、病院に運んでも、
もし助かっても、植物状態(一生寝たきり)
ですよ」
救急車の乗務員がそう言った。
「脇役は黙って俺(主役)の言うことを聞けばいいんだ。黙ってろ!」
そうだ僕は主役になったんだ。
手術室にレイを運び、
レイの『大脳』と『身体』を分離させた。
身体の部分は生き返ったが脳はダメだった。
でも、それは、予想できていた。
脳というのは他の部位よりもデリケートだからだ。
俺はレイの『大脳』を冷凍保存させ、
ある研究所に運んだ。
そこには、
大きなスーパーコンピューター
(スパコン)が堂々と置いてあった。
俺は、何をしてもいい。主役だから。
レイの大脳と、スパコンを接続して、レイの今までの記憶を
全てスパコンにコピーした。
実は、最近では、死んだ人の大脳から、
記憶を取り出すということができるようになっていた。
つまり、亡き天才たちの記憶を調べ、
分析することによって、天才を大量生産するというプロジェクトがこの研究所で始まっていた。
でも、そんなことはどうでもよかった。
レイさえいれば。
レイの記憶は全てスパコンにコピーされた。
次は、壊死した大脳の代用品を探す必要があった。
俺は、僕をいじめていた人や
見て見ぬふりをした人
を実験材料にして、色々と実験をした。
結果、100人の実験材料を使ったが、
レイの大脳の代用品は作れなかった。
そこで、僕はあることを思いついた。
大脳というのは『脳細胞』から出来ている。
コンピューターは、半導体の『素子』
という小さい部品から形成されている。
つまり、俺は『素子』を
『脳細胞』の代用品にしようと思った。
そう、大脳の代用品としてコンピューターを使うのだ。
ちょうど、1年くらい前、
おじちゃんのライバルであった物理学者の
『市田 一郎』という人が、半永久的な人工心臓を作り、ノーベル賞を授与した。
以前、人工心臓というのは、
体外にバッテリーをつける必要があった。でも、
市田の研究は、人間の血液の養分から
エネルギーを取り出し、そのエネルギーで
人工心臓を動かすというものだった。
つまり、完全に、
人工心臓が本物の心臓になった瞬間だった。
僕は、体内からエネルギーを取り出す方法を利用して、人工大脳を作り始めた。
そう、本物の大脳と同じ能力の『人生大脳』
を作り始めたのだ。
僕はレイの大脳の全ての細胞の
大きさ、形など、あらゆる情報も、
スパコンにインプットしておいた。
そう、一つ一つの脳細胞を、
半導体に置き換える為に。
僕は、日夜研究して、4年の歳月をかけて、
遂に、1つの脳細胞と同じ働きをする
『素子』の作り方を発見した。
人工知能というものだ。
それから、俺は、いろんな研究者に
他の細胞を作るように強制した。
大脳の図面と半導体の部品を渡したら、
喜んで引き受けてくれた。
だって俺は主役だから。
主役のいうことはなんでも聞く。
それが脇役だ。
脳細胞はとても複雑でたくさんあるため
全ての脳細胞を作り、それを組み立てるまで3年のもの月日を必要とした。
俺は、スパコンと半導体で出来た大脳を接続させて、
レイの大脳を作った。
僕は、早速、外科医に冷凍保存されているレイの身体に
この脳(人工大脳)を移植するよう命じた。
手術は成功した。
レイは、しばらくすると、約7年ぶりに
目覚めた。
そう、レイは生き返った!
「レイ、『僕』だよ、リクだよ」
いつの間にか、人称が僕に戻っていた。
僕は、ベットに横たわっていたレイに優しく話しかけた。
「リク、本当に、私を、蘇らせてくれたんだ。
あ、り、が、と、う」
レイは涙をこぼしながら、僕と抱き合った。
その時、
僕は、神が天井から降りてきたことに気がついた。
「やはり、お前は、レイをサイボーグにしてでも、レイを蘇らせた。さすがは私の友達だ。」
「この、話し方、もしかして神、
お前は『おじちゃん』なのか?」
僕は自分でも何を言っているのかよくわからなかった。
「そうだ、私はお前の大好きな『おじちゃん』だ。実は、私は、この世界の神なんだ。
最初は、主役が脇役をコケにしているところを『天上界』で何万年と見てきた。
でもそのうちに気がついた。
脇役だって主役になりたいと!
主役と脇役が生まれながらにして決定されるのはおかしいと!
私は、定期的に私のコピーを作り、
人間世界に送っていた。
そんな時、私のコピーがお前に出会った
。
私は、お前に惚れたんだ。
脇役でも、一生懸命に生きているお前に。
お前だったら、主役にはい上がってくれる。
そう思った。
こんないつも脇役が下な世界を
お前だったら変えてくれる!私はそう思った。
だから、私はお前に様々な試練を与えた
。
お前は世界一の主役であるということを証明するために。」
「おじちゃんは僕が苦しんでいるところをずっと上で鑑賞していたのか。僕が苦しんでいるところを楽しんでいたのか!」
僕は荒い口調で言った。
「悪かった。その代わり、1つだけ
お前の願いを叶えてやる。」
神は僕に話した。
「僕と、レイに永遠に永遠の命をくれ。」
僕はそう願った。
「悪いが、それだけは無理だ。
生きとし生きるもの。
たとえ神でさえ、寿命がある。
ただし、次の人生(来世)も一緒に暮らすということは『可能』だ」
「だったら、僕の次の人生は
レイの息子として生まれ、一生、レイのそばにいたい。」
「わかった、この願い、必ず叶える!」
おじちゃんはそう言って、消えてしまった。
「レイ、永遠に一緒だよ。たとえ、寿命が来ても、次の人生も、
その次の人生でも永遠に一緒だよ。
永遠に僕たちは幸せだよ。」
僕はレイにそういった。
「そうよ、リクとレイは永遠に一緒よ
好きだよ、、リク」
「僕も、好きだよ、レイ」
僕とレイは年老いても、ずっと一緒だった。
僕とレイは来世でもずっと一緒だった。
僕たちは、永遠に
幸せだった。