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12話 『家族』殺し

12話 『家族』殺し

僕は昔を思い出していた。

両親は、脇役だった。

父親はいつも会社の愚痴を言っていて、母親はいつもどっかに遊びに行っていた。父親はそのうち家に引きこもるようになった。

僕は、頼る人がいなかった……。

悲しかった。

家に帰れば、父親が待っている。

また……僕はいじめられる。

母親は暴力が自分に来るのが嫌だったから、いつもどっかに行っていたのだろう。

僕は精神的にも、物理的にも、父親から虐待されていた。

物理的な虐待には、耐えることができた。

でも、精神的な虐待には耐えることができなかった。

「お前は、努力したって意味がない。

だって一生、脇役(シタ)として生きるのだから。」

僕は、父親からそう言われた。

僕はそれを聴いてから、訳が分からなくなった。

だって、学校の隣に座っている人、

いや、僕の周りに座っている人は僕より遥かに価値のある人だということなのだから。

同級生たちは皆、『タメ口』で

話しているのに、

僕だけはみんなに『敬語』で話さなければいけないのか。僕はシタだから。

悔しかったが必死で我慢した。

僕は、苦しいとき、布団に入り、泣きながら「我慢、我慢!」とよく心の中で叫ぶ習慣があった。

それは、絶対に勝つことができない父にもうこれ以上いじめられたくなかった

からとった行動だ。

父の望むことだけをして、いつまでも『下』であり続ける。

そうすれば、いじめられない。そう思った。

僕はそれから、同級生たちとほとんど話せなくなった。

僕と同級生の間には、何か、とてつもなく巨大で薄暗い『壁』があると思ったからだ。

そう、僕は父親のせいで、友達がいなかった。

僕は父親から1秒でも逃げたかったから

盛んに

公園に行った。特に意味はなかった。

そんな時に、おじちゃんにであったんだ。

でも、すぐに死んじゃった。

それは、シュウジも同じだった。

僕は、いつもおじちゃんとシュウジに

会ってもう一度話がしたいと泣いていた。

父親はいつも僕が泣いているのをざまあみやがれという目であざ笑っていた。

「お前を育てるのに、どんだけカネが必要だかわかってんのか!ア〜〜!」

というのが、いつもの父の口癖だった。

僕の両親は「カネ」以外の言葉が言えないんだ、そう思った。

息子より、『カネ』の方が遥かに大事!

それが、『家族』だった。

でも、レイは違った。

こんな僕の第二の『家族』になってくれた。第二の『家族』、

それは、どんなに辛くても、

2人なら絶対に乗り越えられるという

意思の塊から形成されていた。

もはや、綺麗事だ。

でも、汚い所を知っていなければ、

綺麗なものというのは、

永遠にわからない。

父親が、

幼き僕を海外に売ろうとしてくれた時

『おじちゃん』は必死で空港の中で、

父に売らないでくれと説得してくれた。

おじちゃんの死から、離れることができなかった僕を闇から拾ってくれた

シュウジ。

自殺しようとしていた僕を救ってくれたレイ。

みんな僕の『第二の家族』だ。


話を今に戻そう。

今やるべきことは、

ほぼ絶縁状態にある父と母を殺すことだ。

父は酒に溺れていた。

だから、夜中、僕の『元家(モトイエ)

に侵入して、焼酎のでかいボトル瓶に

睡眠薬をたっぷり入れておいた。

1週間後、父は、遺体として家から発見された。

自殺として処理された。

ま、あんな無職(ニート)いなくなってみんな清々したと思っているのだろう。

所詮、地域なんてそういうものだ。

みんな自分さえよければいいんだ。

周辺の人は、みんな見て見ぬフリをしていた。

僕もそうだった。


母は、ボロアパートで暮らしていた。

でもそれを言うと、

レイは僕を置いて駆け足で、走って行ってしまった。

僕は必死で追いかけた。


レイは母のアパートの中で母と一緒

にいた。

レイは、僕の母を刺して、その後、

自分(レイ)も刺していた。

僕は、泣きながら、「なんで、レイ。

なんで、自分を……刺したんだい」

もう、僕は、これしか言えなかった。

本当は、レイにどうしてこんなことしたんだと大声で叫んで、抱いて、自分も死のうと思った。でも、

あまりにも、そうあまりにも哀しくて、

声に魂を吹き込むことができなくなっていた。

レイが涙を流しながら、

「これで、全員死んだね。

これで、リクは、主役だね。私、嬉しい。」

「何を言うんだ、まだ、『10人目』が…」僕は、そういったが、レイの言葉に遮られた。

「わかってた。私が『10人目』だと。

だって、リクは、殺している間

どんどん顔が暗くなっていったんだもの。

私は一番、あなた《・・・》を見ていた

『嘘』が下手だよ、レイ」


僕はレイを抱きしめ、こう言った。

「僕が、『どんな手』を使っても(レイ)を蘇らせる。たとえ、それが、(カミ)

に抗う行為だとしても!

だから、これは、ほんのちょとのお別れだ。だから、

だから、泣かないでもう一度、レイの、

あの可愛い『笑顔』を見せてくれ。

なあ、お願いします!」

レイは笑顔と一緒に息を引き取った。

人というのは、『大切な何か』を手に入れるためには、

自分の『もっと大切な何か』

を失わなければならない。

でも僕は、

レイだけは、どうしても失いたくなかった。だって「初恋の相手」なのだから。


僕の前に、神が現れた。

「これでお前が主役だ。法も、国も全てお前のものだ。

全ての人間はお前に服従する。お前は全ての人間をコントロールできるのだ。

どうだ、嬉しいだろう。」

神が、冷酷な声で僕にたずねた。

「おい、神よ、もし、がレイを蘇らせることができたのなら、僕は、レイとともに永遠に幸せでいてもいいか。」

僕は、人称が『俺』になっていた。

「ああ、そんなことができるんだったら、いつまでも共に愛し合うがいい!」

神はそう言って消えた。




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