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CAT 第9話

第九話です。ぜひ読んでください。


更新がだいぶ遅れたことをお詫び申し上げます。

(弱い。弱い。弱い……弱すぎる!弱すぎるよぉぉぉぉぉぉぉ!!!)

微かに見える視界。

そこに映る少女の口角の上がり切った笑顔。

そして耳が痛くなるほど甲高いその声―――――――






「っ!?」

「おっ、起きたか。タイガ」

「はぁ……はぁ……」

息が荒くなり、汗をかいている。

目を開ければそこに見えたのは見知らぬ天井だった。

そしてすぐに、知った男の声が聞こえる。ジョーの声だ。

「どうやら、意識は取り戻したようだな。立てるか?」

「え?あ、あぁ……」

ジョーに腕を掴んでもらい、起き上がるのを手伝ってもらう。

俺は真っ白服を着ていた。顔に触れると絆創膏の感触がする。

腕を見ると、包帯が巻かれていた。脚もだ。俺はいったい……。

「危なかった。正直、俺がもう少し遅ければ……『怪盗セブン』の助力がなければお前達は死んでいた」

「し、死んでいただぁ!?」

ジョーは真剣な顔で俺を見ながらそう言い放って来やがった。

「……説明しろよ。なんだ?あの女は?てめぇら、あの女の事……知ってんだろ?」

「それは……」

ジョーは、言葉をためらう。

俺に隠し事でもしてんのか?




「いいじゃないか。ジョー。そいつには私が説明しよう」

すると、俺とジョーのいた部屋の自動扉が突然開く。

「五十鈴……。物部の調子はいいのか?」

「あぁ、彼女も問題ない。むしろ彼女の犬達の方が問題だがな」

「…………」

現れたのは、数時間前に会った五十鈴と言う女だ。

その後ろには俯いたままの……誰だ?



「ん?大我。なんだその困惑した顔は?不細工だぞ?」

「あぁ!?誰が不細工だ誰が!これでもかーちゃんにはカッコいいって言われてんだぞ!?」

「かーちゃんに……かっ。ぷふっ」

「笑うんじゃねぇ!!っつか、だれだよ。その後ろの女」

「……ん?お前本気で言っているのか?」

「……え?」

意外な返しをされて俺は戸惑う。

え?俺が知らないのおかしいの?え?

「あ、あの……。鈴村くん、私の顔。多分見てない」

「うんうん。そうか、なるほどな。救出した時のお前は『あれ』だったもんな。

 なら、改めて紹介してやるか。ほら、前に出ろ」

「ふぇ~!!い、嫌ですよぉ~」

「何を恥ずかしがっているんだ。ほら!」

そう言って五十鈴に押し出された少女は、茶色の綺麗な髪をショートカットにした可愛らしい少女だった。

しかし、その目は怯えた子犬のように小さく、震えていて、下を向いている。

この感じ…………どっかで……。


「まだ、わかってないような顔しているな。お前、女子にモテないだろ?」

「し、失礼だな!てめぇ!」

「はぁ……。この子は物部真希。君が暴力を与えた女だ」

「その言い方やめろ!俺が悪い男みてぇじゃ――――――え?」

俺は五十鈴の顔と、目の前の少女の顔を交互に見る。

え?こいつが……あの物部真希?え?えぇ?


「あ、あのなっげぇ髪の毛は?」

「うざったいので私が全部切った」

「承諾もなしに無理やり……切られました……」

物部が多少諦めた表情をして答えていた。

うわぁ……この女結構ひでぇことしたな。

かーちゃんが言ってた。髪は女の命って、それをうざいからって……。

「………………」

「ん?どうしたジョー。震えて」

「い、いや……なんにもないぞ」

「?……。まぁいいか」

ジョーが見たことないような怯えた表情で震えてるけど、俺にはわからない。




「とにかく、君たち2人を助けたのは私たちだ。あのままだったらどうなっていたか……。まぁ、意識が無くなってでも物部を守ろうとしていたお前の心意気には賞賛するがな」

「はぁ?」

「覚えていないならいい。それより、怪我の調子はどうだ?」

「あ、あぁ……まだ痛むけど」

「なら、ここにいてくれても構わない。その代わり……私たちの仲間にならないか?君の命は極力保障しよう。今回のようにな」

「…………」

五十鈴は座っている俺の目の前に来て、まるで見下すように言った。




「……やだね!」

俺の言葉に、五十鈴の目がピクリと動く。

「ほぉ、断るか」

「当たり前だ。てめぇらの仲間になれば。俺はジョーと喧嘩できねぇ!」

そういって俺は、その場から立ち上がる。

「ジョー、俺の服はどこだ?」

「……そこにかけてある」

俺はジョーに言われた場所を見ると、俺の黒い学ランがあった。今着ているものを脱いで置いてあるシャツを着て、学ランを羽織る。


「お前、本当にいいのか?そんな理由で……」

「あぁ、そんな理由じゃねぇよ。この理由が俺にとっては大きな理由だ」

俺はそういいながらその場でズボンを脱いで自分の制服のズボンに着替える。

「よしっ!」

そういって俺は部屋の扉へと歩みを進める。

「あ、あの!」

「ん?なんだよ」

とても弱弱しい声で、物部に呼ばれたので振り返る。

真正面から見ると、可愛い顔をしている。俯いてばっかじゃなければ良いのに。


「お、覚えてないかもしれないけど……助けてくれてありがとう。あと……きっかけをくれて、ありがとう」

彼女は言葉を言っていくにつれて彼女の顔が俯いていく。

まだ他人に顔を見られるのは苦手なようだ。もったいねえ。

「…………おう。今度はおめぇから喧嘩挑んできな。そんときゃ俺がまた返り討ちにしてやる」

「……っ!はい!」

彼女はもう一回顔を上げて笑顔でそう答えた。



そして俺はそんな彼女に背を向けて、そのまま部屋から出ていった。








「さて、君はどうする?物部真希」

「……私は、ここにお世話になろうと思います」

「そうだな。その方が賢明だろう。あのバカと同じではないな」

「だが、そういうバカ。嫌いじゃねぇんだろ?じゃなけりゃ今すぐ俺に奴を捕縛しろと命令するはずだぞ?お前なら」

「……ふっ、そうだな。何、今日は『この子』と言う戦力を手に入れるために利用したに過ぎない。見逃してやるさ」

「ふぇ~!わ、私戦力なんですかぁ~」

「あぁそうさ。これからみっちり働いてもらうぞ!我が『野良猫の集い』のためにな。今更抜けると言っても遅い!お前の家は鈴村大我と『あの女』のせいで全壊。犬達も私の治療がなければ危ない状況だ。お前はこれに逆らうことが出来ない!」

「うぅ~……」

「お、鬼だ……」

「なんか言ったか?ジョー?」

「……別に」

「とにかく。君にはここで働いてもらう。君の力は我々にとってとても必要なものだ」

「必要…………ですか」

俯きながら静かな声でそういう物部真希。

「ん?どうかしたか?」

「いえ……。私、頑張ります。これも。鈴村くんがくれたきっかけなんですから」

少し微笑んで答える物部真希。

その言葉と笑顔に五十鈴は一つ興味が湧いたことがあった。


「きっかけと言うが、なぜ君は引きこもっていたんだ?」

物部真希はその質問に対してまた俯いてしまう。

五十鈴も流石に聞いてはいけない質問だったかと思い始めた。

ジョーただ一人が「これだから五十鈴は」と言わんばかりに溜息を吐いていた。


「実は、私の両親は私の事はどうでもいいんです。だから。昔っから一人でした。ずっと色んな所に飛んで行って仕事して。私の相手は犬達だけでした。野良だった子たちを拾っては多すぎる生活費で育ててました。友達もいなかった私が犬達と戯れているうちに……CATに目覚めて、学校をやめさせられて私を虐めていた子たちも、私の力に恐れて気味悪がりました。元から、動物としか遊んでなかった私は気味悪がられていたんですが。両親も、CATになった私を恐れて、なってから一度も……帰ってきてません。外に出れば気味悪がられるんですから引きこもっていればいい。幸い文句を言う人もいないし家の中で犬達と戯れていれば私は満足だったんです。必要ともされない。こんな私なんか……」

五十鈴とジョーの2人は、彼女の話を真摯に聞いた。

ジョーは能力を応用して、仕事に活用して今ではむしろ世間では好かれている方である。CATと言えど色々だ。鈴村勇作のように警察官として活躍しているものもいれば怪盗セブンのように悪事を働くことに使う。彼らは気味悪いなんて思われたことはないだろう。

ただし彼女の場合は別だ。

外に出れば動物たちが群がってくる。

彼らがまるで物部真希を女王であるかのように崇める。

どの動物も物部真希と言う少女になつく。その光景を実際に見ていた人達にはやはり気味悪く映っただろう。

(化け物であることを認めて、堂々としてられる奴らの方が異常なのだろうか……)

そう考え始め、俯く五十鈴の肩に、ジョーの手が乗る。

「五十鈴……」

「……わかっている。物部真希」

「は、はい……」

「君の気持ちはわからない。わかった気になることは出来てもな。だが、我々には目的がある。どうか、協力してくれないか?ここには君を気味悪がるような奴は一人もいない」




「……はい。さっき言われた通り、私に帰る場所はありませんし鈴村くんが言ったように、胸を張って。自分の使命って言うものを探してみようと思います!」

俯いていた物部真希は空元気で姿勢だけでもと胸を張る。

「まぁ、張るほど胸はないがな」

「うっ……。これから大きくなるんですよぉ~!!」

「ははは、私が君ぐらいのときは既にDはあったぞ?」



「はぁ。五十鈴の悪い癖が……」

「この子相手してるとぞくぞくするよ。ふひひ」

なぜか五十鈴は物部真希を見ながらニヤニヤと笑っていた。














「……あっ、やっべ。あの機械女の事聞けてねぇじゃん」

外に出てきた俺は、ふと。さっきの言い合いで肝心なことを聞き忘れていたことを思い出す。

(そんなにあの女の情報が知りたいか?ならば我々の仲間になれ鈴村大我)

「……ダメだ。こうなるのがオチだな。んー……どうするか。どうするか。勇作に聞けばわかるか?」

俺は色々あの女の情報を得るための方法を探す。

本当に……何ものなんだ?俺が覚えている限りでも、身体から刃物が飛んできた。

とてもじゃねぇがただの女じゃねぇ。新手のCATだったのか?

「んー…………」

俯きながら考える何かないか。何かないか。何かないか。




「んー…………んっ!?」

その瞬間。

足元が急に軽くなった。

そして目の前の景色が一気に変わった。

事が起きて、一秒後に、はじめて自分が『落ちている』ことに気づく。


「いってぇ!!」

「やーい!引っかかった引っかかった!!」

上から女の声がする……この声は!

「ドッキリ大成功!きっちりカメラに治めましたし、この後テレビ局をジャックして流しましょ♪」

「てめぇ……糞猫ぉ!」

「糞猫ではありません!夢乃は夢乃です!」

「どういうつもりだこらぁ!」

「どういうもこういうも落とし穴ですよ♪お・と・し・あ・な。おとしあな」

「合掌してお辞儀してんじゃねぇよ!そのネタ古いぞ!」

「そんなのはどうでもいいのです♪大我?びっくりしたでしょ~♪」

「びっくりする前にてめぇへの殺意でいっぱいだぞこらぁ。うっ……」

「あらら?お怪我をしているのですか?」

見上げていると、声しか聞こえなかった夢乃がこちらをのぞき込んでいた。


「なんでもねぇよ。くそっ!」

「もしかして物部真希との闘いの怪我がまだ治ってないのですか?」

「うるせぇ!とにかく俺をここから出しやがれ!」

「むむっ、人がせっかく心配をしてあげているというのに大我は横暴です!」

そういいながらやむを得なくロープを下ろしてきた。

これを登れば抜け出せるか。






「ふぅー。おい、糞猫。カメラはどこだ?」

「ん?どこかに隠しました♪それに夢乃は夢乃です。いい加減覚えてください」

「ちっ、どこだつってんだ。またブッ飛ばされてぇのか?」

「貴方が私に勝てるとは思いません♪」

「上等じゃねぇか……今すぐボコボコに!」

「とうっ!」

なんとも拍子抜けな声で

夢乃は俺の腹部の包帯を巻いているところに手刀を放ってきた。


「うっ……!」

俺は予想以上の痛みにその場で膝を付いた。

「ほら。今の大我の傷ではどうあっても私には勝てません。100%です!怪我が治っていないのに落とし穴仕掛けたのは謝りますので」

「……ちっ。そうだ糞猫」

「だから夢乃は夢乃だと――――――」

「刃物を放ってくるCATの女……しらねぇか?」

「……いえ?CATの方とは積極的にかかわっているつもりですが私も全員と面識があるわけではないので、そのような方は存じませんね。それがどうしたのですか?」

「いや……なんでもねぇ」

「そうですか♪私は『刃物を放ってくるCAT』は知りません。お力に慣れなくて残念です。では、今日はおとなしく帰らしていただきます♪」

「あぁ、とっとと消えろ消えろ」




そういいながら背を向けて普通に歩いて去って言った。

「………………」

俺は警戒して辺りを見回す。

また何かを仕掛けられていたらたまんない。

そのときだった。携帯のバイブレーションが震え始める。


「ん?なんだ?」

そこには一通のメール。『可愛い猫ちゃんから』?なんつうメールだ。いたずらか?

そこを開くと一つのURL。俺はそれをまた開いてみる。

するとそこは人気の動画サイトへと飛んだ。タイトルは……『暴れタイガーの悲惨な姿』?

俺がタイトルを読み上げているうちに動画が勝手に再生される。

そこに映っているのは…………考え事をして歩いている…・・……俺だった。




俺が俯きながら歩いていて、突然。落とし穴に落ちる姿。

それを見て笑っている夢乃の姿が動画に映されていた。

「…………っ!!!!あんの糞猫野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!どこに逃げやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」






今日も今日とて、暴れ大我の叫び声が、町中に響き渡る。




前回の八話のエピローグ的な話となりました。

これから別のストーリーが始まりますので、応援お願いします。

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