CAT 第六話
はい。第六話です。
一週間後って言ったのにちょっとだけ遅れてしまいました^^;
どうぞ、お読みください^^
「くそっ……!」
『ジョー!聞こえるか、何があった!?』
「お前の言ってた……《奴ら》と接触した!」
「対象を確認。排除、排除、排除」
男、DJジョーは振り返る。
そこには一人の少女。無表情の少女。彼女が宙からジョーを見下していた。
「くっそ!」
ジョーはヘッドフォンに手をやる。
ヘッドフォンから重低音が響く。少女は少し顔を歪める。
「おぉらぁ!!」
怯んだ相手の隙をついてジョーは彼女を思いっきり殴り飛ばす。
「よし……今のうちっと!」
ジョーはそのまま彼女から逃げるように走り去る。
「五十鈴!こっからの脱出√は!?」
『待て……。そこならB29地区だな。今走っている所から角に左に曲がれ』
「了解!」
「対象を探索。探索。探索……」
「おらおらおらおらおら!!どこだぁ!!」
俺、鈴村大我は大量に襲い掛かってくる犬どもを殴り飛ばしていた。
「がぁ!」
「邪魔だぁ!」
「きゃいん!」
進んでも進んでも犬が襲い掛かって来やがる!
くっそぉ……腹立ってくるぜぇ……!
「よっと!」
流石に犬の大群の相手をするのを疲れた俺は上空へ逃げる。
適当に見つけたビルの上に着地。やっべ!力制限聞かなくて軽く皹入れちまった……。
「まぁ、バレねぇだろ。後は犬どもが諦めてくれるまでここ……で?」
俺は何か嫌な予感がした。
上から殺気を感じるのだ。このビルは辺りで一番高い。なのに……上から殺気。
恐る恐る上を見る。そこには、数匹の雀が羽をはためかせながらこちらを睨んでいた。
「…………マジ?」
俺の声に反応して急降下してくる雀共。
俺は走って奴らの攻撃から逃げる。おいおいっ!あいつらどこまでも追いかけてくんぞ!
俺はビルからビルへと飛び移る。
雀が俺の皮膚を捕らえて切る。頬から微かに血が流れる。
俺はビルから真下に降りるように落下していく。
落下している途中。俺の目の前に数匹の雀。奴らが突っ込んでくる攻撃を全てかわす。
「あぁ?なんだなんだ?うおっ!?」
ビルのガラスを割って雀たちがビル内に入っていく。
これでなんとか撒いたっと!!
地面に着地した俺は辺りを見渡し、犬がいないことを確認して走る。
どこかから犬の声がする。近くにはまだいるな。
曲がり角を曲がる。すると、一匹の犬と鉢合わせになる。
犬は突然雄叫びを上げる。周りの犬の鳴き声がさらに大きくなる!やばい位置を特定された。
「こんの糞がぁ!」
俺はその場にいた犬をぶん殴ってその場から一気に移動する。
くそっ!どこにいっても動物がいやがる。そしてなぜか俺を狙ってきやがる!!
『き……。聞こえるか!た……タイガ!』
走っていると、脳内から声がする。この声は……。
「ジョーか!?てめぇなんで俺の脳内に!」
『これも俺の力だ!いいかよく聞けタイガ!その地区だと……五十鈴。どの辺に脱出√がある?』
『……現在いるのがD36……。
よし、鈴村大我。次に出る角を右に曲がり、まっすぐ進んだ後、二回目の角で左に曲がれ!』
誰だか知らない女の声。
五十鈴?一体こいつはなにもんだ?わかんねぇ……けど!
「ジョーの仲間だってんなら、そこは信用してやる!」
俺は全力で走る。途中鉢合わせる犬には雄叫びを上げさせる前にぶん殴る!
そして俺は五十鈴とか言う女に言われた地点に到着するも……。
「お、おいおい……どういうことだよ……」
俺は一気に絶望した。
そこは行き止まり。そして、目の前には、こちらに敵意をむき出しな、何十羽もの、カラス。奴らの黒い目が俺を睨む。
「くっそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は挑発も兼ねて思いっきり叫んで地面を強く踏みつける。
「……ってあり?」
地面を踏みつけると、クルっと地面がくりぬかれ、俺は足場を失った。
そして俺はそのまま……地面の中へと滑り込むように落ちていった。
「なっ!なんじゃこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「おい、勇作!」
「ちっ、なんだよ……」
「またセブン逃して不機嫌なのかよ~。これからさらに不機嫌にさせるってのに~」
「あぁ?どういうことだ?」
「これ、見ろよ」
俺、鈴村勇作は同僚が見ていたパソコン画面を開いた。
「街の全CATに宣戦布告をした男。《鈴村大我》都内で犬と……鬼ごっこだぁ?
「あぁ、うちの署にも一応連絡は来てるぜ。こいつが逃げた先々で二次災害を起こしてるって苦情がよ……」
「……ちっ」
俺は懐から煙草を取り出して火をつける。
そして掛けていたコートを手に取り、羽織る。
「おっ、お出かけかい?」
「あぁ、あのバカの暴走を止めるのが、親戚であり、CAT対策特別本部鈴村勇作巡査長の仕事だろ?」
「んじゃ、頑張れよぉ~」
同僚は俺の方を見ずに、お気に入りのホットドックを頬張りながら俺に言う。
俺は部屋の扉を開けて部屋を出て、曲がろうとすると……。
「…………。」
「どもどもっ!お久しぶりなのです勇作!」
目の前に、女性警察官の恰好をした。これまた大我と同じくらい顔を合わせたくない女の姿があった。
「ふふふ~♪どうですか!?勇作!このミニスカポリスは?かわいいと思いませんかぁ~♪」
「……第一級お尋ね者のおめぇがなんでここにいるんだ?《スマイリー》」
「ちょっと!夢乃には夢乃と言う高尚で優美な名があるのですよ!!」
「……はぁ、んで?その夢乃様は、なぜ俺の目の前に現れたんだ?」
「貴方に笑顔をお届けに!はい♪これバルーンアートで作った勇作です!」
「……ウサギじゃねぇか」
「はい!セブンを追うために奔走している勇作はまさにウサギで――――――
痛い!痛いですよ勇作!なんで打つのですかぁ!!」
「うっせぇ!誰がウサギだ!30代の親父に言う言葉じゃねぇぞおい!」
「うぅ……勇作には夢乃の冗談と言うものが通じませんね……。大我そっくりです」
「俺はあいつともそっくりじゃねぇよ!」
「あたぁ!もぉ!紳士がそう何度も女性の頭をぽかぽかするものではないですよ!」
「悪かったな。俺は紳士じゃねぇんだ」
「……そんなんだから結婚出来ないのです」
「あぁ?なんか言ったかぁ?」
「いえいえ、勇作さんはきっといいお嫁さんになります!」
「てめぇ……独房に叩きこまれたいかぁ~?」
「いひゃいいひゃいです!ふふみふぁへん~!……ふぅ、ほっぺたが真っ赤っかです」
「んで?俺は行かなきゃなんねぇとこがあるんだが?」
「それはダメです!」
「邪魔しようってのか?」
「はい♪ジャーマンしようとしてます!」
俺は彼女の腰を掴んで地面に向かって頭からたたきつける。
「はっはっは!どうですか勇作!このミニスカポリスはタイスカートで固い形状なので、
このように頭から逆さにされてもめくれないのです!これで大我対策はばっちりです!!」
「そうか」
……パシャ。
真上からとればいいんだけどな。
「なっ!何をやってるのですか!?勇作!
今シャッター音聞こえましたよ!うら若き女子高生に向かって写真をとりましたね。しかもやらしさを感じますぅ!」
「あぁ?てめぇ学校も行ってねえのにJKなのんなよ!この写真は俺の同僚の変態に売りつける!」
「やめてくださぁい~~」
「ま、しばらくそこで大人しくしてろ」
俺はそういって奴を引っこ抜かず外に出ようとする。……が。
「はっはっは!夢乃ちゃんは次のコマには戻ってくるのでぇっす!」
「……。どうしても行かせたくねぇみてぇだな」
「はい♪今大我が楽しく喧嘩をしているのです。貴方が行くのは今じゃないデス。さぁさぁ居間に行ってくつろぎましょう」
笑ってはいるが、本気で俺を通したくないようだ。
強行突破しても、この署内で本気で戦うのはこちらが不利……か。
「はぁ、仕方ねぇな。……ただ、てめぇの知ってることを聞かせてもらおうか」
「はい?夢乃は何も知りませんよ?夢乃は最高にして最強のエンターテイナーなだけですから♪」
こっちが真剣な形相で聞いてみたのだが、相手には笑顔で軽い感じに言われた。完全にはぐらかされたな。
ここまでして《スマイリー》が俺に介入させない理由。
大我の奴の喧嘩。連続している少女消失事件。必ず裏に何かあるはずだ。こいつは知ってるのか?
「さぁ、さぁ、行きましょう勇作さん!私、お気に入りの牛乳があるんですよ!」
「そこは紅茶とかじゃねぇのかよ……」
「はい、その場で搾ります!」
「…………」
「ほらぁ!大我もですけど勇作もなぜ突っ込まないのですか!?」
俺はスマイリーの五月蠅い言葉に相槌を打ちながら、彼女に誘導されていった。
「いちちちち……」
「大丈夫か?タイガ?」
俺が尻餅付いて閉じていた目を開く。
そこには傷だらけになったジョーの姿があった。
「あっ、あぁ……ここは?」
「スケープポイント。我ら秘密機関通称《野良猫の集い》の隠れ家だ」
えーっと……状況がつかめない。
俺は確か……逃げた先が行き止まりで、そしたら……落とし穴に落ちた?
「ジョー。そいつは起きたのか?」
「あぁ、起きたぞ五十鈴」
俺は女の声がした方を見る。
白衣を着た背の高い女だ。髪が白くて、どこか弱弱しさを感じる。
しかし、短めのタイスカートに黒のストッキングに細い脚が包まれている。
その脚が交差するのを見て、非常に色気を感じる。
「ジョー。おめぇ、あいつに下心あるだろ?」
「HAHAHA☆それがBOYさ!」
俺とジョーは二人で握手をした。
「……何をくだらん事をしている。
鈴村大我。身体に異変はないか?」
「いや、軽いかすり傷ぐらいだ」
俺は五十鈴とかいう女に聞かれたので答える。
「ってか……ジョーなんでそんな傷だらけなんだ?」
「気にすんな」
隣にいたジョーが本当にボロボロだ。
俺があいつと別れてからの数十分。ジョーに一体何があったのだろう。
「それにしても危なかったな鈴村大我。
君は私の保護を受けずに、売られた喧嘩は買うだのふざけたことをほざいていたな……!」
髪が少し逆立っていくように見える。ちょ、ちょっと怒ってるのか?
「相手がどんな奴かもわからないのに闇雲に突っ込むな。さっきので充分理解しただろう?」
そういわれて思い返してみる。
確かに、相手がどこにいるのかさえもわからず、犬たちに追い回されていた。
もし、ジョーたちに助けられなかったら俺はいずれ体力が尽き、あの犬共にやられていただろう。
「相手の心情次第で君は命を落としていた可能性もある。CAT同士が争うと言うことはそれも意味するのだぞ。
貴様の迂闊な行動のせいで、危うく貴重なCATが一人無駄死にするところだった。
「それって俺のことか?」
「あぁ、そうだ。せっかく15人目のCAT。
それも単純に戦闘として使えるタイプのCATが生まれたことは喜ばしい」
「……なんのことだかさっぱりだが、一つ聞きてえんだけど?」
「あぁ?なんだ?」
「結局、その俺に攻撃をしてきた奴ってのはわかるのか?」
「……そうだった。先にそちらをしなければならなかったな。
ジョー。例のファイルを渡してやってくれ」
「あぁ」
そういって俺はジョーに何枚かにまとめた資料を渡される。
そこには顔写真と名前。そして知る限りの詳細が乗っていた。
「……《物部真希》。彼女が君を襲った犯人だ」
「あぁ?この女が?」
写真から見るに、可愛らしい顔立ちだが、なんというか。覇気を感じない。
良く言えばおっとりしている顔なのだが……。こんな顔の女が俺を襲った?
「あぁ、その写真は二年前の彼女が中学のときだぞ?」
「はぁ?なんでそんな頃の写真しかねぇんだよ」
「……物部真希。彼女は二年前に、CATに目覚めたんだ。
それ以降、学校に行っていないどころか家から一歩も出ていない」
一歩も出てない?なのにどうやって俺を……。
「彼女は動物と会話し、使役する能力を持っている。
そして何より彼女は臆病な性格だったようだ。
CATに目覚める前も友達はいなく、ずっと動物と一緒だったそうだ。そのせいでCATに目覚めたのだろうな」
「だから、俺が狙われる理由がわかんねぇんだけど……」
「おそらく……私の推察だが、臆病な彼女にとって君は脅威だったのだろう。
《CAT全員ブッ飛ばして最強になる》君はそういっただろう?彼女も狙われると思ったのだろう。
狙われる前に狙っとけ。自棄になった臆病者ほど怖いモノはないと言うが……その典型だな」
なるほど……。
「よしっ!よくわかんねぇ!!」
「おいおいっ!」
ジョーに思いっきり突っ込まれた。が、気にしない。
「なんだかよくわかんねぇが。やっぱ挑まれた喧嘩は買わなきゃなんねぇ。
それと!喧嘩する相手とは、真正面から堂々と喧嘩しねぇとな!!」
「……はぁ、そうか。そのファイルの中に彼女の住所も乗っている。
そこを目指していけば、彼女の隠れ家までたどり着くことが出来るだろう」
「おう!サンキューな!」
俺はそのファイルを持ってその部屋から走り去った。
「……よかったのか?行かせて?」
「あぁ、ジョー。監視を頼む。《奴ら》が邪魔しないとも限らない」
「……了解」
「ん?どしたの?鈴村大我が消えた?うぅ……。
ん、大丈夫だよって?ありがとう。太郎……。ぜ、絶対に倒さなきゃ。鈴村大我!」
少女。物部真希は枕をぎゅっと抱きしめ、愛犬の太郎と寄り添いながら、迫りくる鈴村大我と闘う決心をしていた。
お楽しみ、ありがとうございます♪
第七話も一週間を基準にして更新したいと思います^^
まぁ、遅れて二週間、三週間後になるかもですけれど(;^ω^)
それでも楽しみに待っててくれれば幸いです。
ではでは