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CAT 第15話

CAT誠くんの能力が目覚め始めの話です。ぜひお楽しみください。

視界がおかしい。


僕が感じたのはその一点のみだった。


僕は今、目の前に立っている二葉を襲う少女を睨んでいるはずだ。


なのに、脳内では彼女の背中が見える。僕の立っている位置からは絶対に見えない光景。


それが脳の片隅に置かれている。他にも、少女の横。


ビルの隙間から見る彼女。僕の後ろにいる二葉の姿。




そう――――この公園の全てが僕には見えている。






「ま、誠。どうしたのですか?その目」


後ろから二葉の声。


「え?目?」


僕は改めて意識を僕に向けてみる。すごい、自分で自分が見える!




って……あれ?


「なんで、僕の目がこんな色に?」


「誠?鏡がないのに自分の目が見えるのですか?」


僕の問いに二葉も問いで返す。


僕も二葉も困惑しているようだ。僕の目が琥珀色に輝いていることに――。




「ねぇ?もう攻めていいの?いいのぉ?」


目の前の少女が待ちくたびれたように駄々をこねる。


なんで……律儀に待ってるんだろ。




「うん。いいよ、君はもう僕と二葉には勝てない」


「はぁ?言ってくれるねぇ~ボーイフレンドくん♪」


目の前の少女は刃物を展開させてこちらに飛ばしてくる。


「二葉。僕を庇うことは考えないで彼女を捕らえることに集中して」


「……わかりました」


二葉は上空高く飛び出す。


僕は飛んでくる刃物を何とか避ける。


「うっそぉ、なんでぇ!?」


「僕に攻撃を当てるのはあきらめた方がいいよ」


「これは難しいかなぁー。なんつって!!」


僕の背後から彼女の放ったナイフが飛んでくる。


僕はすかさずその刃をかわす。


「ねぇ……完全に死角から放ったじゃん。なんで避けれるの?」




「僕の能力に疑問を持つ前に、自分の心配をしたらどうだい?」


「はぁ?自分の心配って……っ!?」




「いまだよ!二葉!」


「イエス。誠」


少女の背後に忍び寄る二葉。


二葉の体内から出てくる鉄の縄が放たれ、それが少女の四肢に絡みつく。


「これで、チェックメイトだよ。さあ、君の正体を聞こうか」


僕は落ちていた少女のナイフを広い相手に突きつける。




「これで完璧ですね。誠」


「うん。ありがと二葉」


「それより、その目と……。なぜこの少女の攻撃を避けることが出来たのですか?」


「僕にもよくわかっていないんだけど……なんか、どこからでも誰かを見れるようになって」




「おーい!誠くーん!!」


その時、公園の外から声がした。


慌ててきたその人は、暗い公園を照らすために懐中電灯を持っていた。


その光が僕の琥珀色の目を照らす。


「勇作さん!?なぜここに?」


「俺は……何か物音が聞こえるから何かと思ってな。


 公園の方に入るとなぜか誠くんが危ないと誰かからの声がして……。


 君こそ、こんな公園で何をしているんだ。それにその少女と……っ!?なんだこれは!」


勇作さんは僕らが捕らえた少女を見て驚いた。


そして勇作さんはすぐに僕の方を疑うような目で睨みつけた。


「あっ!ち、違うんです勇作さん!」


「まさか……大事な話とは警察官である俺に隠蔽工作しろ。とか、そういうことではないだろうなぁ?」


「ち、違いますよ!ぼ、ぼくたちはこの女の子に襲われて!そして二人でなんとか捕まえて


 それで、えっと。この縄は彼女の力で、えーっと!!」


「いろいろ言われすぎて意味がわからないぞ。


 それに君のその目……なぜ琥珀色に輝いているんだ?」


「な、なぜでしょう。なんか色んな所が見えるようになったんですが」


「まさか……《CAT》に目覚めてしまったのか?」




勇作さんのその言葉と同時に眩暈が起こる。


なんか……急に疲れが……ち、力が抜ける……。




「ま、誠!誠!!」


「誠くん!どうした誠くん!」


僕はその場で倒れかかってしまった。








                        ☆






「チャーンス♪そこのお兄さんには悪いけど、ここで全員―――――」


「お前、今何しようとした……?」


「……あれ?」




二葉に捕まっていた少女は誠が倒れたのを見た直後にナイフを展開させようとした。


しかし、それはあえなく失敗する。なぜなら彼女の目の前にいた青年は。


対CAT殺しとも呼べるほどの《捕縛能力者》なのだから。


少女の首に特別性の錠がかけられた。これは相手に抵抗を禁止するものである。


「あ、ありがとうございます。え……えと、勇作さん?」


「なんでそこ疑問形なんだよ……」


「いえ、誠がそう話されていたので、勇作さん。で正しいのですね?「No8」ではないですね?」


「はぁ?No8?なんの話だ」


「いえ、私にもよくわかっておりません」


「なんじゃそりゃ」


なんとも噛み合っていない二人の会話。






「はいはーい。四名様。ご案内。ジョー、お願い」


「あぁ!出力最大!ちょっとの間眠ってもらうぜ!!全員な!」




「っ!?この声……DJジョーか!」


勇作はそう怒鳴る。


その直後、公園中に響き渡る重低音。


それを耳で聞き続けていた勇作たち公園にいた四人はその場で気絶してしまった。




「五十鈴。これからこの四人を回収する」


「あぁ、これほどまでに奇跡が起こっていいのか。


 私の手駒として必要だと思っていた者たちがここまで揃うなんてな……」




通信から聞こえる声を聞きながら、DJジョーは四人を抱える。


彼は少女が抵抗出来ないようになり、なおかつ勇作がここにたどり着くのを待っていたのだ。


自分が少年を助けるのは、勇作と巡り合った際に一悶着あるから避けた。


彼自身、騒音規制法やら、器物破損やら、詳しくはないが色々警察に目を付けられている存在である。




「さて、まさかこんな所で再び再開するとはな。《ツヴァイ》……」


DJジョーは二葉の顔を見てそんな言葉を漏らす。


女の子らしい服を着て、人間のように勇作と話しているのが少し違和感だった。


彼を襲った時の二葉もといツヴァイは、機械のように相手を捕らえるのが仕事のドールだった。


「そしてこっちが……《ドライ》か。いい研究材料になりそうだな。五十鈴が喜ぶ」




そう呟きながらDJジョーは夜の街に消えていった。













「連日色んなニュース流れとるなぁ」


「そ、そうですね……」




アパートの一室。


そこでそうめんを啜りながら、テレビに映ったニュースに対してコメントしている男。難波薫。


その言葉にいい言葉が見つからずに相槌を打つだけの水野碧。


「それも……なんかCATの匂いがするなぁ」


ニュースの話題はこの街の某日に、


犬が街中を駆け回り、その犬から逃げまわっている


某日から数日前にCAT達に宣戦布告した鈴村大我についてだった。






他にも、怪盗セブン。またもお宝を盗み、どこかに放置する。とニュースがあったり


夢乃。バルーンショーに失敗。巨大風船の破裂の爆風で交通規制。などなど




「せやけど……肝心なんがない」


「肝心なもの?」


「せや、まあ碧ちゃんを捕らえようとしている奴らはニュースになるような派手なんは嫌うんかもな」


「…………」


少女、水野碧は、自分がチンピラたちに襲われた時のことを思い出した。


彼らは自分がCATであることを知ってて襲い掛かってきた。そしてそれは、誰かに雇われてやったこと――。




「とにかく、ここに住んでたらなんとか大丈夫やとは……思いたいけどなぁ」


そうめんを全て啜り終えた難波薫が意味深なことを言ってその細めで玄関の扉を見つめる。


その後、インターホンがなる。碧は思わず身体を震わせてしまった。ビビったのだ。


「はいはーい。今出ますよー」


薫はなんともない笑顔で扉を開けた。




そこにいたのは黒いスーツを着た小さな少年だった。


「こんばんわ!難波薫さんですか?」


「ん?なんやガキんちょ、わいになんか用か?」


「…………お兄さん。隙がないんだね」


「なんのことや?」


「だって、僕と話している時なのに、手からお箸を手放さないんだもん」


少年はにっこり笑顔で答えた。


「……自分なにもんや?子どもやからって甘い目ではおられんで」


「いやぁ。え~っとね?《水野碧》を回収しにきたんだよ♪」


「っ!!!」


その言葉の直後、少年の後ろにガタイの大きな男が四人。


薫は持っていた箸を思いっきり突きつけた。


彼の能力で強化された箸はそのまま少年もろともアパートの外にふきとばす。


「ちょっとー!難波さん!あんまり騒がれると大家として怒るわよ!」


一階の部屋から大家さんの怒鳴り声がする。


怒鳴ってはいるが怒っているわけではない。薫の喧嘩はしょっちゅうのことで


大家本人も薫に人として好感を持っているからである。






「あぁーごめんごめん大家さん。ちょっと浪花のケンカやさかい。見逃して」


「もぉー甘いと思って……アパートは壊さないでね」


「へいへーい」




そういって薫はアパートの二階から飛び降りて吹き飛ばして五人の元へ行く。


「ひ、酷いなぁー。子どもの僕まで攻撃するなんて」


「うっさいわ。自分ら始末して、なんで碧ちゃんを狙うんかと、親玉を引きずりだしたるで」


「ふぅーん。なら、目的は一個達成されたよ?」


「あぁ?どういうことや」


「だって……親玉は僕だもーん!ははははははははははははははは!!!!」


「ほぉ、おもろいわ。おもろいガキんちょやで。なぁーははははははは!!!」




「はははははははは!」


「はははははははは!」


「「ははははははははははは!」」






                      「「殺す!!」」




子どもが四人の男を連れて薫に襲い掛かる。


薫は箸を持ち出し、彼らの攻撃を全て完璧にいなす。


「五人相手でも楽勝やで!ガキんちょ!」


「五人?なんの話?」


「はぁ?―――――っ!?な、なんやと……!」




薫の背中に強烈な痛みカッターナイフが突き刺さっていた。


薫はナイフの男を箸でつまみ上げてコンクリートの壁に投げつける。男はぐったり倒れた。


「なんで増えてんの?こんな短時間で」


「ん?五人だと思っていたお兄さんが悪いね♪ほんとは六人……いや、「もっと」でしたぁ!」


少年の後ろにはさらに人が増えていた。


ガタイのいい男だけじゃない。少年から細めの男性。はたまた女性もいる。


全員が真っ黒なスーツを着こなして同じ服装をしている。




「そろそろ子どもの恰好も飽きた。


 何かいい感じのは……お前。お前だ。こい」


少年は同じ黒服の中で、筋肉質の男性を選んで自分の方に招いた。


すると二人は手のひらを当て始め、子どものほうが真っ黒な液体となって消えた。


「っ!?」


「いやぁーやっぱりこういう年頃の恰好が一番落ち着くわ。


 子どもは子どもでいいが、あれじゃちと疲れちまうし……おめぇ相手だとちと不安だしな」


にぃっと悪そうな笑みを浮かべる男。




「自分……CATか」


「ご名答!その通りだぜ、難波薫!No9!!てめぇをぶっ殺して!


 その部屋でビクビク怯えきってる碧ちゃんを拉致っちゃうのが俺の計画ってわけだぁ」


「おもろい。おもろいやんけ自分。わいに勝てるっちゅうんかい?」




薫の細目がそっと開いて男を睨みつける。


「おぉーこわっ。だが、そうこねぇとつまんねぇよなぁ!うぉい!」













「ふぇ~。ボスが見つからないよ~。この辺なのに~」


少女。物部真希は、泣きながらボスを探していた。


五十鈴にボスを探せと言われて数日だが、なんと彼女は見つけるまで戻ってくるなと言い切ったのである。


現在もまた、彼女に『今日はもういい』と言われるのを待って探し続けてもう15時間前である。


「わん!わんわん!」


「ありがとう太郎……励ましてくれるんだね」


「わん!」


「うん!私頑張る!五十鈴さんのために頑張るぞー!」






「五十鈴?お前……五十鈴の使いの者か?」


「ふぇ?」


「主、名はなんという」


「え、えっと……も、物部真希っていいます」


真希は、声だけがする何者かに警戒しながら会話をする。


「先ほど、犬と話しておったが……お主CATか?」


「は、はい!あ、あの!ぼ、ボスさんですかぁ?」


「ボス……ほぉ五十鈴はそういっておったのか」


「あの!す、姿を見せてください!」


「姿ならずっと見せておるんじゃが……」


「ふぇ?」


「じゃからここじゃよ。ここ!」




真希は辺りを見渡す。


《ボス》と目が合う。それがボスなのかは定かではないが、不自然なほど目があったときに笑みを


浮かべたそれは、真希の目には間違いなくボスだと確信した。


「ふぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」














「あぁ?今の声は真希かぁ?」


その日の最後の時間。11時50分。


人々が今日という一日を終えようとしたとき。


一人の少女の叫び声が町中に響き渡った。



今回の話を読んでいただきありがとうございました。

次回もぜひ読んでいただければありがたいです♪

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