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CAT 第14話

「どう?二葉ちゃん」


「……どう……といいますと?」


「いや、何か思い出したり。なんかこぉーない?」




 そういうと彼女は首を横にかしげる。うん、何も思い出せないみたいだ。


僕、田中誠は彼女がいったい何者なのかを探っている。体内には機械が埋め込まれている。


新たなCATの一人だろうか?しかし、身体を機械に変えるCATの訓練方法なんて


出版されている本に書いてはいないし、何をどう努力すればこうなるのかわからない。


僕が知っているCATは大我、勇作さん、怪盗セブン、夢乃の4人だけ。


この街のことは対外知っているつもりだけど考えてみたらそうでもないみたいだ。


 とにかく、勇作さんと落ち合わないといけない。


彼なら何かわかるだろうし、わからなかったとしても、調査することが出来るはず。






「……発見♪お姉ちゃん!」


「っ!?」


どこかから甲高い声が聞こえる。


僕はその声のほうを見る。飛んできているのは回転している……刃――――。


「……大丈夫ですか?誠」




一瞬。何が起きたんだ?


僕は今、二葉に押し倒されている形だ。


喜ばしい状況のはずだけど、僕の思考はそこまで落ち着かなかった。


今……二葉に助けられなかったら……僕は――――!


「ちぇー。はずしたかぁ~」


僕らは公園の中心にいる。


周りに誰もいない。街灯も少なく、暗い公園だ。


姿を現さないその声は、少女のかわいらしさを含んでいる。


「お姉ちゃん。あたしに内緒でボーイフレンドとか酷いなぁー。つぶしたくなるじゃん!!」


木の影からまた刃が飛んでくる。


「誠!しゃがんでてください!」


僕を地面に押し倒し、自分の腕で飛んできた刃を受け止める。


「二葉ちゃん!」


彼女の腕に二本の刃が刺さるが、彼女はそれを引っこ抜いた。


破れた服からは赤い液体がかすかに流れている。






「あなた……何者ですか!」


二葉ちゃんが目の前の小さな少女に叫ぶ。


少女はそんなことを言われるとははなはだ思っていなかったようで驚いた表情をしていた。


「えっ?ちょっとお姉ちゃん。冗談きついなぁー。あたしだよ?あ・た・し♪」


「だから、誰だというのですか?」


「……もしかして、マジで記憶が消えちゃってたりとかしちゃってるのかにゃ?」


「…………」


目の前の少女の言葉に対して二葉ちゃんは黙り込むしかなかった。




「……ハハハ。これは面白いね!お姉ちゃん記憶飛んじゃったんだぁ!


 どおりでマスターの所にも戻らずにこんな男をボーイフレンドにしてるんだぁ。


 じゃあなに? 自分が何者かもわからないで、その力を使っているのぉ?」


「っ!?き、君!二葉ちゃんの力がなんなのか知ってるのかい!?」


僕は思わず前のめりになって彼女に聞いてしまう。


今僕が一番欲しい情報だからだ。


けれど、その直後。僕の目の前を二葉の腕が現れ、それにはじかれた


目の前の少女の刃が、僕の頬を軽く切る。手で頬に触れると、手が真っ赤になっていた。


「うわぁっ!」


「ちっ、お姉ちゃんのボーイフレンド殺したら、お姉ちゃんを回収しやすいと思ったのに」


「回収……?」


「そう♪マスターに言われて、お姉ちゃんを回収しにきたのよ。ツヴァイお姉ちゃん♪♪」




刃を身体から取り出し、僕たちに放ってくる少女。


「誠!しっかりしてください」


「あっ……。う、うん」


僕は二葉の言葉で冷静さを取り戻す。


自分の血がここまではっきりと映し出されたのが初めてで少々慌ててしまった。




二葉は身体から鉄縄を出現させて少女が放った刃を全て防いでいく。


「お姉ちゃん!守ってばっかじゃダメだよ!


「っ!?誠!」


二葉は突然僕の方に抱き付いてくる。


僕の背中の方から刃が飛んできていた。二葉に助けられなかったらまた斬られるところだった。




「そこのお兄ちゃんはCATでもなんでもないただの少年なんだ♪


 お姉ちゃんにとっては足手まといだね。いっそ殺しちゃえば?」


「っ!?あなた……!!」


二葉は鉄縄を少女に向けて放つ。


「ハハハ、すっごーい。記憶失う前のお姉ちゃんはこんなに冷静さを欠くようなことはしなかったよ」


放たれる鉄縄から身をかわす少女。彼女は避けながら刃を何本か放つ。




二葉は放たれた刃を己の身体で受け止める。


多少血が出ているが、僕よりも丈夫な身体をしている二葉だからこそできる技だろう。


僕は腰が抜けて動けない。怯えているんだ。目の前の少女に対して、脚が……動かない。




「……えっ?」


その時だった。視界にはこちらに向かってくる刃二つ。


「っ!?誠ー!!」


二葉が柄にも合わず大声で僕の名前を呼ぶ。


目の前の刃はどんどん僕に近づいてきて大きく見えてくる。


二葉が腕から一本鉄縄を出すも、刃の片方に掠っただけで止めることはできない。




「……あっ、あっ」


瞬間。僕の身体には激痛が走った。


腹部と左胸に、刃が突き刺さったのだ。


僕はそのまま倒れる。背中が地面に打って痛い。




意識が朦朧とする。


「誠!誠!!」


二葉ちゃんが叫ぶ声が聞こえるけど、水の中で聞いてみるみたいに揺れている。


視界がどんどん暗く染まって、僕の視界は真っ黒になった。






「ハハハ! お姉ちゃん!お姉ちゃんのボーイフレンド!死んじゃったぁー!!」


「っ!?誠!誠!!誠ー!!!」


「呼んでも無駄だよ!お姉ちゃん。早くあたしと一緒にマスターのとこに帰ろう?」




そして少女は再び刃をツヴァイに向かって放つ。


ツヴァイはその刃を全てはじいて、隙を見て少女を捕らえようとするも、少女は身をかわす。


激しい攻防戦の中、ツヴァイの目には、うっすらと涙を浮かべていた。
















ここは……どこだろう?


建物の天井が見える。じゃあ僕は空にいるのかな?


あ、あれかな?死んだ人が天国にいくために今……成仏している最中なのかな?


そのわりには、空に昇らないなぁー。ここで止まっている。


あたりを見てみる。ここは……僕の住んでた街だ。上からでもわかる。


あの電波塔。大我くんがあそこでCATになったことを宣言して、この街を騒がしたな。


あのとき、ちょっとだけCATになった大我くんを羨ましく思ってたっけ。




あれ?あそこにいるのは……大我くん?走っている。夜にどうしてだろう?


あっ、夢乃だ。なるほど、大我くんは夢乃を追いかけているんだ。倒そうとしているのかな?


あっ、落とし穴に落とされて、夢乃が逃げた。




他はぁ~あそこに勇作さんがいる。スーパーの買い物?結構多めだな。


一人暮らしだろうに……あっ、僕が来るから何かご馳走してくれるのかも知れない。いい人だなぁ。






あそこは、DJジョーだ。相変わらず人気だな。


周りは人だらけだ。僕はああいう五月蠅いのはあまり得意じゃないけど、楽しそうだなぁ……。


あれ?急に集まっている人に謝りながらどこかに走って行っちゃった。どうしちゃったんだろう?




ん?空に何か飛んでいる……あれは怪盗セブン!


勇作さんが動いていないってことは、まだ何も悪いことしてないのかな?






ってあれ?どうして僕こんなに見えているんだろう?


それに何かを忘れている気がする。


(……そうだ。二葉ちゃんだ!)


僕は二葉ちゃんを探す。いた!あそこだ!!


ひとけのない公園で、今も刃を放っている少女と闘っていた。




(あそこを……もっと近くで見たい!)


その直後だった。急に視界がズームアップする。


映った光景は二人が闘っている公園。


刃を放っている少女の攻撃をかろうじて防いでいる二葉ちゃん。


全ての攻撃が防がれているのに少女は余裕の笑みを浮かべている。




ん?森の木陰の方からなにか……二葉ちゃんの後ろに向かって


「後ろだ!危ない!二葉ちゃん!!」


「っ!?」




突然声が出た。自分の声が。


その声に反応して二葉ちゃんは身を翻す。


刃が通過し、少女の体内に戻る。


「あっれー?生きてたんだぁ。ボーイフレンドくーん?」


僕は目を開き、立ち上がる。


「二葉ちゃん!左から一枚、右からも三枚、来るよ!」


「わ、わかりました」


僕の言葉を信じて刃を避ける二葉ちゃん。




「ん?どうしてあたしの不意打ち攻撃が全部見破られているのかなぁ?」




「誠……これは一体どういう?」


「わからない。けど……今ここでこの子を捕まえれば。


 二葉ちゃんの無くなった記憶についての情報を得れるかも知れない!」


僕は血が出てた腹部を抑えながら叫ぶ。


目の前の狂気じみた少女を睨みながら。




「……ふーん。君、文字通り目の色変わってね♪琥珀色の綺麗な目してる♪


 その目、マスターに献上したら……喜ぶかなぁ!?」




目の前の少女は大量の刃を身体から放ってくる。


ロボットアニメで見たことのあるミサイルの一斉射撃みたいだ。


「誠!」


「僕のことは守らなくていい!彼女を捕らえることだけ考えて!あと……!」


僕は相手に聞こえない小さな声で二葉ちゃんにだけ伝えた。




「本当に、守らなくていいのですね?」


「うん。なんか、できる気がするんだ!!」


僕の言葉を聞いて、二葉は少女の方に走っていく。


刃が僕に飛んでくる。怖い。さっき刺さった事実が頭をよぎる。けれど―――――――。




「うっそ。ボーイフレンドくん、あたしの刃全部よけちゃった……!?」




「高校で黒木場先生が『自分を俯瞰しろ』って言ってたけど、今なら……それがわかる気がするよ」




僕は目の前の少女を睨みつける。


その琥珀色に輝いた瞳で――――――。
















「んっ♪またこの街に猫が鳴いたかにゃ?にゃーお♪」


街で一番高い電波塔。


そこで少女、夢乃は涼しい風に髪を揺らめかせながら、静かに猫の声真似をした。



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