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CAT 第13話

「てめぇ……ぶっ殺す!」

鈴村大我は己の拳を目の前の黒服に放つ。

「ほぉー、これは当たったら痛そうですねぇ。しかし……」

「っ!?」

腹部に衝撃。

黒服が大我の攻撃を避け、膝蹴りを大我の腹部に放つ。

「動きが多少単調すぎやしませんか?」

腰を軸に回し蹴りを放つ黒服。その蹴りを腕で止めると、黒服はそのままバックステップを取って倒れている女性の元へ行く。

「ただ力が強いだけではありませんか。No2がご執心のようなのでどんな男かと思えば……。我々の脅威になるとは考え難い」

「あぁ?」

「だってそうでしょう?CAT覚醒前の事は私もそれなりに調べたんでーすよ?貴方のことをぉ。いやはやしかし、ただの暴力バカ、喧嘩バカ、正直。貴方に負けたというNo11物部真希も大したことなかったのでしょう」

「てめぇ……言わせておけば!!」

大我はさらに走る。

黒服の男は女の首を掴んでいたのを大我に向けて投げつける。

「くっ!」

大我はそれを丁寧にキャッチして、後退して距離を取る。

「あら?意外と紳士なんですね?」

「あぁ、母ちゃんには女にゃ優しくしろって言われてる」

「そぉー……ですか。つまらないですねぇ」

「……ちっ」

大我は舌打ちをしながら足元にあった石ころを拾い黒服の男に目掛けて投げつける。それを拍子抜けた声を出しながら余裕そうに避ける黒服。

「っ!?」

「おぉぉぉらっ!!」

避けた瞬間だった。大我の拳が黒服の目の前まで接近していた。

黒服は慌ててそれをかわす。しかし、直後に足元が軽くなる。足元を大我によって払われたのだ。

「これは!さっきの、お返しだっ!!」

直後、腹部に走る衝撃。

宙に浮いていた黒服の身体を掴み、奴の腹部めがけて膝蹴りを放つ。

「がはっ!」

「どうだ!その減らず口も叩けなくしてやる」

掴んでいた腕をさらに強く握りしめ、何回も振り回した後、黒服を壁に投げつける。

「がはっ……はぁっ……。はぁっ……!!」

口から血が吐き出される。

額から汗が吹き出されている黒服の表情には余裕がなかった。

「な、なるほど……一撃必殺。ちょっと攻撃を当てられただけでこの威力……ですか……。並の人間だったら命を落としかねないですよ」

「並の人間だったら……ってことはやっぱてめぇ」

座り込んでいた黒服がよろよろと立ち上がる。

「えぇ、貴方のご想像通りでしょう」

「だったらなおさらだ!」

大我はニカっと笑みを浮かべてダッシュ。

黒服の胸部に拳を放つ。

「がはっ!」

「女に手出した上に!俺の求めてる相手となっちゃあ、倒すしかねぇよなぁ!!!」

胸部に放った後、腹部、脇腹、肩、顔面。重い一発を放ち続けていく。黒服の男は特に避けることも出来ずその全てを受けている。

「これで……終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!」

大我は顎に拳を放ち、黒服の男を上空にブッ飛ばす。そしてすぐさま左右にある壁を蹴り、宙に浮いている黒服をたたきつける。黒服は、地面に思いっきり叩き落とされ、その場で動くことなく倒れてしまった。

「こんだけやりゃあさすがに……」

「い、いやぁ……お強い。本当にお強いですねぇ、私の負けですね。こ、これは……。No2。『夢乃』が目を見張るのも、これでわかりました。では……私はこれで」

「……なっ!?」

目の前で倒れていた男は、消し炭のようになって消えていった。彼が被っていた帽子と衣服だけが、不気味なほどにその場に静止している。大我はしばしば呆然とする。これは、勝てたのだろうか……と。

「そうだ!あの女は!?…………あれ?」

自分が介抱したあの黒服の男によって気絶していた女性の姿がない。




「さて、君は少し邪魔だね。あいつが彼女を運び出す前にまた見つかったら溜まったものじゃない。眠ってもらうね♪」

「っ!?」

突然口元に覆われた布。息を吸う。その直後に視界が揺れる。

(な、なんだ……これ……!ちきしょ……!)

そして身体がふらつきながら、鈴村大我は地面に倒れた。




「ふぅー。危ない危ない。もう少しで僕もやられる所だったよぉ~♪大我くんが立ち尽くしていたおかげだね。彼が警戒心の強い鈴村勇作やセブンだったらこうはならなかった」

そう言い放ち、たった今大我の気を失わせた少年は、地面で静止している黒服がつけていた帽子を取って、被った。

「さっ♪よい子はおうちに帰ろ♪♪」

小学生ぐらいの小さな少年は、不敵な笑みを浮かべながらその場を去った。









「はーい。あら、誠くんじゃない。どないしたの?」

「どうも、大我のお母さん。実は……勇作さんの住所か電話番号をお聞きしたくて」

鈴村大我宅。僕はここに『ツヴァイ』こと、二葉と来ていた。大我のお母さんに何か言われると面倒だったので二葉には少し遠くの公園でじっとしてるように言った。

目的は一つ、大我の叔父にしてCATの一人、鈴村勇作さんと連絡を取るためだ。二葉は普通の人間ではない。このような奇怪な事実に僕は直面してしまっている。この問題で一番力になってくれる人物が僕が知る限りは自身も奇怪な存在であり、警官として、この街の情勢に詳しいはずの鈴村勇作その人以外いなかったのである。

「勇作さんの?これまたどしうて……?」

「ちょっと個人的にご相談したいことがありまして……。大我に聞いたら知らないと言われてしまって」

「あらそう。ちょい待っててな今紙に書いて渡したるさかい」

そういって大我のお母さんは部屋のほうに戻っていく。少し待っていると、彼女は一枚の髪を持って戻ってくる。

「はい。これが勇作さんの電話番号と住所。一応警察官の住所やから警戒して持っときや?わるーい人が勇作さんの住所知ったら報復するかもやからな」

大我のお母さんは大我にそっくりなニカっとした笑みを浮かべながら言う。

こうは言っても、勇作さんが誰かに報復されることなんてありえないと信じ込んでいるのだろう。血は繋がっていなくても家族。そこに置いて彼女は勇作さんを信用している。

「はい。ありがとうございました。大我にもよろしく言っておいてください」

「わかった。今あのアホは最強のCATなるんやー!言うて街闊歩しまくってるわ。誠くんこそ、もし会ったら気兼ねなく声かけたってな?あの子ああ見えて誠君のこと大好きやから」

「はい、ではこれで」

僕は一礼をしてその場を去る。





「二葉?」

「……誠?」

「ごめん。待たせたね」

公園。

無表情でブランコに乗っていた二葉を見つける。子供たちが遊んでる場でそこでじっとしている彼女はシュールだった。僕が声をかけるとすぐ反応してこちらに歩み寄ってくる。

「勇作さんの電話番号を手に入れた。これから電話するよ」

「その……勇作とは誰ですか?」

「ん?警察官で、僕の友人の叔父なんだ。あのCATの一人なんだよ」

「警察官……CAT……。No8ですか?」

「ん? No8?」

僕が聞き返すと彼女は疑問符を浮かべるように首を横に傾ける。恐らく無意識に言った言葉なのだろうけれど……。今のは一体……。僕はそう感じながら、大我のお母さんに教えてもらった番号を携帯に入力する。

『……誰だ?』

出た。この声は勇作さんだ。

「ご無沙汰してます。大我の友人の田中誠です」

『あぁ、誠くんか。急にどうした?大我がまた何かやらかしたか?』

「いえ、今回は個人的な相談で」

『……こう見えても俺は忙しい、学生の些細な悩みなら子供相談センターにでも――――』

「この街の秘密に関わるかも知れないこと。って言っても、子供相談センターですか?」

『……詳しく聞かせろ。っと言いたい所だが、ここで話すのは危ないかもな。わかった。後で俺んち来い』

急に勇作さんが小声で話し始める。周囲に聞かれないためだろう。

「ありがとうございます。何時頃にお伺いしましょう」

『8時。その時間には必ず家に戻ろう。今帰り支度をしてたとこだ』

「わかりました。住所は大我のお母さんに聞いているので大丈夫です」

『そうか。じゃあ……また8時に』

そういって勇作さんは電話を切る。



「……終わりましたか?」

「うん。これから勇作さんちに向かうよ」

「さっき言ってた方の家ですね」

時計を見る。現在7時30分。ここから歩いていけばちょうど着くぐらいだろう。

「じゃ、行こうか」

「はい」

そして僕と二葉は勇作さんの家に向かうために、夜の道を歩く。







「……ん?どうした、今度はやけに小さいな」

「うん♪今まで本体として使ってたのが大我くんにやられちゃったからねぇ」

「ほぉ、No15に会ったのか」

「うん。ちょっと油断したら負けちゃったよ。いやはや、怖いね『増やしすぎ』もデミリットあることを知ったよ~」

「ふっ、それだと言い訳に聞こえるな」

「まっ♪そう取ってくれてもいいよ。子供は言い訳したがるものさ」

「それで?物資は?」

「ちゃんと、もう一人が回収したよ。大我くんが男を倒している間に。そっちこそツヴァイの捜索は?」

「ツヴァイを今……探しているんだがな……。ん?」

「どしたの?」

「……見つけた。少年と一緒だ」

「へぇー、僕らとはぐれてボーイフレンド作っちゃったんだ」

「茶化すな。アインは今動けない。ドライ、お前が迎え」

「了解。了解」

一人の少女が、その場から姿を消す。

「そんなにほいほい兵器送っていいの?」

「あぁ、問題はない。それより、No2とNo14はどうした?」

「んー、楓ちゃんに頼んでるけどまだみたい♪」




「そうか……」



そして男は再び街中にある監視カメラから映されている映像を見る。そこには、男と二人で歩いている。自分の元兵器の姿があった。



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