CAT 第10話
一応一章的な話はここで終わりです。
ここから続きを定期的に更新していくのでお楽しみください^^
「マスター。」
「……アインか。ご苦労であったな」
「しかし……」
「DJジョーか。『あの女の犬』はツヴァイに任せていたはずだが……通信が切れている」
「ツヴァイ。消息……不明。不明」
「しかし、驚いたのはもう一つだな。『No15』……『鈴村大我』か」
アインの前に立つ男は、顎に手を添えながらアインの中に搭載されていたカメラで鈴村大我との闘いの光景を見ていた。
アインの攻撃に、鈴村大我はすぐに倒れていた。腹部にアインのナイフが突き刺さっている。そこから立ち上がることはなかった。当たり前か。鈴村大我はアインに襲われる前に、物部真希と闘っていたのだから。アインの戦闘力は元々CATと闘うために造られている。それも踏まえればアインに瞬殺されるのもわかる。
だが……そこからだ。
「てめぇ……。待てよ」
アインの目が振り返る。そこには血だらけで立ち上がっている『No15』の姿。
アインが再びナイフを出して奴に突き刺す。しかし、奴は倒れずにこちらに襲ってきている。アインの目から移っている映像が大きく揺れる。おそらく殴られたのだろう。起き上がるアインの目に一瞬映る『No15』の目は生気を失っていた。
「まさか……。意識がないと言うのに立ち向かっているのか?」
その映像を見ていた男は独り言を漏らす。
生気を失った目をしていた『No15』はそのまま怯えて動けなくなっている物部真希の前に立ちはだかっている。アインはナイフを出現させて『No15』に投げつける。奴の身体に何本ものナイフが突き刺さる。
それでも『No15』は倒れない。
「……ん?」
一瞬。その一瞬、生気を失っていた目が変わり
鋭い目つきでアインの事を睨んでいた。『これ以上近づいてくるな』と威嚇しているようだった。
「ふっ、『No15』……『鈴村大我』……『タイガ』はよく言ったものだ。本当に獣のような目をしている」
その直後、2人の間にDJジョーが現れ、『No15』が倒れてしまった。
そこで、私は映像を切った。
「なるほど……この『No15』は、思っていた以上に興味深い。それと同時に……非常に脅威になりえるな。『スマイリー』もどうやら接触しているようだが……」
「マスター。どうしますか?」
「アイン。お前はしばらく下がっていろ。ツヴァイの捜索は『クロ』にでも頼もう」
「よろしいので?」
「あぁ、あいつは頼めばやってくれるだろう」
「……了解しました」
そういうと、アインはその部屋から去って行った。
「それにしても、『あの女』……これも無視しておくわけには行かぬか」
とある場所の民営プール。
「……ぷはぁ!」
「いやぁー、速いなぁー。碧ちゃんは」
「……な、なんかすみません。一人で楽しんじゃって」
「あぁ、ええよええよ。泳いでる女子高生を眺めてるだけでわいには癒しやわ」
「…………」
「あっ、ちょ、ほんまに引かんといてぇな」
「まぁ、冗談だとはわかってますよ」
そこでは息が荒くなるまで泳いでいた野水碧の姿とそんな彼女が満足行くまでプールサイドで焼きそばを食べている水着姿の難波薫。
「……っていうかよく食べますね?」
「そないか?それにしても優しいなここの管理人は飲食を持っても泳いでええなんてな」
「その代わりめっちゃ監視されてますけどね」
「流石に喰ったものをプールの中に入れられると困るからやろ……」
二人が会話していると、野水はじっと薫の持つ焼きそばを見つける。
「……ぐぅ~……」
「………っ!!?」
聞こえたのは腹の音。それと同時に碧の顔は真っ赤になる。
「腹減ってんのか?なら、食うか?」
そういって薫が焼きそばを差し出すと、彼女は拒みつつもそれを受け取る。
「……薫さんって、本当に食べますね」
「まぁな。食うてるときが一番幸せですわ♪」
「そのわりに……細いですよね?」
「ん?」
薫と碧が初めて出会ったとき、彼はうどんを食べていた。
そこから歩いてたい焼きを買って食べており、その後コロッケを買って食べて
さらに八百屋さんに分けてもらったみかんを食べながら、このプールにたどり着き、プール近くの屋台をやっていたところから香るソースの匂いに誘われて焼きそばを買っているのである。
とてもじゃないが、常人以上に食べている。これも彼のCATの能力の一つなのだろうか……。
「…………」
「ん?あぁー碧ちゃん。気にせんでええよ?今でも十分ほっそいしそれに、女の子っちゅうのは多少肉付いてるほうが――――――――」
べちんっ!と言う音が、薫の言葉を遮る。
「いったぁ!強烈なビンタやで碧ちゃん!」
「薫さんのバカッ!いただきますよ!」
そう言って自棄になった碧は手に持った焼きそばを思いっきり啜る。
「やっぱ食うてるのが一番ええやろ?…………あっ、そや碧ちゃん」
「ん。なんですか?」
「今日、碧ちゃんに声かけてきた男たちおるやろ?」
「はい……いましたね」
「あれは結構前からなんか?」
「いえ、一人だけとかはまだありましたけど……あそこまでの人数は」
「あれ、明らかにただのナンパ男やぁないよな?」
「そうですね。スタンガンとか持ってましたし」
「…………」
薫はじっと考える。
「碧ちゃん」
「はい?」
「君は多分……狙われてる」
「誰にですか?」
「わからへん。ただ、確実に君を『CAT』と知ってて、
それを捕らえるために『誰か』に雇われたのがあの不良たちやろ」
「…………」
「悪いけど、君は一人にはできひんわ。これからは行動を共にしてええか?」
「ふぇっ!?」
「能力は使いたくないんやろ?」
「で、でも……」
「家は?」
「一人……暮らしです。寮生活だったんですけど、学校やめさせられてからは、アパートで一人…………」
「なら悪いけど、わいもそこに住むは」
「ふぇっ!?」
「なんか問題あるか?」
「い、いや……そ、その……ないです」
「ん?」
俯く碧に、首を傾げる薫。
「と、とにかく。もう一泳ぎしてきます」
「おう、汗流してきぃ」
そして彼女はまたプールの中に綺麗なフォームで飛び込んでいった。
「くっそぉ……あの糞猫がぁ。……何気に10万再生されてやがるし……」
携帯を開いてまた自分が落とし穴に落ちた瞬間を取られた動画を見る。
また……怒りがこみあげてくる。
「今度あったときはぎったんぎったんにしてやる!!」
そういいながらコンクリートの地面に皹が入るほど地団駄を踏む。
「あっ!いた!」
「ん?」
その時だった。後ろから声。
振り返ると、白いワンピースを来た……物部真希の姿だった。
その横には愛犬の『太郎』がいた。
「お前、その服……」
「五十鈴さんに無理やり着せられたの。おっ、おかし……おかしいかな?」
俺の目を見ずに話している物部、まだ引きこもっていた名残があるのか、他人の目が見れないんだろうな。
「いや、別にどうでもいいけど……俺を探してたのか?」
「うっ、うん。鈴村くん。襲い掛かってきたあの女の人の事聞かずに出ていったから……」
「も、もしかして知ってるのか!?あの女が何者なのか!」
「あっ、ご、ごめん……。詳しくは知らないんだ。五十鈴さんに聞いて見ても《奴》としか答えなかったし……」
「なんだよ。じゃあ意味ねぇじゃねぇか」
「で、でもね!私……名前を聞いてるの」
「本当か!?」
「う、うん。鈴村くんが気を失っている時に……『アイン』って名乗ってた」
「……『アイン』か。おもしれぇ!あのナイフ女を探してぶっ倒してやる!」
「が、頑張ってね。わ、わたしは五十鈴さんの所でやるべきことを探すよ」
「おう、今度また、喧嘩しような」
そういって俺は、物部真希に向かって軽く拳を突き出す。
「う、うん……」
彼女は俺の拳にポンと小さい手の拳を作った。
「じゃあな!」
「うん。ばいばい」
そして俺は物部真希に別れを告げて、その場から去る。
(……『アイン』か。絶対に見つけて倒してやる!)
15人目のCAT。鈴村大我が目覚めて3日が過ぎた。
この3日間の激動からから、全ての物語が紡がれ始める。
街に蔓延るCAT達それぞれの物語が――――――――――――――。
読了ありがとうございました。
これで3000字弱なのですが、これでちょうどいいのか読むのに苦しいか。
それとも物足りないか悩んでいるところではあります。もしそういった意見がありましたら言ってくださると助かります。
では、11話をお待ちしていてくださいね♪ではでは




