52話 1年前期試験
新暦1347年 ガレリア大陸 カルティア王国 王都 カルティア魔法学園
フェレアのデザインが完成し、定例会議で学園ギルド全員にお披露目された。
空を思わす薄い青地の盾を背景に、角を生やした白馬が前足をあげて躍動し、その背には白銀の鳥が大きな翼を広げている。
少しの静寂のあと大歓声と拍手が巻き起こった。
その場に出席していたフェレアもその反応に驚きながらも喜ぶ。
満場一致でこのデザインを学園ギルドの紋章にすることが決まった。
これを扱うことになる細工職人だけは複雑そうな表情を浮かべていたが。
紋章のデザインも決まり、報告を聞く限り釜は昨日完成したので今日火入れをするようだ。
炉の方はあと1,2週間ほどの完成予定で、衣装・装備関連は予定の半分近くが終了、料理は試作も終わったので他の手伝いに回っており、農園は今のとこ順調らしい。
あと学園祭まであと2ヶ月ちょいだが、試験期間もあるので実質2ヶ月きっただろう。
やはり炉の方が問題だが、全員で取り掛かればなんとかなるはずだ。
集団演武や模擬戦、弓技大会に出場するものは内容が決定し、練習に取り組み始めていた。
トキは監督者なので出ないつもりだ。
全員に報告・連絡・相談を密にするよう何度も繰り返し言っておく。
朝起きてトレーニング、授業、放課後は学園ギルドの仕事、遅くまで作業が続くため光属性の魔法使いが大活躍だ。
そんなルーティンワークの中でついに炉が完成し、火入れをして鉄を叩く音が聞こえるようになった。
初めて新釜で焼いたパンはできたてを全員で試食し、うますぎて感涙した。
集団演武の演出は2年の先輩たちが中心になって、農園の隣で動きを合わせる訓練をしている。
その農園の野菜や果物は花が咲き、小さな実がなりだしていた。
手間暇かけただけあって農業部の人たちの顔には笑顔が見られる。
作業部屋では職人がせっせと楽しそうに働いており、完成したものが次から次へと回されてくるため細工職人だけは泣いていた。
本部では予算の提出や出店する料理の値段についての議論がかわされるが、費用との兼ね合いもあってなかなか決定されない。
トキのポケットマネーからはすでに金貨16枚が出されていた。
当日の客入りの予想が難しく、できるだけ多くの人が来るように企画を生徒会に持ち込もうという意見も出た。
ギルドマスターが出した支出は挽回するんだ、と皆意気込んでいる。
他部門の協力もあって鍛冶の方も順調に進み、とうとう学園祭…の前に試験期間がやってきた。
この間は作業が終わっていない部門の人たちも勉強に勤しむことになる。
活動休止の折、トキはギルドマスターとして宣言した。
「もし!万が一!留年するようなことがあれば!学生ギルドの脱退を申し付ける!」
これはその後、正式にギルド規約に加えられた事項だ。
トキが思うに、授業を真面目に受けていれば落ちるようなことはないが、念のため本部にギルドメンバーで集まって勉強をすることにした。
トキの場合、魔法実践Ⅰと運動・武術科目以外は筆記試験となる。
建築Ⅰはチーグルに、治癒魔法Ⅰはシンクに、歴史はユユに教わる。
それ以外ではトキが皆に教えていた。
「歴史の年表と王様の名前ってどうにかならんのか?これ」
「歴史の深淵を理解できない愚か者に教えるものなんて何もないわ」
「ユユ~これってどういうわけでこうなったんだ?」
「ああ、そこ面白いところね……」
「チーグルさん、扱いの差が激しいと思いませんか」
「それは最初っからじゃない?そんなことよりトキ、ここはどうすればいいの?」
「チーグルにまでそんなこと扱いされた……」
こうしてお互い教え合いながら試験日を迎えた。
試験は4日間にわたって行われた。
結果…はどうでもよく、終わってすぐに学園ギルドの活動を再開する。
結果発表は三日後で、学園祭はそのさらに三日後となるため、これからはいよいよ時間との戦いになる。
「出場者は自分の役割と演出を確認!商業部は当日のスケジュールの台本作成急げ!それと当日までに必要なものを再度チェック!場所の設営もしっかりな。農業部、収穫は?よし、できるだけ採れたてのものを使いたいが、事前準備が必要なものはそのための人員を確保しとけ!職人部は作業したものから順に遅れているところのフォローに回れ!鍛冶職人と細工職人は……がんばれ!以上!」
ここからは全員が作業に取り掛かった。
トキも作業が遅くまで続く職人達に夜食を持って行ったり、演習の出来栄えを客席からの視線で見たりなど、雑用や最終調整に取り掛かった。
試験結果が出た。
トキの成績は全て合格だった。
掲示板には上位成績者が張り出され、後期の授業料免除者がわかるようだ。
入試試験で10位以内だからといってずっと免除されるのではないのだ。
1年
首席 ユユ=クリストット
次席 トキニア=ゼペルルクス
三席 ファエル=ジブリスタ
四席 ロインツ=クロムヴォル
五席 クウ=シャオラ
六席 ゴルトウィッツ=インテリーア
七席 クェーリ=ミグリー
八席 ナナテア=エブリッツァ
九席 シンク=テルガー
十席 ピニオン=ワークエル
ユユには負けたが、ユユが10番以内でほっとしていた。
彼女の事情を知っているので心配だったのだが、杞憂だったようだ。
そして、ケオランが上位成績者から落ちていた。
「いやぁ~やっぱ入試の時は槍使えたのが大きかったんだろうなぁ」
なるほど、と思ってしまったが、なんとも軽い受け止め方だった。
ギルドへの報告では全員合格したようで一安心した。
ちなみに、2年のトップはやはりエレスティナだった。
その日、夜遅くまで作業を手伝ったトキは寮で4通の手紙を受け取った。
どうやら溜まってしまっていたようだ。
相手は日付の古い順に、ファウスタイン侯爵夫妻、流通局局長レクディアン伯爵、ジョー、ハウゼン男爵家だった。
手紙の内容をみるに学園祭へくるという報告、局長とファウスタイン侯爵夫妻は加えて、会えていないため体を気遣ったものだった。
(やべーーー!返事今からじゃ間に合わんし……。当日謝ろう)
どの人もとてもお世話になった人たちだ。
ファウスタイン侯爵には2年以上音沙汰なく、入学する前後でも連絡を忘れていた。
局長や流通局の人、ジョーにも合格報告をしていなかった。
皆がおそらく人づてにトキが入学したことを知ったのだろうと思うと、いたたまれない気持ちになった。
謝罪も込めて学園祭をすばらしいものにして歓迎しようと決意した。
(でも、ジョーのおやっさんが手紙書いたのは驚きだよな)




