130話 ※ただし○○に限る
ネットがSB光に。工事中、資料が全部ネット上にあったので全然ストックできず。
新暦1349年 ガレリア大陸 カルティア王国北東部 ゴウホウ山地 老師宅
「俺は悪くない。知らなかっただけだ」
キュエエ
どこかの召喚者と似たような言葉を吐くトキにギンがツッコミを入れる。
このやり取りの原因となる光景がトキたちの目の前に広がっていた。
次第に温かさが増して暑さを感じるようになる今の季節、ゴウホウ山地の周囲は新緑が華やかに森を彩りつつある、はずだった。
しかし――
「う~ん……ものの見事にポッカリと、まぁ。……これってアレのせい、だよな?」
空から見下ろすとよくわかる。
老師の家がある山頂(茶色)を中心にして、新緑に囲まれた綺麗な黄色い円が広がっている。
黄色というのは草木が枯れ落ちてできたためである。
つい数日前、ここを出発した時にはこんな現象は起こっていなかった。
トキは頂きに下りて、恐る恐る王者の盾を掘り起こしてみた。
しかし、こちらに関しては別段変わりないようだった。
(ん~でも、これ以外に原因は見当たらないんだよな~。アルゼンの兵士はこれを背負って何日も移動してたっぽいし、人体には悪影響ない、と思いたいけど。影響があるのは植物のみか?……いや、待てよ。元々王者の盾があったのってダンギス荒地だったな。岩石が転がるだけの不毛な土地って話だったが、そうなったのはもしかしてこれが原因か?となると、そこにあるだけで土地を痩せ細らせるってのが王者の盾の代償、といったところか……)
断定はできない。
しかし、可能性としては有り得ると判断したトキは、すぐにこの場から立ち去ることにした。
ないとは思うが、お墓や老師の家が山頂ごと崩れ落ちるなんてことになるのは避けたかったからだ。
移動に際してその危険性を危惧したトキは、以前|フォート=ライレリック《荷物》にしたように、シロの腹に吊るして運ぶことにした。
(まずは拠点を探さないとな。人が来る心配がなく、情報も得られそうな町にほど近いって条件の場所が好ましいけど……)
追手が来る可能性も考え、トキが過去に住んだ場所は候補から外す。
そうなると、人の目が届かぬ森や山の中、または無人島。
もしくは影響が少ない場所に王者の盾を隠して、辺境か外国でひっそりと生活するのもいいかもしれない。
(……それだと周囲の警戒に疲れちまうか。ギンと交代でも、エンドレスなら参っちまいそうだし。そう考えると、陸か海の孤島に住んで、食料や情報の調達する時には町に出掛けるって感じの方がいいか)
やはり人気のない所がいいと思い、大陸図を取り出して当たりをつける。
結局、候補は3つまで絞った。
カルティア王国南部の大森林、バドワイ山脈南端部の山中(中央部は寒く、北部は熱いので)、大陸南西部(サルンガ共和国南部)沖に位置するエヴィライ島の3つだ。
ご存知の通り大森林は未開の森、山脈南端は大森林の深部に挟まれたまさに陸の孤島で、島は一般的には無人島と言われている。
森はカルティア王国内で食料も豊富だが、開拓でもしない限り敵性生物など危険が多いと言える。
また、山は高地にあって隠れる場所も少ないので侵入者の発見は容易いが、地形や温度など住める環境なのか不明瞭なことが心配だ。
そして、エヴィライ島は人類未踏の地とされており、色々と曰く付きなのが気になる所ではある。
ちなみに、大陸南東部(ナルビス王国南東部)沖にもイスソリ島という島があるのだが、エヴィライ島と違って海運の補給拠点となっているので候補からは外した。
いずれにせよ、現地まで飛んで自分の目で見てみる他ない。
「いざ!楽園を求めて!」
順繰りに森、山、島と見て回ることにしたトキはお伴を連れて空の旅へと舞い上がった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あった!あったでぇ!ここぞ、夢にまで見たワイらの楽園やぁ!!」
拠点探しを開始してから18日目のこと。
なかなか良さそうな土地がなかったため、最終候補地であるエヴィライ島にまで足を運んできていた。
『エヴィライ島』
ガレリア大陸南西部沖に位置する無人島。
荒れた海流や吹きつける強風、周囲全てが90度を超える高い崖によって囲まれているので、船による接岸・上陸は不可能となっている。
そのため、小国家並の面積を誇るが、島内部の情報は知られていない。
また、大陸との間に位置するエヴィライ海峡付近では、運航していた船やその船員がいつの間にか消息を絶つことがよくある。
このことから呪われた島と呼ばれており、「エヴィライには近づくな」というのが船乗りの常識となっている。
近年では海峡を避けて迂回するルートが順路となっている。
小さな大陸と呼べる大きさにもかかわらず、50mもの切り立った崖が周囲を覆い侵入者を拒む。
波も高く接近すら困難で、大型船でも簡単に船体をたたき壊されてしまうだろう。
トキは少なからず持ち合わせた冒険心をくすぶりながら、空から人類未踏の地へと足を踏み入れた。
エヴィライ島内部は中心地に向かって山のような傾斜が続き、中央が広大な盆地となっていた。
盆地以外は植生が貧しく、葉のない木々が多数見受けられる。
一方、盆地の方は緑に覆われており、中心地には樹齢千年を優に超えるであろう一本の大樹がそびえている。
トキは人の手が入らぬ自然の美しさを目の当たりにしていた。
これぞ、自分が探していた理想郷――
GYAAAAAA
「※ただし竜種に限る、か……」
目の前で展開される光景に、驚きを超えてドン引きしそうになっていた。
竜種の中でもシロクロや暴風竜、火焔竜などと同じく、四足に両翼を持った飛竜と呼ばれる存在達がそこにいた。
しかも――
「10、20、30……まだ増えます。3桁超えそうだな、こりゃ。どうすっぺ……」
盆地の中ほどまで侵入した時点で背後を塞がれてしまった。
すると、盆地の中から次々と出るわ、出るわ。
どうやらここは飛竜の巣だったらしい。
海峡で人や船が消える謎はこいつらのせいと見て間違いないだろう。
個体差はあるが、大きいもので体長5m、翼開長10mといったところか。
これだけの巨体が並ぶと流石に壮観だった。
現時点での大きさは暴風竜>シロクロ>>飛竜といったところで、体の色も全て灰色で統一されている。
そして、この飛竜達は魔物特有の赤い瞳ではなかった。
つまり、野生の鳥獣と変わらない存在だということ。
トキはこの存在自体に驚いていたのだ。
少し落ち着こうと、竜種について整理してみる。
水竜種……蛇タイプ
地竜種……鰐タイプ
飛竜種……ドラゴンタイプ――火焔竜、暴風竜のみ
新発見――煌白竜、闇黒竜
翼竜種……ワイバーンタイプ(前足が翼化)
これらの内、水竜種・地竜種に関しては魔物化していないものも存在するが、飛竜種・翼竜種に関しては今まで魔物化していないものは発見されてこなかった。
翼竜はバドワイ山脈北部の火口(火焔竜の縄張り)付近にのみ生息する魔物で、単体ならばAランク、群れでSランク(いずれもパーティ推奨)となる。
そして、飛竜種は魔物であっても鳥獣であっても、火焔竜と暴風竜だけしか存在しないとされていた。
つまり、目の前の存在はシロクロ同様、過去に例を見ない竜種なわけだが、トキにもその辺りの分別がよくわからなくなってきていた。
(もしかしたら、シロクロのように友好的な竜種なのかもしれない――)
GYAAAAAAAAAA
「って、んなわけないか。シロクロ~こいつらってお前らの親戚か?」
ギュウア
ギュウア
2匹とも「よくわかんない」といった感じに首を捻る。
今の所攻撃を仕掛けてくることなく、50mほど距離を空けて前後左右でホバリングしている。
なんとなく、魔物でもないこの飛竜達を殺したくはなかった。
判断に迷っていると、前方にいた飛竜が道を譲り、一際大きい個体が姿を現した。
大きさだけならシロクロに匹敵する。
おそらくはここのボスなのだろう。
このボス飛竜が現れた途端、他の飛竜達の威嚇声が止まった。
一帯は翼で風を打つ音だけとなる。
急に静かになったような気がしていると、突如ボス飛竜が吼えた。
耳を貫き、大気が震える。
――以降トキの主観によるアフレコ――
「おう、お前ら!俺様の縄張りを荒らすたぁいい度胸じゃねーか!勝負しろや、このドサンピン!」
「あいつあんなこと言ってるし。勘違い野郎かっつうの。めっちゃ面倒だし」
「ウチら荒らしなんてしてへんよね?少なくとも今はまだ。ウチ~荷物邪魔やから、クロが相手してやり~やぁ」
「はぁ!?嫌だし!そうやってこっちに振るの止めろし!」
「何言うてんのや?主にいいとこ見せるチャンスを譲ってあげようっていうこの優しさ、わからへんかなぁ。じゃ~ええよ。ウチがちょちょいと――」
「あんなやつ叩き潰してやるし!見てるし、主!」
「(チョロくて助かるわ~ホンマ)クロさん格好ええ~。やったり~やぁ」
喧嘩腰になっていた相手にクロがタイマンを張ると主張したようで、2匹はさらに上空へと上昇していった。
他の飛竜達は大人しく見守ろうとしている。
何故かトキにはシロが腹黒く笑ったように見えた。
心なしかギンもやれやれと溜め息をついているように……。
ギャアアアアア
ギュウアアアア
そうこう考えている内に2匹の決闘?が始まった。
まさか忘れているわけではないだろうが、クロは例の翼を拡張する冥属性の魔法は使わずに戦うようだ。
一度大きく距離をとって加速する両者。
互いに体当たりを敢行し、見ているこっちが痛くなるような激しい衝突音が響く。
バランスを崩しつつも立て直し、今度は爪と牙での取っ組み合いとなる。
まずは力比べといった所のようだ。
「なに馬鹿正直にやり合っとんのや~。ほらそこや、眼球砕き!あ~もう……。おっ、今や!逆鱗三枚下ろし!あ~何しょんのや~ド阿呆!せっかくウチが秘伝三十六の竜技を教えたったのに、いつ使う気やねん。って、今やろ!」
繰り広げられるいい勝負にシロも興奮しているようだ。
ウィービングのような動きをしながらシュッシュッとシャドーボクシングをしている。
その器用さとパンチのキレ、ボディを抉る角度に舌を巻く。
(シロはいいボクサーになれそうだ……っと)
よそ見をしていると2匹は錐もみしながら落下していき、途中で態勢を整えて離れ、再び距離をとっていた。
見た所、体格と同じくパワー、スピード、旋回能力などは互角のようだ。
正々堂々といった戦いぶりから性格も似ているのかもしれない。
(となると、決め手となるのは火力か)
魔物の中には魔法を使う種が多く存在する。
一方、鳥獣の中で魔法を使えるのはゴウホウ霊山一帯に生息する聖獣と呼ばれる存在だけだ。
しかし、シロクロがそうであるように、(あの巨体で空を飛んでいるのだから)魔法による補助をしていると思われる飛竜達も例外に入るのだろう。
飛竜種は風属性の魔法を操る、そう考えても差し支えはなさそうだ。
そして――
ゴオオオオ
竜種全般に見られる攻撃手段――ブレスがボス飛竜の口から放たれた。
オーシャンリザードの水鉄砲や暴風竜の殺人的な風圧ブレス、シロクロらのビームとも違う、ドラゴンらしい火線のようなブレスだ。
人の身であれば一撃でウェルダンに仕上がる威力だったが、クロはそれに風魔法を叩きつけてかき消した。
鼻息で消してやったかのように余裕綽々といった様子を見せている。
お返しとばかり、もしくはお手本を見せるかのように、クロはゆっくりとした動作でブレスを放った。
ギュウウウアアアア
先ほどの火線ブレスとは全てが桁違いの黒線ブレスが閃光のように迸る。
暴風竜とは質が違う、圧縮され貫通力がありそうなその攻撃はボス飛竜の片翼上端を貫いた。
傷を負ったボス飛竜は飛行困難となって段々と高度が下がり、地上へと落ちていく。
それでもボス飛竜の闘志は尽きておらず、地に落ちても勇ましい声を上げている。
「俺はまだやれんぞ、ごらぁ!かかってこんかい!」
「もう勝負ついたし。こっちの勝ちだし。それより主、見ててくれた?」
クロは褒めて褒めてと甘えるようにトキの傍へやって来た。
既にボス飛竜への興味は失せたらしい。
そんなクロに、シロが尻尾でベシベシ叩きながら苦言を述べている。
「何やってんねん、アホ。あないな雑魚相手に時間かかりおってからに。ウチやったら瞬殺やで、瞬殺」
そんな2匹のじゃれ合いを横目にボス飛竜の方を見ると、まだ諦めないのかブレスを放ってきた。
「勝負はまだついてない言うとんのじゃー!」
そのブレスは狙いが逸れたのか、トキに向かってくる。
しかし、トキは何もせずそれを傍観していた。
シロが白光する体でそれを遮ったからだ。
聖属性による魔法で身を補強したシロは怒髪天を突くといった様子で声を荒げた。
「おんどりゃああ!ワレ、ウチの主に何しよるんじゃ!!玉カチ割って口と尻から食わすぞ!てめーどらぁ!」
ダメージなしのシロはトキも見たことがないほど怒りに震えており、すぐさま反撃に出た。
これはまずいと思ったトキはシロを抑えようとする。
しかし、トキの制止を振り払ってシロはブレスを乱射。
そんな暴虐を撒き散らすシロにびびったのか、ボス飛竜や他の飛竜達はおろか、クロでさえも畏縮してしまっていた。
(クロよ。お前はシロと同格なはずだろう?ビビってないで仕事しろ)
シロが落ち着きを取り戻した頃、飛竜達は全て地上へと降り立っていた。
ボス飛竜もすっかり大人しくなっており、その様子は上司のご機嫌を伺う中間管理職の如くへりくだっているように見える。
言わずもがな格付けは済んでおり、トップ(社長)はシロで、次(副社長)がクロだ。
シロを止めようと奮闘したトキは筆頭株主といった位置づけだろうか。
とりあえずこちらへの攻撃の意思はなくなったと判断したトキは今後のことを思案することにした。
(ひとまず脅威は去ったことだし、ここなら隠れるにはよさそうだな。万が一侵入者が来たとしても、飛竜が先に気付きそうだし。住む場所は……あの大きな樹の上か根元にしようか)
距離的にかなり人里から離れることにはなるが、他に当てもないのでここを拠点にすることにした。
大樹を中心にした盆地は草原の中に湿地帯が点在しており、飛竜達は草原の草を均して寝床にしているようだ。
「……あれは……何だ?」
大樹の元へ向かうと、その根元で異物を発見した。
そこには草木が絡まってもなお、隠れきれていない黒い石碑が立っていたのだ。
ドクンと鼓動が高まる。
トキにはそれに見覚えがあった。
バドワイ山脈の中央部、シロクロと出会った古代遺跡の中で見たものと似ていたからだ。
ただし、大きさはここにあるものの方が遥かに大きい。
ガシガシと頭を掻き、一つ深呼吸をしてから草木を取り払う。
そこにはこう記してあった。
”我が虚殻にして 我が友 煌闇竜レーグニッツ ここに眠る”
”その勇敢なる王の姿を忘れはしない”
”アラタ=トウノキ”
想定はしていた。
シロクロ以外の煌闇竜の存在や過去に七器を使う人間がいたこと。
そして、転生にしろ召喚にしろ、過去に実在したであろう日本人の存在。
それでもまさか、このような所で知ることになるとは思いもしなかった。
いたずらでないなら、これはその時代を生きた日本人の使い手が遺した墓標なのだろう。
大きさに見合わず、日本語で書かれた文章はそれだけだった。
しかし、よく見ると横面にも文字が書かれていることに気付く。
手前側には――
”この地に住まう民 固有の木々を用いて 竜笛を作り上げる”
”竜と心を通わせる術によって ドゥオモに従う竜の王を我が虚殻とする”
”緋色の瞳 七色のそれへと変わり 以降 皆の先頭に起つ”
”この竜王こそ 煌闇竜レーグニッツである”
”六器 七器となり 六雄 七雄となる”
左側には――
”煌闇竜レーグニッツ 2つの卵を遺して逝く”
”遺された卵 孵る様子なく 封印に至る”
”代償の大きさ故 七器中でも遅い開封となろう”
”願わくば 煌闇竜のみに限らず 七器の必要とされぬ未来を”
右側には――
『皇竜の床』
『虚幻の試』
『大火の葬』
『不動の理』
『水嶺の母』
『業秤の比』
『不縛の園』
『聖者の父』
『石刻の史』
『召喚の間』
そして、背面にはおそらくガレリア大陸のものだろうと予想される簡易な図形で描かれた地図があり、図中には前述した古代遺跡の横にふった記号が記されていた。
海岸線――特にエヴィライ島はかつて大陸と地続きだったようで、現在とはかなり変わっている点もあるが、山脈や水源など似ている要素が見受けられる。
少々読みにくい文言を一通り理解したトキは、地図と古代遺跡の場所を確認していく。
大まかに言うと、『皇竜の床』はバドワイ山脈中央部、『虚幻の試』はゴウホウ霊山、『大火の葬』はバドワイ山脈北部の火口付近、『不動の理』はアルゼン帝国西部のダンギス荒地、『水嶺の母』はタルム女王国のシーサン湖、『業秤の比』はナルビス王国西部のクロウリア近辺、『不縛の園』はここエヴィライ島の中央部、『聖者の父』はサルンガ共和国南部の大森林南端、『石刻の史』はカルティア王国南部の大森林中央部、『召喚の間』はアルゼン帝国帝都アリジニステン近辺となっており、どれも場所は正確に記されている。
おそらくこれらの十か所には七器が封印されているか、もしくはそれにまつわる過去の情報や古代の遺産が遺されているのだろう。
(さて、どうしたもんかね。気になることはあるけど……)
過去に起こった歴史は、関わる固有名詞共々この際放っておくことにする。
気にするべきは将来関わりそうなことだ。
まず、ドゥオモと竜王をはじめとする魔物の関係性について。
それ次第では魔物の存在理由もわかるかもしれない。
単純な脅威という点では、やはり王種が最も危険だと言える。
もし、アレが人の手で制御できるのであれば、七器と同等レベルの危険性を孕むことになるだろう。
ただ、鍵になる「竜笛」なるものの作り方が書かれていない上、ここにはもう知ってる人間がいないようなので現状では放置する他ないだろう。
次に、「最後の開封となろう」という言い回しだ。
もしかすると、七器の封印を解くには適切な順序があるのかもしれない。
そうすると、初っ端に煌闇竜を解除したトキは間違った、というより滅茶苦茶な方法をとったことになる。
とは言え、今更遅いと頭を切り替えることにし、後の教訓としてだけ頭の端に置いておくことにした。
3つ目は十か所の古代遺跡か古代遺産の名称だ。
名は体を表すというが、七器自体がそうであるように、これらも名付けた者の主観に基づいた存在なのだろう。
そうなると見逃せないのが『召喚の間』だ。
例の召喚者達は十中八九『召喚の間』の機能?儀式?によってこの世界に来たのだろう。
以前より、これ以上この世界を引っかき回す人間が増えないよう、召喚する術は消しておくべきだと考えていた。(七器と違って警告もないので)
詳しい場所が判明した今、放っておくべき事柄ではない。
当座の目標として、ここから近い2ヶ所とアルゼン帝国の2ヶ所を調べることにした。
近い方の『聖者の父』と『石刻の史』は情報の確認と収集、『不動の理』は管理する上で「王者の盾」の情報が欲しかったからだ。
「ホント……何で俺がそこまでしなきゃならんのだ?」
思わず自問自答してしまう。
こんがらがる頭に七転八倒しながら悶えた末、今日はもう寝ることにした。
ひとまず明日からは王者の盾を持ちながらの保管場所探しとなる。