第九話 虹の架け橋
試練の洞窟で二つの鍵を入手した一行は、ソウジを担ぎながらフェアリルに戻り、妖精王から迷いの森への立ち入り許可を貰いに行くのであった。
―――――――――――――フェアリル―――――――――――――
ジム「ぷは~、やっと着いたぜ~」
タオ「僕は食べ物を買ってきますね」
ソウジ「かたじけない・・・」
アリス「私達はお父様の部屋へ行きましょう」
ウィル「うん」
マリー「あたしはここに残ってるわ」
王の間に向かう2人。
――――――――――――フェアリル 王の間――――――――――――
アリス「お父様ただいま戻りました」
妖精王「アリス~。勝手に外に出てはいけないと、あれほど言ったではないか~?」
アリス「申し訳ありません・・・」
ウィル「妖精王さん!僕が無理を言ってアリスさんに手伝ってもらったんです」
ウィル「だから、アリスさんを責めないでください!」
妖精王「ほほう~?それじゃあアリスの代わりにお前が罰を受けるか~?」
ウィル「は、はい!」
アリス「そんな!お父様、ウィルは関係ありません!」
妖精王「アリス~、お前は黙っていなさい。ワシはウィルと話をしているのだ~」
妖精王「ウィル。お前は罰を受けるといったな~?」
ウィル「はい!」
妖精王「よろしい~。それではシャンネラの探索を諦めるのじゃ~」
ウィル「えぇ!?」
妖精王「なんじゃ~?嫌なのか~?」
ウィル「・・・。それで、本当にアリスを許して貰えるんですか?」
妖精王「約束は守るぞ~」
ウィル「わかりました、シャンネラに行くのは諦めます」
ウィル「でも、諦めるのは僕だけで、他のみんなは通してあげてください!」
そう言うと、その場を立ち去るウィル。
アリス「お父様!ウィルはここまでずっと頑張って旅を続けてきたのですよ?それはあんまりです!」
妖精王「・・・」
アリス「わかりました。もうお父様には頼みません」
王の間を出て行こうとするアリス。
妖精王「待ちなさいアリス。お前が行ったところで門は開かんぞ」
アリス「確かに、今までの私では無理だったでしょう」
アリス「でも、今の私にはその力があるの!」
妖精王「アリス。お前まさか・・・」
アリスは父親に美しい羽を見せる
妖精王「そうか・・・、ついに覚醒したのか・・・」
アリス「これもウィル達のおかげです」
妖精王「どうしても彼らの手伝いをすると言うのだな?」
アリス「はい」
妖精王「わかったもう何も言わん、好きにしなさい」
アリス「失礼します・・・」
――――――――――――フェアリル――――――――――――
みんなの元へ戻ったウィル。
ソウジ「ウィル殿、いかがであったか?、もぐもぐ」
ウィル「えっと・・・」
ジム「どうした?」
ウィル「僕は家に帰ろうと思うんだ・・・」
ジム「はぁ!?なに言ってんだよお前?」
ウィル「えへへ、疲れちゃったんだ」
ジム「妖精のおっさんになんか言われたな」
ウィル「ち、違うよ!」
マリー「あんた嘘が下手ね」
ウィル「うぅ~」
ジム「おっさんが何て言ったかしらねぇが、諦める必要なんてないぞ」
タオ「そうですよ!僕達は悪い事はしていません」
ソウジ「ウィル殿、正直に白状するでござるよ。もぐもぐ」
ウィル「みんな・・・」
ウィルは仲間達に事の次第を説明する。
ジム「そういうことか~」
マリー「あんたも余計な事言ったわねぇ」
ウィル「だって~、アリスが罰を受けるなんて嫌だったから・・・」
マリー「ま~、そこがあんたの良いところなんだけどね」
タオ「ははは、そうですね」
ソウジ「こうなっては仕方ない・・・。門を破壊するでござるよ」
ジム「また無茶な事言いやがって」
マリー「でもそれしか方法はないわよね」
ウィル「僕のせいでごめんね」
ジム「お前はもう少し仲間を信用しろって」
タオ「そうですよ、僕達は仲間です」
ウィル「うん!みんなありがとう」
ソウジ「では腹がいっぱいになった所で、早速行くでござるよ」
一行は門へと向かう
―――――――――――フェアリル裏門―――――――――――
妖精兵「お前たち、ここから先は王の許可が無ければ通れないぞ」
ソウジ「御免!」
バキッ!
妖精兵「うげっ!」
みね打ちで兵士を気絶させる
ジム「痛そうだなぁ」
ソウジ「今のうちでござる」
タオ「こんな大きな門切れますかね」
ソウジ「拙者の刀では無理でござろうが、虹の剣なら可能でござるよ」
ウィル「がんばって!」
ソウジ「デヤァ!」
かけ声と共に刀を一振りすると、門が真っ二つに割れる。
ジム「よっしゃー」
マリー「追っ手が来る前にいきましょ」
一行は迷いの森へ入っていく。
――――――――――――迷いの森――――――――――――
ジム「ついにここまできたな・・・」
ウィル「長かったね~」
マリー「(待っててね、お母さん・・・!)」
タオ「さて、いきなり分かれ道になってますよ」
ジム「どっちに行く?」
ウィル「う~ん・・・」
ソウジ「こういう時は、刀を地面に垂直に立てて、倒れた方に進むでござる」
ジム「なんだそりゃ」
ソウジ「こっちでござるよ!」
刀の倒れる方向に進み続ける一行。
数分後。
ジム「本当にこれで良いんだろうか・・・」
ウィル「もう分かれ道も無くなっちゃったね」
ソウジ「前進あるのみでござるよ」
マリー「帰る道も無くなっちゃってるしね」
数分後。
ジム「どれくらい歩いたんだろう」
マリー「まだそんなに歩いてないでしょ」
タオ「同じ景色ばかりで方向感覚がなくなりますね」
ソウジ「植物が天を覆っていて、空も見えないでござる」
数分後。
ジム「全然、出口がみえねぇ~」
ウィル「疲れてきた・・・」
マリー「迷いの森って言うだけあるわね」
タオ「鍵を使う場所が見当たりませんね」
ジム「どーせ、妖精の森みたいに幻で見えないんじゃないのか?」
数分後。
ジム「もうダメ・・・」
ウィル「すこし休憩しようよ・・・」
マリー「そうね~」
タオ「なにか目印を置いといた方がいいですかね」
ソウジ「フェアリルでお弁当を買っておいてよかったでござる、もぐもぐ」
ウィル「そういえば、ずっと気になってたんだけど」
ジム「どうした~?」
ウィル「虹の剣がすっごい光ってる」
ソウジ「むむ?そうでござるか?」
マリー「そんなの元から光ってるじゃないの」
ウィル「そうなんだけど、いつもより光が強い気がするんだ」
ソウジ「抜いてみるでござるよ」
虹の剣を鞘から取り出すと今まで以上に強い光を放っている。
マリー「なにかに反応してるみたいね」
ソウジ「この辺りの植物でござるな」
剣が反応する場所めがけて一振りすると、目の前にあった植物が一掃されていく。
ジム「うおー、道ができた」
マリー「一つ目の鍵はこうやって使うものなのね」
ウィル「すごーい」
ソウジ「やっと先に進めるでござるな」
切り開いた道を進むと、そこには見渡す限りの断崖絶壁が広がっていた
ジム「なんだこりゃ!」
ウィル「崖だー」
タオ「向こうに島が浮かんでいますよ」
マリー「どうやって行くのかしらね」
ソウジ「むむ!わからんでござる」
ジム「ここで宝玉を使うんじゃねぇの?」
ウィル「よーし、使ってみよう!」
カバンから虹の宝玉を取り出してみる。
一同「・・・」
ジム「なんもおこんね~」
ウィル「使い方が違うのかな?」
マリー「妖精の涙がないとダメなんじゃない?」
ジム「そいや、マリーの姉ちゃんがそんな事言ってたよなぁ」
ウィル「どうしよう・・・」
一行が途方に暮れていると、空から5人を呼ぶ声が聞こえてくる。
アリス「みんな~」
ウィル「アリスさん、どうしたの?」
アリス「どうしたのじゃないですよ。町では門が破壊されたって大騒ぎです」
ウィル「あはは・・・」
ソウジ「むむ!アリス殿に運んでもらえばいいのでござるよ」
アリス「なんの話?」
ウィル「えっと、向こうに浮かんでる島に行きたいんだ」
アリス「そういう事ね。残念だけど、ウィル君より重い人は運べないわよ」
ソウジ「無念・・・」
マリー「あたしは平気だけど、男3人が無理よね~」
ジム「お前も無理なんじゃねぇの?」
マリー「あらジム君、なんか言ったかしら?」
ジム「なんでもありませーん」
ソウジ「仲良しでござるな」
ジム「どこがだよ!」マリー「どこがよ!」
ソウジ「息もピッタリでござるよ」
ジム「アリス、泣いてくれよ~」
アリス「えぇ!?」
マリー「いきなりそんな事言ってもわかるわけないでしょうが」
ジム「すまん、焦った」
マリー「虹の橋を架けるには妖精の涙が必要らしいんだけど~」
アリス「そういう事ね。ウィル君、宝玉を貸してくれる?」
ウィル「どうぞ」
宝玉を受け取ると、天高く飛び上がり、太陽に向かって掲げる。
ウィル「アリスさん、きれい~」
マリー「ホントきれいよねぇ・・・」
タオ「鱗粉が涙のようですね」
ソウジ「タオ殿は詩人でござるな」
タオ「画家たるもの表現力が大事ですから」
ジム「しかし、アリスはなにやってんだ?」
ウィル「う~ん、お祈り?」
タオ「見てください、橋が出てきましたよ!」
しばらくすると、宝玉が太陽の光を吸収して光を放ち、迷いの森と浮遊島を結ぶ虹の架け橋が現れる。
ウィル「すごーい!」
マリー「ロマンチックねぇ~」
ジム「これ、乗っても平気だよな?」
タオが試しに片足を乗せてみる。
タオ「平気みたいですよ」
ジム「そうはいってもやっぱこえーよ」
恐る恐る虹の橋を渡る5人。
ウィル「わ~、空中を歩いてるんだ~」
ジム「やっぱこえーよ~」
マリー「早く渡らないと橋が消えちゃうかもよ~」
ジム「冗談やめろよ~!」
ウィル「あはは」
タオ「絵に描きたいなぁ・・・」
ソウジ「拙者、地面以外の場所は苦手でござる・・・」
ようやく橋を渡り終える5人。
すると、突然ジムが大声をあげる。
ジム「なんじゃこりゃー!」
タオ「大きいですね」
ウィル「すごいな~」
マリー「フェアリルの樹と良い勝負じゃない?」
橋を渡り終えた一同の前には、巨大な樹が立ち塞がっていた。
第九話 完