第八話 二つの鍵
フェアリルの妖精王に会った一行は、鍵の情報を教えてもらい、町にいた詩人から鍵の在処を聞き出す。こうして試練の洞窟に鍵があると知った一行は、アリスと共に妖精の森へ向かったのであった。
――――――――――――妖精の森――――――――――――
アリス「ここが妖精の森です」
ウィル「見ためは普通の森だね」
ジム「本当に妖精の案内がなきゃ抜けれないのか?」
アリス「あら、疑っているの?」
ジム「そりゃ、信じろって方が無理だぜ」
アリス「私抜きで進んでみればわかりますよ」
ジム「よーし、ウィルいくぞ~」
ウィル「なんで僕まで~」
ジム「いいからこいよ~」
ウィル「しょうがないな~」
タオ「面白そうですね、僕もいきます」
マリー「あんたらねぇ・・・」
ソウジ「好奇心は大切でござるよ」
アリス「ふふ、そうね」
アリスの言葉の真偽を確かめるため、3人は森の奥へ入っていく。
しばらく待っていると、3人が驚いた様子で戻ってくる。
マリー「おかえり、どうだった?」
ジム「本当だった・・・」
タオ「ずっと一本道だったのに不思議です」
アリス「ふふ、だから言ったでしょう?」
ジム「すまねぇ・・・」
ソウジ「ジム殿の気が済んだ所で。アリス殿、案内をお願いします」
アリス「わかりました。皆さんついてきてください」
一同はアリスを先頭にして歩き出す。
ジム「なぁなぁ、なんで入り口に戻っちまったんだ?」
アリス「この森には、妖精達の魔法がかけられていてね」
アリス「幻を見せて人間の感覚を狂わせるの」
タオ「それじゃあ、僕達の見ている景色は全て幻?」
アリス「えぇ、そうよ」
ジム「マジかよー!?」
タオ「どうりで辿り着けないわけです」
ソウジ「珍妙でござるな」
ウィル「ねぇ、アリス。この先は木があって進めないよ?」
アリス「ふふ、言ったでしょ?これは幻よ。実際にはなにもないわ」
ジム「そうはいってもなぁ」
アリス「進んでみればわかりますよ」
木々の中を通り抜けていくアリス。
ウィル「わぁ~、すり抜けちゃった」
マリー「本当に幻なのねぇ」
タオ「面白いですね」
ソウジ「早く行かないと置いていかれてしまうでござるよ」
無事、妖精の森を抜けた一行は、試練の洞窟に辿り着く
――――――――――――試練の洞窟――――――――――――
ウィル「うわぁ、暗いよ~」
ジム「足元に気をつけろよ~」
マリー「ジメジメしてていやねぇ」
ガンッ!
ウィル「いてっ!」
ジム「大丈夫かウィル?」
ウィル「なにかにつまづいた~」
タオ「これは・・・、刀ですかね?」
ソウジ「むむ?ちょっと見せてほしいでござる」
タオ「どうぞ」
ソウジ「これは・・・、父上の刀!」
ウィル「えぇー!?」
ジム「って事はそれが一つ目の鍵か?」
ソウジ「抜いてみるでござるよ」
鞘から刀を抜くと、虹色の光が辺りを照らす。
ウィル「まぶし~」
アリス「この光は間違いなく虹の剣ですわね」
ジム「おいおい、ラッキーじゃねぇか~」
マリー「この調子で宝玉もいただきましょ」
ソウジ「(なぜこんな場所に父上の刀が・・・)」
虹の剣を手に入れた一行は、刀の放つ光を頼りに洞窟の奥へと進む。
ウィル「明るい~♪」
ジム「その刀、便利だな~」
ソウジ「フフッ、そうでござるな」
マリー「ねぇ、さっきからなんか変な音がしない?」
ジム「ん~?聞こえないが」
マリー「気のせいかしら・・・」
疑問に思いながらも先へ進む、すると。
マリー「キャッ!」
ジム「どうした?・・・。うげっ!」
タオ「2人ともなにやってるんですか?」
ジム「なんかネバネバしたもんに絡まった!」
マリー「なにこれ~、きもちわるい~」
ソウジ「皆、上を見るでござるよ!」
ウィル「上?、・・・うわぁ!」
アリス「巨大なクモ!?」
天井には6メートルはある、巨大なクモが巣を作っていた。
マリー「やだ~、きもちわるい~」
ジム「やばいって、やばいって」
ソウジ「2人とも、糸を切るからじっとしてるでござる」
抜刀術で次々と糸を切り裂いていく。
ジム「すまねぇ、助かった」
マリー「もう~、きもちわる~い」
タオ「早く逃げないと!」
ソウジ「拙者が奴の相手をする。その隙に皆は先に進むでござる」
ウィル「1人じゃ無理だよ!」
ジム「ウィル、俺達がいても足手まといになるだけだ!」
アリス「ジムの言うとおりです、ここは先に進みましょう!」
ソウジ「これを持って行くでござる」
虹の剣を差し出す。
タオ「ウィル君、早く!」
ウィル「ソウジ・・・、負けないでね!」
ソウジ「フフッ、任せるでござるよ」
ソウジに後を任せ先に進む5人。
タオ「広い部屋にでましたね」
ウィル「ねぇ、あそこにあるのって宝玉じゃない?」
ウィルが遠くにある台座を指差す。
アリス「間違いありません、あれが宝玉です」
ジム「ちゃっちゃと取って帰ろうぜ」
マリー「あそこに行くには、あの橋を通らないといけないわね」
そこには今にも崩れ落ちそうな橋が架かっていた。
ジム「これ絶対落ちるだろ・・・」
ジムが試しに乗ってみると、ギシギシと音をたてる。
ジム「これは無理だって・・・」
タオ「僕がやってみます」
続いてタオが乗ってみると、ギシギシと音をたてる。
タオ「僕にも無理そうです」
ウィル「僕も試してみる」
続いてウィルが乗ってみると、ミシミシと音をたてる。
ジム「後はマリーか」
マリー「あたしは軽いから行けると思うけど~。ここは男が行くべきよね」
ジム「お前なぁ・・・」
ウィル「怖いけど僕がやってみる」
ミシミシと音をたてながら、慎重に橋を渡るウィル。
時間をかけてようやく台座へ辿り着く。
ウィル「やったよー!」
ジム「でかしたぞー」
ウィル「えっと、これを取って・・・っと」
台座の宝玉を持ち上げた途端、洞窟に轟音が響き渡る。
ウィル「な、なに!?」
ジム「ウィルー!早く戻ってこい!」
タオ「橋が崩れそうです!」
ウィル「わ、わかった!」
急いで仲間の元へ向かおうと橋に乗ったその時、突然足場が崩れ落ちる。
ウィル「うわぁぁあああ!!」
橋と共に谷底へ落ちていくウィル。
ジム「ウィルーーー!!」
アリス「いけない!」
後を追うようにアリスも飛び込む。
タオ「アリスさーん!」
マリー「ちょっとどうすんのよ!」
ジム「どうする事もできねぇよ!」
その頃、落下している2人は。
ウィル「うわぁぁあああ!!」
アリス「ウィルー!」
ウィル「ア、アリスさん!?」
アリス「ウィル!手に掴まって!」
ウィル「う、うん!」
しっかりとアリスの手を握る。
ウィル「ど、どうするの?」
アリス「飛びます!」
ウィル「えぇー!?」
アリス「(お願い・・・、私にウィルを助ける力を・・・!)」
ウィル「ぶつかるー!」
地面に叩きつけられそうになったその時、
アリスの背中から蝶のように美しい羽が飛び出し、地面への激突を免れる。
ウィル「うぅ~・・・、あれ?止まってる・・・。アリスさん、その羽!」
アリス「ウィルのおかげよ」
ウィル「すごいキレイ~」
アリス「ふふ、ありがとう。落ちないようにしっかり掴まっててね」
美しい羽をはばたかせ、地上へ戻る2人。
その頃、地上で為す術もなく待っていた3人は。
ジム「クソッ、どうすりゃいいんだ・・・」
マリー「ねえ!なにか上がってくるわよ!」
タオ「あれは・・・。アリスさんとウィル君ですよ!」
ジム「なんだって!?」
谷から2人が飛び出してくる。
ウィル「みんな~」
ジム「ウィルー!」
タオ「アリスさん、その羽は?」
アリス「ウィルを助けたいと想う気持ちが形になったモノよ」
マリー「キレイねぇ~」
ジム「ばかやろ~、お前はいつも心配かけやがって」
無事に戻ってきたウィルを抱きしめるジム。
ウィル「苦しいよジム~」
ジム「なんだと~、このこの」
ウィル「くすぐったいよ~」
マリー「あんたら、アホやってないでソウジを迎えに行くわよ」
ウィル「そうだ!ソウジは?」
ジム「まだ、戻ってきてない・・・」
ウィル「はやく助けにいこうよ!」
アリス「そうね、早く行きましょう」
???「それには及ばんよ」
助けに行こうとしていると、血まみれになって歩いてくるソウジの姿が。
ウィル「ソウジ!」
ジム「お、おい!血まみれじゃねぇか!」
ソウジ「もうダメ・・・でござる。バタッ」
そう言い残すと、その場に倒れこむソウジ。
ウィル「マリー!早く治療してあげてよ!」
マリー「これは・・・。わたしにはどうする事もできないわね・・・」
ウィル「そんな~」
ジム「ソウジ!目をあけろよ!」
ソウジ「・・・は・・・た」
タオ「皆さん静かに!ソウジさんが何か言ってます」
ソウジ「は・・がへ・・・た」
ジム「なんていってるんだ?」
ソウジ「はらがへった・・・」
一同「・・・」
ジム「なんだそりゃー!」
マリー「怪我なんてしてないわよ。この血はさっきのバケモノのでしょ」
ウィル「よかった~」
ジム「なんだよ、心配させやがって~」
タオ「ははは、さすがソウジさんですね」
アリス「ふふ。フェアリルに戻ったら、ごちそうしてあげますよ」
ジム「しょうがねぇな~。タオ、ソウジを運ぶぞ~」
タオ「はい!」
ウィル「僕は?」
ジム「ソウジの刀を持ってくれ」
ウィル「うん、わかった!」
こうして、無事に二つの鍵を手に入れる事に成功した一行。
しかし、怪物との戦いで腹が減ったソウジはその場で動けなくなり、仲間に担がれてフェアリルへ戻るのであった。
第八話 完