第六話 帝
サニータウンについた一行は、サーカス団のアジトを探すため、サニーランドに向かう。そこで、セコビッチ三兄弟と色々あった末、行方不明の子供達と妖精の姫を救出する。事の次第を報告するべく、帝の元に向かう一行であったが、カマクラに着いた頃には真夜中になっていた。
――――――――――カマクラ 警備隊詰め所――――――――――
ウィル「はぁ~、つかれた~」
ジム「さすがに色々ありすぎたなぁ」
タオ「もうくたくたです」
マリー「はやく寝たい気分」
マコト「みんなお疲れ様。最高級の旅館をとっておいたから、今日はそこで休むといいよ」
ジム「最高級!?」
ウィル「なんだかすごそ~」
マコト「ハハハ、大きな露天風呂もあるよ」
マリー「やった~、おっふっろ~♪」
ジム「急に元気になりやがって」
マリー「旅にでてから、何日お風呂に入ってないと思ってるのよ」
タオ「そろそろ服も洗いたい所ですね」
アリス「マコトさん、急いで帝に渡したい書状があるのですが」
マコト「いくら姫様でも、こんな時間に会う事はできませんよ」
アリス「そうですか・・・」
マコト「明日には、必ず会えるようにしておきますので、今日は皆と一緒に旅館にお泊りください」
アリス「わかりました」
マコト「ソウジ、彼らを旅館に案内してあげて。それと、引き続き彼らの警護を」
ソウジ「承知」
今夜は旅館に泊まり、翌日帝に会うことになった一行。
――――――――――――――旅館――――――――――――――
ソウジ「ここがカマクラで一番大きい旅館でござるよ」
ウィル「すごーい!」
マリー「たのしみ~」
旅館に入ると、女将達が一行を出迎え、仲居が部屋に案内する。
仲居「すぐにお食事をお持ちいたしますので、しばらくお待ちください」
ウィル「は、はい」
ジム「そんな緊張しなくていいぞ、ウィル」
ウィル「なんだか落ち着かなくて・・・」
ジム「ま~、俺らみたいな田舎モンには合わないのは確かだな」
マリー「はやくお風呂入りたいわ~」
タオ「マリーさんはお風呂が好きなんですね」
マリー「女の子は皆好きよ、ね~アリス」
アリス「ふふ、そうですね」
ジム「嫌いじゃないけど、毎日入りたいとはおもわねぇな~」
ウィル「うん」
マリー「不潔ねぇ」
ジム「汚くてわるかったな~」
食事の準備が整い、仲居が次々と料理を運んでくる。
仲居「失礼します、お食事の用意ができました」
ジム「まってました~」
ソウジ「はらぺこでござるよ」
一同「いただきます」
ウィル「僕、生で魚を食べたのはじめて」
ジム「初めは変な感じだけど、慣れるとうまいな」
ソウジ「そうでござろう、もぐもぐ」
マリー「野菜も新鮮でおいしいわ」
アリス「人間の町にはこんな美味しい食べ物があるのね」
ジム「フェアリルにはないのか?」
アリス「フェアリルの料理は野菜や果物ばかりだから、味気ないのよ」
ジム「毎日それははキツいな~」
アリス「ふふ、そうね」
ウィル「タオ、なにやってるの?」
タオ「料理の具材と味の感じをメモしてるんです」
ジム「だんだん料理人みたいになってきてるぞ」
タオ「ははは。確かに、最近絵を描いてませんからね」
そんな話をしながら料理を食べ終える。
ジム「ぷはぁ~、食った食った」
ソウジ「美味でござったな」
マリー「アリス~、お風呂いきましょ」
アリス「ふふ、いいですよ」
ジム「俺達もいこうぜー」
ウィル「うん!」
―――――――――――――男湯―――――――――――――
ジム「いきかえるな~」
ウィル「ほぇ~」
タオ「眠くなりますね・・・」
―――――――――――――女湯―――――――――――――
マリー「あ~、ごくらくぅ~♪」
アリス「ふふ、ご機嫌ですね」
マリー「こんなお風呂に入る機会なんてそうそうないもの」
アリス「確かにそうですわね」
―――――――――――――――男湯―――――――――――――――
ジム「おい、ウィル~」
ウィル「なに~?」
ジム「女湯覗くぞ~」
ウィル「え~」
タオ「ジムさん、やめといた方がいいですよ」
ジム「おまえらそれでも男かよ~」
ウィル「お姫様もいるんだよ?」
ジム「それでも俺は覗くぞ!」
壁をよじ登り始めるジム。
ウィル「やめなよ~」
ジム「止めるなウィル。これも男の性だ」
タオ「なんですかそれ・・・」
ジム「よーし、そろそろ見えるぞ」
ジム「ん~?煙でよくみえね~」
ガンッ!
ジム「うげっ!」
ざっばーん
ウィル「ジム、大丈夫?」
ジム「後は頼んだ・・・ガクッ」
ウィル「ジム~」
―――――――――――――女湯―――――――――――――
アリス「なにも桶を投げなくても」
マリー「覗こうとする方が悪いのよ」
アリス「それもそうですね」
マリー「そういえば、アリスに羽は生えてないのね」
アリス「私の場合、色々と事情があってね・・・」
マリー「ふぅ~ん」
数分後。
マリー「う~ん、眠くなってきたわ」
アリス「そろそろ、出ましょうか」
マリー「そうね~」
体が温まった2人は、風呂を出て部屋に戻る。
―――――――――――――松の間―――――――――――――
ソウジ「む、2人とも戻ったか」
マリー「3人は?」
ソウジ「寝てるでござるよ」
マリー「あたし達も寝ますか~」
アリス「そうしましょうか。ソウジさんは寝ませんの?」
ソウジ「拙者は見張りでござる」
アリス「無理なさらないでくださいね」
ソウジ「お心遣い感謝いたす」
こうして5人は就寝する。
そして、翌朝。
ウィル「おはよ~」
ソウジ「おはよう」
ジム「もう昼だぞ、ウィル」
ウィル「僕、そんなに寝てたの?」
タオ「相当疲れてたようですね」
ソウジ「寝る子は育つでござるよ」
ウィル「あれ?アリス姫は?」
ソウジ「朝早くに、帝に会いに行かれたでござる」
ウィル「そうだ!僕達も会わなきゃ」
ソウジ「それでは、早速カマクラ城に向かうでござるよ」
――――――――――――カマクラ城前――――――――――――
門番「おまえ達、城に何のようだ?」
ソウジ「アリス姫救出の件で招かれている」
門番「聞いてくるから、ちょっと待っていろ」
数分後、門番がマコトを連れて戻ってくる
マコト「やぁ、よくきたね。兄上がお待ちだよ」
――――――――――――カマクラ城 帝の間――――――――――――
マコト「兄上、子供達を連れて参りました」
帝「入れ」
マコト「それじゃ、入ろうか。失礼のないようにね」
ウィル「な、なんだか緊張する」
ジム「こういうの苦手だなぁ」
マリー「あんたは喋らない方がいいわよ」
ソウジ「拙者が言葉使いを教えてあげるでござるよ」
順番に部屋に入り、帝の前で横一列に座る。
帝「よく来たな。アリス姫救出の件、まことに大儀であった」
ソウジ「ヒソヒソ・・・(勿体無きお言葉)」
ウィル「あ、も、もったきなきおとこば」
ジム「ヒソヒソ・・・(噛んだな)」
マリー「ヒソヒソ・・・(噛んだわね)」
帝「・・・」
ソウジ「ヒソヒソ・・・(謝るでござる)」
ウィル「謝るでござる」
帝「無礼者が!」
ウィル「あわわ」
ジム「あちゃー、怒らせちまった」
マリー「どうすんのよ~」
緊張のあまり、無礼を働いてしまうウィルであったが・・・。
ウィル「ご、ごめんなさい!」
帝「フハハハハハ!!」
ジム「な、なんだ!?」
帝「マコトの言う通り、素直で面白い子だな」
ウィル「えっ?」
マコト「ハハハ、ごめんごめん。驚かせようと思って」
ソウジ「フフッ」
ウィル「ひどいよ~」
帝「フハハハハ。すまんな、言葉使いなど気にせんでもよいぞ」
ウィル「は、はい!」
帝「それで、私に頼みがあるらしいな?」
ウィル「はい、フェアリルの関所を通れるようにして欲しいです」
帝「そんな事なら容易い。マコト、あれを」
マコト「はい、これ」
フェアリル関所の手形を受け取る。
マコト「それがあれば、好きなときに通れるよ」
ウィル「ありがとうございます」
帝「その手形は一部の要人だけが持つ特別なモノだ、大事にするのだぞ」
ウィル「はい!」
帝「ソウジ。お前もよくやってくれた」
ソウジ「勿体無きお言葉にござります」
帝「時にソウジ、イサムはまだ見つからぬのか?」
ソウジ「最近忙しくて探しに行けないのでござるよ」
帝「そうか・・・」
帝「お前たち、これからフェアリルへ向かうのであろう?」
ウィル「はい」
帝「そこで私から頼みがある」
ウィル「なんですか?」
帝「アリス姫をフェアリルの妖精王の元まで送り届けてほしい」
ウィル「そんな大事なことを僕達が?」
帝「心配するな、ソウジも同行させる」
ソウジ「うむ」
ウィル「わかりました、がんばります!」
アリス「皆さん、今しばらくお世話になります」
アリスを連れて外にでる一行。
――――――――――――カマクラ城前――――――――――――
ジム「挨拶するだけなのに、なんか疲れたなぁ」
ウィル「ほんとだよ~」
タオ「でも、これでようやくフェアリルに行けますね」
マリー「結構な寄り道しちゃったわねぇ」
アリス「皆さんはどうしてフェアリルに向かってるの?」
ウィル「シャンネラを探しているんだ」
ジム「そうそう、迷いの森を抜けなきゃならないんだろ?」
アリス「そういう事でしたか。それならば、この寄り道はとても意味のあるものでしたね」
ウィル「どういうこと?」
アリス「迷いの森は妖精王、つまり私のお父様の許可が無ければ入れないの」
ジム「なーるほど、姫様を助けて正解だったって事か」
アリス「ふふ、そういうことよ」
ウィル「よくわからないけど、シャンネラに行けそうだね!」
ソウジ「早速、出発するでござるよ」
町の出口を目指して歩いていると、遠くで聞き覚えのある声がする。
隊士「コラー!まてー!」
ミハエル「フフフ。バカめ、我々を甘く見ていたな」
ピエール「アハハハハハ!ツカマエテミロー!」
マイケル「アニキィー!牢破りするなんてさすがだぜ」
ミハエル「フフフ。私がなんの考えもなしに捕まるか」
ピエール「アハハハハハ!カギアケタノハボクダケドネ!」
マイケル「おまえはうるさいんだよ!バチィン!」
ピエール「イタァァァァァァイ!!」
隊士に追われながら、逃げ回る三兄弟。
ジム「あいつら、捕まってたんじゃ・・・」
ウィル「なんだか楽しそう」
マリー「懲りないやつらねぇ」
タオ「本当はすごい人たちなのかもしれませんね」
そんな様子を見ていると、背後からソウジを呼ぶ声がする。
マコト「おーい、ソウジ」
ソウジ「むむ?副長、どうなされた?」
マコト「君にしばらく休暇を与える」
ソウジ「なぜでござる?」
マコト「姫を送り届けるついでに、彼らの力になってあげてくれ」
ソウジ「楽園探しの手伝いでござるか?」
マコト「簡単に言えばそうだね。それと、旅をしながら父上も探すといいよ」
ソウジ「なるほど、帝の計らいでござるな」
マコト「ハハハ、さすがにバレるよね」
ソウジ「帝と副長のお心遣いに感謝いたす、お言葉に甘えさせていただくでござるよ」
こうしてソウジが正式に仲間になり、フェアリルを目指しクロスロードへ向かう一行であった。
第六話 完