第五話 妖精の姫
ひょんな事から道に迷い、誘拐されそうになるウィルであったが、通りすがりの警備隊【ソウジ】によって救出される。
そんなこんなで帝に会わせてもらうため、帝の弟である警備隊副長マコトの元を尋ねるが、いきなり会わせて貰える訳も無く、なにか功績を立てる事にした。こうして行方不明事件を解決する事になった一行は、
ソウジを一時的に仲間に加え、サニータウンを目指すのであった。
―――――――――――サニータウン――――――――――――
ウィル「さ、寒い・・・」
マリー「なんなのよ、この寒さ」
ジム「そんな寒いか?」
タオ「これは相当ですよ・・・」
ソウジ「ヘックション!、ぶるぶる」
ジム「おまえらオーバーだなぁ」
マリー「あんたなんで平気なのよ・・・」
ジム「あれ?言ってなかったっけ?俺、ここの出身なんだ」
ウィル「へぇ~、ジムの故郷なんだ~」
ジム「あぁ、つまらん所だけどな」
ソウジ「ジム殿、ここの名物料理はなんでござるか?」
ジム「そうだな~、クレープとワッフルかな」
ソウジ「おばちゃーん、わっふる6つ」
ジム「って、もう買ってるのかよ」
ソウジ「わっふるでござる、皆の分もあるでござるよ」
ウィル「ありがと~」
ジム「俺の分までわりぃな~」
タオ「いただきます」
マリー「ありがとう」
ソウジ「美味でござるな~、もぐもぐ」
ウィル「このカリカリしてる所、おいしい~」
ジム「お~?ウィルわかってるじゃねぇか~、この砂糖の焦げた感じがウリなんだよ」
タオ「これは料理の勉強になりますね」
マリー「なんか目的が変わってきてるわね」
ウィル「そういえば、サーカス団のアジトを探しにきたんだったね」
ソウジ「すっかり忘れてたでござる」
ジム「忘れちゃダメだろ・・・」
タオ「ははは」
ジム「アジトの場所なら大体検討はついてるんだがな」
ウィル「どこ?」
ジム「サニーランド」
ウィル「サニーランド?」
ジム「娯楽施設が集まった巨大な建物だ。サーカスもそこでやってるだろう」
ウィル「へぇ~」
ソウジ「早速行ってみるでござるよ」
―――――――――――――――サニーランド―――――――――――――――
ウィル「うわぁ、中はあったかい~」
マリー「死ぬかと思ったわ」
タオ「これだけ広いと、探すのが大変ですね」
ジム「適当にぶらぶらしてみるか」
――――――――――――サニーランド 飲食街――――――――――――
ウィル「美味しそうなものがいっぱいあるよー」
ソウジ「じゅるり」
ジム「さすがにここには無いだろ~」
マリ「次いくわよ」
――――――――――――サニーランド 遊園地――――――――――――
ウィル「うわー!面白そうな乗り物がいっぱいあるー!」
ジム「遊んでる時間はないぞ~」
ウィル「う~」
ジム「また別の機会に連れてきてやるよ」
ウィル「約束だよ!」
――――――――――――サニーランド 商店街――――――――――――
ウィル「ジム~、みてみて」
ジム「ん?プッ、ワハハハハハ!なんだその仮面」
マリー「アハハハ」
タオ「あはははは」
ウィル「そんなに変かな~」
ジム「ハッハハ・・・、笑い死ぬ・・・」
ソウジ「楽しそうでござるなぁ もぐもぐ」
―――――――――――サニーランド 従業員用通路―――――――――――
ジム「探してないのは、後はこういった所くらいだなぁ」
ウィル「勝手に入って怒られないかな?」
マリー「そんときゃそんときよ」
通路を歩いていると、何かに気づいたマリーが、突然立ち止まる。
マリー「ねぇ、なんか声がしない?」
ジム「ん~?なんも聞こえないぞ?」
マリー「気のせいかしら・・・」
タオ「・・・。皆さん、この部屋から声がします」
ジム「・・・。本当だ、微かだが聞こえる」
ウィル「マリー、よく聞こえたね」
マリー「まぁね~」
ソウジ「入ってみるでござるよ」
ジム「わわ、いきなり開けるなって!」
いきなり、部屋に入るソウジ
ソウジ「誰もいないでござるよ」
ジム「セーフ・・・」
タオ「ここは物置でしょうか?」
ウィル「玉とか輪っかとかあるよ~」
ジム「こりゃ、サーカス団が使ってるみたいだな。ますます怪しいぜ」
マリー「でも地下への入り口は見当たらないわね」
ソウジ「むむ!これが怪しいでござる(カチャ!)」
ソウジがいかにも怪しそうなレバーを下げると棚が動き出す
ジム「おー、あったなぁ」
ウィル「おもしろーい」
タオ「どういう仕掛けなんだろう・・・」
マリー「この下から、はっきり聞こえてくるわね」
ソウジ「しばし、様子をうかがうでござるよ」
――――――――――――地下牢屋――――――――――――
子供C「ここから出してよー!」
マイケル「オラ、騒ぐんじゃねぇ!」
子供A「うわーん、怖いよ~」
子供B「おかあさーん」
女性「子供達を怖がらせるのはおやめなさい!」
ピエール「アハハハハハハハ!」
マリケル「うるさい女だな。一度、痛い目にあわせてやろうか?」
ミハエル「やめろバカ、大事な商品に傷がついたらどうする」
マイケル「でもよアニキィ」
ピエール「アハハハハハ!マイケルオコラレテヤンノ!」
マイケル「お前はうるさいんだよ!、バチィン!」
ピエール「イッタァァァァァァァイ!!」
ミハエル「お前たちマジメにやれ!私はお客様をお出迎えするから、ちゃんと見張っていろよ」
マイケル「あいよ」
ピエール「ハーイ!」
階段を上がり、1階の部屋へ向かうミハエル。
ジム「やべ、誰か来るぞ!隠れろ」
ウィル「あわわ」
それぞれが適当な場所に隠れる。
ミハエル「ん?なんで扉が開いてるんだ・・・」
ミハエル「そうか、ピエールの奴が閉め忘れたな」
ミハエル「弟達にも困ったものだ・・・、ぶつぶつ」
ぶつぶつ言いながら、ミハエルが部屋を出て行く。
ジム「ひゅー、あぶねぇ」
ソウジ「危機一髪でござる」
ウィル「びっくりした~」
ジム「まだ下にだれかいるな」
マリー「話し声が聞こえるわね」
ソウジ「この感じだと、2人だけの様子。やるなら今でござるよ」
ジム「慎重に進もうぜ」
その頃、牢屋前で見張りを続けていた2人。
マイケル「見張りなんてつまんねーなー」
ピエール「マイケル!アソボー!アソボー!」
マイケル「そんな事してたら、アニキに怒られるぞ」
ピエール「マイケルノケチ!」
マイケル「この仕事が終わったら遊んでやるよ」
ピエール「ホントー?ホントー?ヤッター!」
マイケル「わかったら、お前は上の見張りでもしてろ」
ピエール「ワカッタ!ワカッタ!マカセロー!」
上の部屋を見張りに階段の方へ歩いていくピエール。
ピエール「アハハハハ・・・ハ?」
ソウジ「御免!」
バキッ!
ピエール「ウゲッ!」
階段で待ち伏せていたソウジのみね打ちで崩れ落ちるピエール。
その音に気がついたマイケルが階段の方を振り向くが、目の前には既にソウジの姿があった。
マイケル「ん?どうしたピエール・・・、おわっ!?」
ソウジ「御免!」
バキッ!
マイケル「うげっ!」
一瞬の内に2人を気絶させたソウジの元に仲間たちが集まるってくる。
ウィル「ソウジさん、すごーい」
ジム「ホントにバケモンだな・・・」
ソウジ「照れるでござるよ」
マリー「バカやってないで鍵を探しなさい」
騒ぎに気づいた女性が、牢屋の中から話しかけてくる。
女性「あなた達は何者です?」
ソウジ「むむ?おぬしこそ誰でござるか?」
女性「わたくしは、アリス=スカーレット」
ソウジ「ひ、姫様!?」
ジム「なにー!?」
アリス「質問に答えなさい」
ソウジ「これは失礼した。拙者、カマクラ警備隊 隊士のソウジと申す」
ウィル「僕達は行方不明の子供達を助けにきたんだ」
アリス「なるほど、話はわかりましたわ」
タオ「鍵が見つかりましたよ」
気絶したマイケルから鍵束を奪い取り、牢屋の鍵を開けて姫を助け出す。
アリス「ありがとう、助かりました」
ソウジ「姫様、子供達はこれで全員でござるか?」
アリス「えぇ、皆いるわ」
ジム「よーし、ミハエルが戻って来ない内に逃げるぞ!」
ソウジ「その前に、こやつらを牢屋に閉じ込めるでござるよ」
ウィル「ちょっとかわいそうだけど、しょうがないね」
気絶したマイケルとピエールを牢屋に入れ、鍵をかける。
ソウジ「これでよし、さぁ脱出でござる!」
無事に姫と子供達を救出する事に成功した一行は、上の部屋に戻り出口に向かう。
それとは行き違いに、客を迎えに行っていたミハエルが地下牢屋に戻ってくる。
――――――――――――地下牢屋――――――――――――
客「妖精の姫を本当に捕まえたんだろうな?」
ミハエル「フフフ、もちろんですよ」
ミハエル「さぁ、思う存分ご覧ください」
客「姫なぞおらんではないか」
ミハエル「ハハハ、なにをご冗談・・・を!?」
マイケル「アニキィー!すまねぇ、姫とガキ共を連れてかれちまった!」
ピエール「ボクハモウダメカモシレナイ」
ミハエル「お前たちがいながら何やってんだ!」
マイケル「だってよ~、バケモノみたいな奴が相手だったんだぜ」
ミハエル「言い訳は後にしろ!出してやるから、はやく探しに行け!」
マイケル「わかったよ、ピエールいくぞ!」
ピエール「アハハハハハハハ!オニゴッコダー!」
牢屋から出た二人は姫達を探しに行く。
客「ミハエル!これでは話が違うぞ!」
ミハエル「フフフ、心配いりませんよ。この建物からはそう簡単には出れません」
客「本当だろうな?」
ミハエル「お任せあれ。ポチっとな」
ミハエルが壁にあったスイッチを押すと、建物内に警報が鳴り響く。
ジム「げぇー!もうバレちまったぞ」
タオ「あ、壁が!」
前方の天井から壁が下りてきて通路を塞ぐ。
ウィル「行き止まりになっちゃった・・・」
ソウジ「拙者に任せるでござる」
ウィル「どうするの?」
ソウジ「切る!」
ジム「はぁー!?」
ソウジ「精神統一するので、しばし待たれよ」
精神統一を始めたソウジ。しばらく待っていると、追いかけてきたミハエルがやってくる。
ミハエル「フフフ。君達、無駄な事はやめたまえ。もう逃げられませんよ」
マリー「あらら、追いつかれたわね」
ジム「やべーな」
ミハエル「フフフ。大人しく姫を渡せば、君達と子供達は助けてあげてもいい」
アリス「それは本当ですか?」
ミハエル「フフフ、もちろんです。私は約束は守ります」
ジム「うそつけ~、バーカ」
ウィル「僕をだましたくせにー!」
ミハエル「じゃかわしい!お前らさっさと捕らえろ!」
団員達「イッー!」
ウィル達めがけて、団員が襲い掛かってくる。
ジム「くるぞ!」
ウィル「ソウジさんはやくー」
ミハエル「お、おまえはあの時の警備隊!」
ソウジ「デヤァー!」
叫びと共に刀を一振りすると、壁が真っ二つに割れる。
ジム「マジかよー!?」
ソウジ「さぁ、進むでござるよ」
ウィル「かっこいいー」
ミハエル「クッソー!お前らさっさと追いかけろ!」
団員達「イッー!」
下りてくる壁をモノともせず、次々と切り裂いていくソウジ。
ようやく外への出口が見えてきた頃、そこには先回りしていた二人が待っていた。
マイケル「ガハハハ!まってたぞ、お前ら!」
ピエール「アハハハ!ニガサナイヨ!」
ジム「だぁー!もう、しつけーよ!」
ソウジ「止むを得んな・・・、切る!」
アリス「ソウジ!人を殺めてはいけません!」
ソウジ「しかし、姫様。このままでは、はさみうちにされます」
ジム「くそー、どうするよ」
そうこうしている内に、追いついてきたミハエル。
ミハエル「はぁ・・・はぁ・・・。お、お・え・・ら。もう・・逃・・れ・・ん・ぞ。ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
マリー「おじさん、もうヘロヘロじゃない」
ミハエル「私はお兄さんだ!」
マリー「あら、元気になった」
ソウジ「この人数相手に、守りながらの戦いは厄介でござるな」
ミハエル「フフフ、だから無駄だと言ったのですよ」
アリス「やはり、私が彼らの元に行きます」
ミハエル「アリス姫、もう遅いですよ・・・。全員捕まえろ、姫以外は傷つけても構わん」
団員達「イッー!」
マイケル「ヒャッハー!久々に暴れてやるぜー!」
ピエール「アハハハハハハハ!」
ソウジ「やはり、切り捨てるしかないでござるな」
マコト「その必要はないよ」
一触即発の状況で響き渡る声、マコトの後ろには100人を超える隊士達が立っていた。
ピエール「ダレダオマエ!」
ソウジ「副長、遅いでござるよ」
マコト「ハハハ、ごめんごめん。兄上の許可を待ってたら遅くなっちゃってね」
ウィル「マコトさんだー!」
ジム「ひゅ~、助かったぜ」
ミハエル「なぜ警備隊がここにいる!」
マコト「なぜ、って君達を捕まえる為だよ」
マイケル「アニキィ!やっちまおうぜ!」
ミハエル「バカ!このバカ!警備隊が来てしまった以上、どうする事もできん」
マコト「ハハハ、君は賢いね」
ミハエル「フフフ、どこかのバケモノじみた奴のせいで、計画は台無しだがな」
マイケル「アニキィ・・・」
ピエール「・・・」
マコト「3人共、カマクラに来てもらうよ。兄上が直々に話したいそうだ」
ミハエル「帝が我々になんのようだ?」
マコト「会えばわかるよ。連行しろ」
隊士「ハッ!」
大人しく連行されるサーカス団
―――――――――――――――サニータウン―――――――――――――――
ウィル「あの~」
マコト「うん?なにかな?」
ウィル「これで事件は解決ですよね?
マコト「そうだね」
ウィル「これで帝に会えますか?」
マコト「断言はできないけど、会えるように取り計らってみるよ」
ウィル「ありがとうございます!」
ジム「よかったなぁ~」
ソウジ「副長、子供達と一緒にアリス姫がおりました」
マコト「なんだって!?」
アリス「初めまして、わたくしはアリス=スカーレット。あなたは帝の弟さんね?」
マコト「はい、マコトと申します。しかし、これは大変な事になったな・・・」
マコト「ウィル君」
ウィル「はい?」
マコト「さっきの発言は撤回だ」
ウィル「えぇー!?」
ジム「お、おい!話が違うじゃねーか」
マコト「最後まで聞きたまえ、帝には確実に会えるよ」
ウィル「えぇー!?」
ジム「マジかよー!」
マコト「アリス姫を助けたとなれば、妖精王にだって会える」
ウィル「やったー!」
マコト「ソウジ、君もよくやってくれた」
ソウジ「勿体無きお言葉」
マコト「子供達を送らないと行けないし、一度カマクラに戻ろうか」
ソウジ「そうでござるな。しかしその前に、おばちゃーん、くれーぷ一つ」
ウィル「おばちゃん、僕にも一つ」
ジム「おまえらなぁ・・・」
マコト「ハハハ、僕がおごってあげるよ」
ジム「じゃあ俺もー」
マリー「あたしもー」
タオ「僕もー」
アリスと子供達を救出した一行は、事の次第を帝に報告するべく、カマクラに戻る事になった。
第五話 完