第三話 寄り道
シャイナの町に辿り着いたウィルとジムは、マリーという少女に出会う。
病気の母親を救うために、シャンネラへと向かう事を決意したマリーは、
ウィルらと共に芸術の町ワンタイに向かい、日が暮れる頃にようやく到着した。
―――――――――――――ワンタイ―――――――――――――
ウィル「やっと着いた~」
マリー「すごい彫刻の数ね」
ジム「なんたって芸術の町だからな。ここにある作品は全てこの町の芸術家が作ったモノだ」
ウィル「これ全部!?すごいな~。あっちには壁に絵が描いてあるよー」
楽しそうにはしゃぐウィル
ジム「おーいウィル。あんまり1人で先にいくなよ~」
ウィル「平気平気~」
マリー「まったく、子供ね」
町を見物していると、建物の死角から少年が飛び出してきた。
ウィル「うわぁ!」
少年「うあ!」
ぶつかった拍子に少年が手にしていた紙が道路に散らばる
少年「いてて、あ!ごめんなさい。お怪我はありませんか?」
ウィル「う、うん。君の方こそ大丈夫?」
少年「ははは、僕は平気です」
少年は笑いながらそう言うと、散らばった紙を拾い集める。
その姿を見たウィルも拾い始め、駆けつけたジムとマリーもそれを手伝う。
ウィル「僕も手伝うよ」
少年「ありがとう」
ジム「おいおい、気をつけなきゃダメだぞウィル」
ウィル「ごめーん」
マリー「しょうがないわねぇ」
ジム「ん?これは絵画か?」
拾い上げた紙には美しい絵が掻かれている
少年「はい、僕は画家を目指しているんです」
ジム「へぇー、もしかしてこの壁に描かれてる絵もお前が?」
少年「これは僕の父さんが描いたものだよ」
ウィル「お父さんも画家なんだね」
少年「うん、僕は父さんに憧れて画家になろうと決めたんだ」
ウィル「僕と同じ歳くらいなのに、すごいな~」
少年「ははは、そんな事ないよ。ところで、皆さんはこの町の人じゃなさそうですが・・・?」
ウィル「えっと、僕達はシャンネラに行く途中なんだ」
少年「シャンネラですか・・・。確か父さんも若い頃に探していたような」
ジム「おお~、マジか~!」
少年「ええ、確かそんな事言ってましたよ」
ウィル「お父さんに会わせて貰えないかな?」
少年「いいですよ。ついて来てください」
こうして少年の家に向かう一同
―――――――――――――少年の家―――――――――――――
少年「ただいま~」
3人「お邪魔します」
少年の父「おかえり。おや?後ろの子達は誰かな?」
少年「そういえば自己紹介がまだでしたね。僕はタオ、この人が僕の父さん」
ウィル「初めまして、僕はウィルと言います」
ジム「俺はジム」
マリー「マリーです」
タオの父「そうかそうか、よくきたな」
タオ「父さん、皆がシャンネラの事を聞きたいらしいんだけど」
タオの父「シャンネラか・・・」
シャンネラという言葉を聞いた途端、タオの父親の様子が変わる。
タオ「どうしたの父さん?」
タオの父「君たち、シャンネラに何をしに行くんだ?」
ウィル「僕はシャンネラが本当に存在するのか確かめたいんです」
マリー「あたしはオルナ草を手に入れなくちゃならないの」
タオの父「ふーむ、そうか・・・」
ウィル「シャンネラについて、知っている事があれば教えてください!」
ジム「俺からもお願いします」
真剣な表情で頼み込む2人。
その熱意に押されたのかタオの父親が重い口を開く。
タオの父「わかった、そこまで言うなら教えてあげよう」
ウィル「やったー」
タオの父「楽園には迷いの森を通らないと行けないようなのだ」
ウィル「迷いの森?」
マリー「聞いた事あるわ、確か妖精の町フェアリルを抜けた先にあるのよね」
タオの父「うむ。そして迷いの森に入ったら最後、二度と出られないと言われている」
タオ「だから、話すのを躊躇っていたんですね」
タオの父「あぁ。しかし2人の熱意には負けたよ」
ウィル「とにかくフェアリルに行けばいいんだね?」
ジム「そうと決まれば行こうぜ」
タオの父「まてまて、まだ話は終わってないぞ」
フェアリルへ向かおうとする一同を引き止める。
マリー「まだなにかあるの?」
タオの父「実はな、フェアリルに行くための関所が封鎖されているんだよ」
ジム「どういうことだ?」
タオの父「なんでも、フェアリルの姫が誘拐されたとかでな。妖精王が封鎖命令を出したそうだ」
ジム「タイミング悪いな~」
ウィル「関所を通る以外にフェアリルへ向かう方法はないの?」
タオの父「フェアリルには結界が張られていて、関所以外からは入れないようになっている」
マリー「どうしようもないわね・・・」
思わぬ所で行き詰る3人。
するとタオが父親にある提案をする。
タオ「父さん、ヤマトさんに頼んでみてはどうでしょうか?」
タオの父「ヤマトか・・・、確かに彼の命令なら関所を通れるかもしれん」
ウィル「ヤマトさん?」
タオ「ヤマトさんはカマクラで一番えらい人、すなわち帝です」
ウィル「そんなにすごい人が僕たちに会ってくれるかな?」
タオの父「私の知り合いにヤマトと交流を持っている者がいるから、紹介してあげよう」
ウィル「本当ですか!ありがとうございます!」
タオの父親「ところで君たち。もう泊まる宿は決まっているのかな?」
ウィル「今日も野宿になりそうです」
ジム「宿に泊まる余裕ないもんな~」
タオの父「そうかそうか。なら今日は家に泊まるといい」
ウィル「いいんですか?」
タオの父「はっはっは、夕食もごちそうしよう」
ジム「おぉ~、ラッキー」
タオ「それじゃ、僕は夕食の支度をしますね」
夕食をごちそうになる事になった3人。
一同「いただきまーす」
ジム「ひゃー!うまそう~」
タオの父「遠慮しないで、どんどん食べてくれ」
ウィル「おいしい~」
ジム「この肉すげーやわらけ~」
マリー「あら、本当においしいわね」
タオの父「そうだろそうだろ、うまいだろう?。はっはっは」
タオ「料理はまだまだありますからね」
ウィル「タオは絵も上手いけど料理も上手だね」
タオ「ははは、父さんが料理下手だからね。代わりに僕が作ってたら上手くなったんだよ」
ジム「お前も大変だな~」
タオ「そうでもないですよ。皆さんが美味しいと言ってくれるだけで、僕は満足です」
ジム「いい奴だな、おまえは~」
マリー「あんたも少しは見習いなさいよ」
ジム「それはこっちのセリフだ」
タオの父親「賑やかでいいな、はっはっは」
夕食を食べ終わり、客室に案内される3人。
タオ「こちらの部屋を使ってください」
ウィル「ありがとう」
ジム「やっぱり布団は最高だー!」
マリー「野宿すると体が痛くなるものね」
タオ「それではごゆっくり」
タオがその場を離れると、すぐに布団に横になる3人。
ウィル「明日はカマクラに行くのかぁ・・・。楽しみだな~」
ジム「へへ、そうだな」
マリー「タオのお父さんの知り合いって、どんな人なのかしら」
ジム「やっぱ芸術家なんじゃねえの?」
ウィル「すやすや」
ジム「ん?ウィルの奴もう寝たのか。まぁ、初めての旅だしムリもないか」
マリー「あんたも早く寝なさいよ」
ジム「そうだな・・・。おやすみ」
マリー「・・・おやすみ」
疲れが溜まっていた3人は、朝までぐっすりと眠った。
―――――――――――――翌朝―――――――――――――
タオ「皆さんおはようございます」
ウィル「おはよう~」
ジム「はようっす」
マリー「おはよう」
タオの父「昨日はよく眠れたかな?」
ジム「そりゃもうぐっすりと」
タオの父「はっはっは、それはよかった。紹介状は書いておいたぞ。それと、これもやろう」
ウィル「この手形は?」
タオの父「カマクラに入るのに必要になるだろう」
ウィル「ありがとうございます」
タオ「そろそろ朝ごはんができるので、座っててください」
ジム「朝からうまいもんが食えるなんてありがたいぜ」
ウィル「おなかペコペコだよ~」
マリー「昨日、あれだけ食べたのにすごい食欲ね」
ジム「そりゃ、育ち盛りだもんな~」
ウィル「うんうん」
タオの父「男たるもの、そうでなくてはな。はっはっは」
タオ「おまたせしました」
ジム「おーきたきた」
一同「いただきまーす」
こうして朝食を食べ終えた3人は再び旅に出る準備をする。
タオ「皆さん準備できました?」
ウィル「うん」
ジム「もう、うまい料理が食えないと思うと名残惜しいぜ・・・」
タオ「料理なら旅先でも作ってあげますよ」
ジム「へっ?」
タオ「僕もついて行きます」
ジム「どうしたんだ急に?」
タオ「僕は父さんを越えるために、父さんが描けなかったシャンネラの景色を描きたいんです」
ジム「なるほどねぇ」
ウィル「タオなら大歓迎だよ!」
マリー「タオが来てくれると助かるわね、ジムとウィルはあんまり役に立たないし」
ジム「おまえなぁ・・・」
タオ「ははは、それじゃ出発しましょう」
タオの父親に挨拶を済ませる一行
ウィル「おじさん、お世話になりました」
タオの父「3人共、また遊びにきなさい」
ジム「俺達は先に外に出てるぜ」
外に出る一行。タオは父親に別れの挨拶を済ませる
タオの父「決心はついたのか・・・?」
タオ「はい、父さんが描けなかった景色を必ず描いてみせます」
タオの父「はっはっは、そうかそうか、がんばるんだぞ」
タオ「はい、それじゃ父さん。行ってきます!」
挨拶を済ませたタオは外で待っていた3人と合流し、次の目的地を確認する。
タオ「お待たせしました」
ジム「挨拶は済ませたのか?」
タオ「えぇ、もちろんです」
ジム「それじゃ次の目的地を改めて確認するぞ~」
ウィル「えっと、カマクラにはどうやって行くの?」
ジム「クロスロードを通って行くんだ」
ウィル「クロスロード?」
マリー「あんた本当になんも知らないのね・・・」
ウィル「えへへ」
ジム「クロスロードってのはだな、ワンタイ カマクラ フェアリル 妖精の森を結ぶ道だ」
ウィル「へぇ~」
タオ「まずはクロスロードに向かいましょう」
こうしてタオが仲間に加わり、紹介状と手形を手に入れた一行はクロスロードへ向かうのであった。
第三話 完