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虹の彼方  作者: Jemko
2/10

第二話 それぞれの想い

伝説の楽園【シャンネラ】を探すため、リカントの村を旅立った2人は、

情報を集めるべく、医療の町シャイナにやってきたのであった。

――――――――――――シャイナ――――――――――――

ウィル「うわぁ、大きい建物がいっぱいだ~」

ジム「これが都会ってやつよ」

ウィル「すごいな~。ジム、あれはなに?」


白い外壁の大きな建物を指差す。


ジム「あれは病院だな」

ウィル「病院?」

ジム「怪我とか病気になった人があそこで治療するんだ」

ウィル「そうなんだ~、入ってみたいな」

ジム「やめとけやめとけ、ロクな所じゃないぞ」

ウィル「そうなの?」

ジム「そりゃあ、針刺されたり、マズーい薬飲まされたりだな」

ウィル「うぅ・・・いやだなぁ」

ジム「だろ?あんな所、普通の奴なら行きたがらないよ」


そんな話をしていると、2人の背後から少女が怒った様子で話しかけてくる。


少女「ちょっとあんたたち!」

ジム「なんだおまえ?」

少女「さっきから聞いてれば、なに?病院がどれだけ大切な場所か知りもしないでベラベラと」

ジム「俺が嘘言ってるっていうのかよ!」

少女「誤解を招くような説明するなって言ってんのよ!」

ジム「なんだとー!」


今にも喧嘩を始めそうな二人を体を張って止めようとするウィル。


ウィル「2人ともやめてよ~」

ジム「止めるなウィル!売られた喧嘩は買わなきゃ男じゃねぇ!」

少女「女相手に本気になって、なにが男よ!」

ウィル「あ~もう~」


騒ぎを聞きつけて、病院から出てきた1人の女性が喋りながら近づいてくる


女性「マリーやめなさい」

マリー「ミネアお姉ちゃん!」

ミネア「2人ともごめんなさいね。この子ったらすぐ喧嘩するんだから」

マリー「だって、あいつが病院が嫌な所みたいな事言ったのよ!?」

ミネア「だからって病院の前で大声出して喧嘩していいの?」

マリー「うっ・・・」

ミネア「喧嘩をするのは構わないけど、時と場所を選びなさい」

マリー「ごめんなさい」


2人のやりとりを見ていたジムも冷静になりマリーに謝る


ジム「あの、俺もちょっと言いすぎた、わりぃ」

ミネア「うふふ、わかってもらえればいいのよ。ね、マリー?」

マリー「あたしも、その、いきなり怒鳴ったりしてごめん」

ミネア「はい、一件落着~♪」

マリー「う~、・・・そうだわ!」


そこでマリーにあるアイデアが浮かぶ


ジム「うわ~、嫌な予感」

マリー「2人に病院がどういう所か、実際に体験してもらいましょうよ♪」

ウィル「えぇー!」

ミネア「あらあら、それはいいわね~」

ジム「うわぁぁ勘弁してくれぇぇ」

マリー「男なんだからぐだぐだ言ってんじゃないの」


ミネアに引きずられながら病院へ入る4人

――――――――――――――病院内――――――――――――――

ミネア「ここが薬を調合する部屋」

ウィル「うわ~、すごい数のビンだ」

ジム「薬は苦いからダメなんだよな~、俺」

マリー「良薬口に苦し、って言って苦い薬はよく効くのよ」

ミネア「そうね~、でも美味しいに越したことはないわねぇ」

ジム「いやー、お姉さんは話がわかるな~。マリーと違って」

マリー「あんたねぇ・・・」

ミネア「うふふ、次の部屋にいきましょう」


ミネア「ここが診察室よ」

ウィル「気味の悪いモノがいっぱいありますね」

マリー「これは人間の体の模型よ、頭蓋骨 骨盤 内臓」

ウィル「う~、そういうの苦手なんだ」

マリー「だらしないわねぇ」

ジム「お前が強すぎるんだっての」

マリー「なんですってー!?」

ミネア「はいはい、2人とも次の部屋にいきましょう」


ミネア「ここは薬草の栽培をしている部屋よ」

ウィル「なんだか、良い匂いがします」

ジム「ん?言われてみれば確かになんか甘い匂いが」

ミネア「あら~、よく気がついたわね~」

マリー「ここにある花は薬草にもなるけど、匂いを嗅ぐ事で心をリラックスさせる効果もあるの」

ウィル「う~ん、なんだか眠くなってきました」

ジム「どんだけリラックスしてんだよ・・・」

ミネア「うふふ、人によっては効き過ぎちゃう事もあるのよ~」

ウィル「すやすや・・・」

ジム「おいおい、本当に寝ちゃったよ」

ミネア「あらあら、しょうがない子ねぇ。マリー、お家に連れてってあげなさい」

マリー「わかったわ。ちょっと黒いの、その子を運びなさい」

ジム「わかったよ、ってか黒いのって言うな!俺の名前はジムだ。ついでにこいつはウィル」

マリー「じゃあ、ジム。ウィルを運んでちょうだい。家に案内するわ」

ジム「くそ~、ウィルの奴、幸せそうな顔しやがって~」


寝てしまったウィルを背負い、マリーの家に向かうジム

――――――――――――――マリーの家――――――――――――――

マリー「ただいま~」

ジム「お、お邪魔します」

マリーの母「あら、おかえりなさい。後ろの2人は?」

マリー「あー、色々あってね。ウィルって子が寝ちゃったから家に連れてきたのよ」

マリーの母「あらあら、それは大変ね。布団に寝かせてあげて」


ウィルを布団に寝かせてようやく解放されたジム


ジム「ぷはっー、死ぬかと思ったぜ」

マリー「オーバーね」

マリーの母「お茶くらいしかないけど、どうぞ~」

ジム「あ、どうも。いただきます」

マリー「そんな事あたしがやるから、お母さんは休んでていいよ」

マリーの母「大丈夫よこれくらい・・・ゴホッゴホッ」

マリー「ほらぁ!やっぱり無理するから・・・」

ジム「お母さん病気なのか?」

マリーの母「病気って言ってもそんな大した事・・・ゴホッゴホッ」

マリー「もう!お姉ちゃん呼んでくるから、じっとしててよ!」


母親の体調が悪くなり、姉を呼びに病院へ行くマリー。


マリーの母「ゴホッゴホッ・・・。せっかく遊びにきてくれたのに、ごめんなさいね」

ジム「いえ、そんな。俺達の方こそ、いきなり押しかけてしまってすいません」

マリーの母「うふふ、いいのよ・・・。私がこんな体だから子供達には苦労させてね」


深刻な面持ちで話すマリーの母親を見て、静かに耳を傾けるジム


マリーの母「特にマリーには同年代のお友達なんていないと思うの」

    /「貴方達を連れて来た時ね、あの子すごく楽しそうな顔してたのよ」

    /「だから、ついつい私まで嬉しくなっちゃってね・・・ゴホッゴホッ」


咳き込む母親の背中をそっとさするジム


ジム「事情はわかったよ。マリーの事を思うなら、無理しちゃダメだって」

マリーの母「うふふ、あなたは優しい子ね。よければマリーと仲良くしてあげて」

ウィル「う~ん」


ようやく起きるウィル


ジム「やっと起きたか~」

ウィル「あれ?ここは?」

ジム「マリーの家だよ。お前が病院で寝ちまったから、俺が運んできたんだぞ」

ウィル「うわぁ、ごめんジム」

ジム「へへへ、いいってことよ」


そこへミネアをつれて戻ってくるマリー


ミネア「あらあら、お母さん大丈夫~?」

マリーの母「すこし咳がでただけよ」

ミネア「私はお母さんの容態を見るから、あなた達はゆっくりしててね~」


そう言って奥の部屋に入るミネアとマリーの母


マリー「ジム、お母さんから何か聞いた?」

ジム「あぁ、少しな」

マリー「お母さんはなんて言ってたか知らないけど、変な誤解しないでよね」

ジム「ちょっとこい」

マリー「ちょ、ちょっとなによ!」

ウィル「どうしたのジム!まってよ~」


突然、マリーの腕をつかみ外へ連れ出すジム。訳もわからず後を追うウィル

――――――――――――マリーの家の前――――――――――――

マリー「いたた、痛いって、放してよ!」

ジム「おまえ、母親が自分の事どう思ってるか知ってるか?」

マリー「知らないわよ」

ジム「自分のせいで、お前と姉さんに苦労かけてるって、悲しそうに話してたよ」

マリー「・・・。だからなによ、あんたには関係ないでしょ!?」

ジム「いーや、関係ある。こちとら、お前と仲良くしてくれって頼まれてんだ」

マリー「あたしはあんたと仲良くしたくないし、するつもりもないわ。話はこれで終わり、じゃあね」


その場を立ち去ろうとするマリーを挑発するジム


ジム「そうやって逃げるのか?」

マリー「・・・」

ジム「いい加減に気づけよ!お前のそういう所が母親に心配かけてるんだろ!?」

マリー「あんたになにがわかるのよ!?あたしがどれだけ母さんの事心配して、世話してると思ってるの!?」

ジム「そりゃ、よくはわかんねぇよ。けど、一つだけわかる事がある。お前のやってる事は、ただの自己満足だ」

マリー「自己・・・満・・足?」

ジム「母親を心配してるだの、世話してるだの、言ってる事やってることは立派だ」

 /「だがな、誰がいつお前にそんな事頼んだ?お前が母親の立場ならそんな事されてうれしいか?」

マリー「うっうぅ・・・うえええぇん」

ウィル「あわわわ」


突然、堰を切ったように泣き出すマリー。その姿を見てあたふたするウィル。


マリー「わたしだって・・・、ヒックヒック・・・、もう、どうしたらいいかわかんないんだもん・・・」

ジム「なにか事情があるなら話してみろよ、俺達にも協力できる事があるかもしれない」

 /「それに、誰かに話すだけでもすっきりするもんだぜ?」

ウィル「うん、そうだよ。僕達に話してみてよ」

マリー「うっうっうぅ~、2人とも・・・」


ようやく泣き止んだマリーから事情を聞く2人


マリー「母さんが重い病気なのは知ってるでしょ?」

ジム「あぁ、でも治らない病気じゃないんだろ?」

マリー「うん、でも病気を治すために必要な薬草が、とても希少なモノなの」

ジム「なんて名前なんだ?」

マリー「オルナ草」

ジム「あー、わりぃ。わかんねぇや」

マリー「でしょ・・・」

ウィル「そのオルナ草って、お店とかには売ってないの?」

マリー「売ってるけど、買おうと思ったら家が3軒は建つわよ」

ジム「げぇ~!マジかよ・・・」

ウィル「とてもじゃないけどそんなお金ないね」

マリー「だ・か・ら、あたしもどうしたらいいかわかんないのよ・・・」


しばらく沈黙する3人。すると、ジムがオルナ草について尋ねる


ジム「オルナ草ってのはどういう所に生えてんだ?」

マリー「ん~、普通は険しい山なんかに生えるわね」

ジム「山か~」

ウィル「普通じゃない所って?」

マリー「あ~、これは噂なんだけどね、シャンネラって知ってる?」

ウィル「うん、これから行こうと思ってるんだ」

マリー「そこには沢山生えてるらしいのよね~」

ウィル「へぇ~」

マリー「・・・えっ?今なんて」

ウィル「へぇ~」

マリー「その前」

ウィル「これから行こうと思ってるんだ」

マリー「あんたそれ本気で言ってんの!?」

ジム「そいつが嘘つけるように見えるか~?」

マリー「見えないわね」

ウィル「えへへ」

ジム「おーい、褒めてねえぞ~」

マリー「あんた達、本気でシャンネラがあると思ってるの?」

ウィル「うん、もちろんだよ!」

ジム「なぁ、マリー。お前もこないか?」

マリー「はぁ?なんでそうなるのよ」

ジム「よく、考えてみろよ。この町にいたってオルナ草は手に入らない」

 /「それに、あの様子だと・・・、そんなに時間はないんだろ?」

マリー「・・・」

ジム「まぁ、無理にとは言わないけどな。俺達が町にいる間に考えておいてくれ」


そう告げるとその場を後にするジム。


ウィル「マリー。ジムは口は悪いけど、本当はすごく優しいんだ。だから、その、ジムと仲良くしてね」

マリー「ふふふ、わかってるよ」

ウィル「えへへ、ならいいんだ」


ジム「おーい、ウィルー置いてくぞ~」

ウィル「待ってよジム~」

ジム「なに話してたんだ?」

ウィル「うーん、内緒」

ジム「なんだとー、このこの」


仲良さそうに喋りながら歩いていく2人の後ろ姿をじっと見つめるマリー


マリー「シャンネラか~・・・」

ミネア「あなたも行きたいんでしょ?」

マリー「わわ、お姉ちゃん!いつからそこに・・・」

ミネア「うふふ、ここはお家の前よ」

マリー「あー!って事は、お母さんにも聞かれたかな?」

ミネア「それはもうしっかりとね」

マリー「あちゃー」

ミネア「あなたがついて行きたい、って言うのなら、姉さんもお母さんも反対しないわよ」

マリー「本当?」

ミネア「えぇ。それにあの2人だけじゃ、怪我した時、大変よ~」

マリー「・・・そうだね。うん、私行ってくる!」

ミネア「じゃあ~はい、これ」

マリー「なにこれ?」

ミネア「着替えと~医療キットと~その他色々ね」

マリー「あたしが行くって、わかってたのね・・・」

ミネア「うふふ、早く追いかけないと2人を見失っちゃうわよ」

マリー「うん、お姉ちゃんありがとう!行ってきます!」

ミネア「そうそう、忘れてたわ。シャンネラに行くにはね、妖精の涙が必要よ」

マリー「妖精の涙?」

ミネア「えぇ、【妖精が涙を流す時、虹の橋は架かる】そういう言い伝えがあるわ」

マリー「わかったわ、伝えておくね」


こうしてマリーは2人の後を追いかける


マリー「2人とも待ちなさいよ~」

ジム「おっ、行く気になったか」

マリー「姉さんが行けって言うから仕方なくね」

ジム「素直じゃねーな~」

ウィル「あははは」

マリー「それで、シャンネラが何処にあるかわかってるの?」

ウィル「それがまだ【虹の彼方にある】という事しかわかってないんだ」

マリー「そんな事だろうと思ったわ。姉さんから伝言があるの」


姉に言われた通りに伝える


ウィル「妖精の涙か~」

ジム「この町にはこれ以上情報は無さそうだし、次はワンタイに向かうか~」

マリー「芸術の町ね」

ウィル「楽しみだな~」


こうしてマリーを仲間に迎えた3人は、次なる目的地ワンタイへ向かう。 第二話 完

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