最終話 おわりとはじまり
迷いの森で散々迷った挙句、ようやく虹の剣を使い森を抜けたが、そこには見渡す限りの断崖絶壁が広がっていた。途方に暮れていた一行の元にアリスがやってきて、宝玉を使い虹の橋を架ける事に成功。その橋を渡り浮遊島へ到着した一同の前には、巨大な人面樹が立ち塞がっていた。
―――――――――――浮遊島――――――――――――
人面樹「お前達、何者だ?」
ウィル「樹がしゃべったー!」
ジム「おいおい、やばいんじゃないのか?」
ソウジ「これまた珍妙な」
タオ「面白い樹だなぁ、絵に描いておこう」
人面樹「お前達、何者だ?」
マリー「一応、答えた方がいいんじゃない?」
マリーがそう提案すると、それぞれが自己紹介を始める。
ウィル「えっと、僕はウィル。ウィリアム=ゴールド」
ジム「俺はジム。ジム=マクスウェル」
マリー「あたしはマリー。マリー=サンドローズ」
タオ「僕はタオ。タオ=チャン」
ソウジ「拙者はソウジ。ソウジ=サガラ」
人面樹「そうかそうか。うむうむ。」
人面樹「続けて問う。お前達、何しに来た?」
ウィル「えっと、僕は伝説の楽園シャンネラを探しにきました」
ジム「俺はウィルのお守り」
アリー「あたしは、お母さんの病気を治す為に、オルナ草を探しにきたわ」
タオ「僕は、楽園の景色を描きにきました」
ソウジ「父上を探しに」
人面樹「そうかそうか。うむうむ。」
人面樹「では最後の問いだ。お前達、楽園を荒らさないと約束できるか?
ウィル「もちろん!」
ジム「へへ、見にきただけだしな」
マリー「薬草をちょっと貰うだけならいいわよね?」
タオ「決して、荒らしません」
ソウジ「父上が見つからなければ、すぐに引き返すでござる」
人面樹「・・・」
そう答えた後、人面樹はしばらく黙り込む
ジム「なんかマズいこと言っちまったか?」
ウィル「うぅ~、どうしよう」
不安に思いつつも待っていると、突然人面樹が口を開いた。
人面樹「お前達!」
ウィル「わぁ!びっくりした」
人面樹「すまんすまん。寝てしまった」
ジム「あのな~・・・」
ソウジ「愉快な樹でござるな」
マリー「それで、通してもらえるのかしら?」
人面樹「いいぞいいぞ、うむうむ。通りなさい」
そう言うと、人面樹が大きく口をあける。
ウィル「トンネルだー!」
マリー「入った途端にガブッ!ってならないでしょうね・・・」
ジム「それはシャレにならんぞ・・・」
アリス「私はここで待っていますね」
ウィル「ありがとう、すぐに戻ってくるね!」
人面樹の口に入り込み、長いトンネルを進むとようやく出口が見えてくる。
タオ「出口が見えてきましたよ」
ウィル「まぶしい~」
ジム「お、おい、これって・・・」
あまりにも突然にやってきたその瞬間に言葉を失う一同。
しばらく唖然としていると、堰を切った様にウィルが叫びだし、4人も後に続くように喋り始める。
ウィル「ついに見つけたー!」
ジム「本当にありやがったぜ」
マリー「へぇ~、思ったより綺麗なところね」
ソウジ「空気が美味しいでござるなぁ」
タオ「さっそく絵を描く準備をしないと」
トンネルを抜けた先には、詩人の言っていたとおりの風景が広がる、美しい楽園があった。
ようやく楽園に辿り着いた5人は、思い思いに探索をする事にする。
ジム「俺はここで待ってるから、用が済んだら戻ってこいよ~」
オルナ草を探すマリーとウィル
マリー「うーん、なかなか無いわね」
ウィル「オルナ草ってどんな見た目なの?」
マリー「そうね~、青くて、トゲトゲしてて、小さい草よ」
ウィル「う~ん、これ?」
マリー「今の説明でよく見つけられたわね・・・」
ウィル「えへへ」
楽園の風景を描くタオ
タオ「こんな素晴らしい景色は初めて見た・・・。しっかりと絵に残して、この感動を皆に伝えなきゃ」
父親を探すソウジ
ソウジ「父上ー!父上ー!・・・。やはり父上は・・・」
そんなこんなでしばらく時間が過ぎていくと、1人また1人と集合場所に集まってくる
ジム「おっ、戻ってきたな」
タオ「やっと絵が完成しました」
ウィル「つかれた~」
マリー「だらしないわねぇ」
ジム「みんな用事は済んだのか?」
マリー「これだけ摘めれば十分ね」
タオ「今まで描いたモノの中で最高の出来ですよ」
ソウジ「父上はここにはいなかったでござるよ」
ジム「それじゃ、アリスが待ってるし帰るか~」
再びトンネルを抜け、帰りを待っているアリスの元へ。
アリス「無事にシャンネラへ辿り着けたようですね」
ウィル「うん!アリスのおかげだよ」
マリー「本当にありがとう」
アリス「ふふ。それじゃあ、フェアリルに戻りましょうか」
再び虹の橋を渡りフェアリルへ戻る。
―――――――――――――フェアリル―――――――――――――
妖精兵「あっー!おまえら!」
ジム「うわー、気絶させた兵士だ」
妖精兵「こんな事してただで済むと・・・」
アリス「その事については、お父様に直接話します。皆さんを案内してちょうだい。」
妖精兵「は、はい!」
―――――――――――フェアリル 王の間―――――――――――
ウィル「妖精王さん、約束を破ってごめんなさい」
妖精王「ほほう~?なんのことだ~?」
ウィル「えっ?探索をやめろって・・・」
妖精王「ほほう~?わしゃ記憶力が悪くてのう~」
アリス「お父様・・・」
ジム「おっさんも良い所あるじゃねぇか」
ウィル「妖精王さん、ありがとう!
妖精兵「王様、そろそろお時間です」
妖精王「ほほう~、もう次の客の相手か」
ジム「それじゃあ、俺達はこれで」
妖精王「ほほう~。気をつけて帰るのじゃ~」
アリス「みなさん帰りの道中もお気をつけて」
ウィル「またねー」
ジム「元気でな」
タオ「また遊びにきますね」
マリー「お父さんと仲良くしてね」
ソウジ「お世話になりもうした」
こうして妖精王とアリスに別れを告げ、部屋を出て行く・・・。
妖精王「アリス~。あまり親に心配をかけるものではないぞ~」
アリス「お父様・・・、ごめんなさい」
妖精王「ほほう~。アリスはかわいいのう~。ゆるしちゃおうかのう~」
一行はソウジの故郷を目指す。
―――――――――――クロスロード―――――――――――
ソウジ「ここまででいいでござるよ」
ウィル「うん・・・」
ソウジ「元気出すでござるよ。いつでも会いにこれるでござろう?」
ウィル「そうだけど・・・、うっうっ」
泣き出すウィルに仲間が声をかける。
ジム「おいウィル、お前がそんなんじゃソウジも安心して帰れないだろ?」
マリー「男なら最後くらいしっかりしなさいよね」
涙を拭いながら震えた声でソウジに別れの挨拶をするウィル。
ウィル「うん、そうだね・・・。ソウジ、今までありがとう!」
ソウジ「フフッ、それでは拙者は帰るでござるよ」
イサム「そうだな、帰るか」
一同「・・・」
ソウジ「ち、父上ー!?」
イサム「久しいな、ソウジ」
ウィル「ソウジのお父さん!?」
ソウジ「父上!今までどこにおられた!」
イサム「いや~、愛刀をどっかに落っことしてきちまってな。それをずっと探してるんだよ」
ソウジ「これでござろう」
イサム「おぉー!なんでお前が持ってるんだ?」
ソウジ「色々あったのでござる。それより父上、帝が心配なさっておられる。早く戻られよ」
イサム「そうか~、あのヤマトがな~。かわいい所あるじゃねぇか」
ジム「帝を呼び捨てかよ・・・」
ソウジ「みんな、別れ際に慌しくなってしまってすまないな」
ウィル「そんな事ないよ!お父さんが見つかってよかったね!」
ソウジ「フフッ、ありがとう」
イサム「ソウジ~、帰るぞ~」
ソウジ「それでは、今度こそ帰るでござるよ」
故郷に帰るソウジとイサム。その姿が見えなくなるまで手を振り見送る4人。
ウィル「またねー!」
ジム「元気でなー!」
マリー「体に気をつけなさいよー!」
タオ「お元気でー!」
ソウジを見送り、タオの故郷ワンタイへ向かう。
―――――――――ワンタイの町 タオの家―――――――――
タオ「父さん、ただいま!」
タオの父「タオじゃないか!よくぞ無事に帰ってきたな!
タオの父「それで・・・、お前の理想とする絵は描けたのか?」
タオ「うん、これだよ」
父親に一枚の絵を見せる。
タオの父「おぉ・・・、これがシャンネラか・・・。」
あまりの美しさに、思わず言葉を失う父親
タオ「僕も最初にみた時は言葉を失ったよ」
タオの父「そうだろそうだろ、うんうん。これでお前も立派な画家だな」
タオ「いえ、僕なんてまだまだです。もっと修行を重ねて、これ以上の作品を描いてみせます」
タオの父「よく言った!それでこそ私の息子だな、はっはっは!」
ジム「おーい、取り込み中悪いんだが、そろそろ俺達は帰るぜ」
タオ「あ!そうでしたね」
タオの父「皆もよくがんばったな、気をつけて帰るんだぞ」
ウィル「タオ、またね!」
ジム「画家の修行がんばれよ」
マリー「無理しすぎて体壊すんじゃないわよ」
タオ「皆さんもお元気で!」
タオと別れ、マリーの故郷シャイナへ向かう。
――――――――シャイナの町 マリーの家――――――――
マリー「ただいま~」
ミネア「あら?おかえりなさい」
マリー「お母さんの様子はどう?」
ミネア「容態が悪化して寝込んでいるわ・・・」
マリー「で、でも、もう大丈夫よ!」
オルナ草をカバンから取り出して姉に渡す。
ミネア「これは・・・!見つかったのね」
マリー「うん、早くお母さんに飲ませてあげて」
ミネア「ええ!すぐに煎じて飲ませましょう」
ジム「これでマリーの母ちゃんも助かるな」
ウィル「うん、よかった・・・、うぅ・・・」
ジム「おいおい、泣くなよ」
マリー「2人とも、ここまで送ってくれてありがとう」
ジム「おう、母ちゃん元気になるといいな」
ウィル「また遊びにくるね」
こうしてマリーと別れた2人は、ウィルの故郷リカントの村に向かう。
―――――――リカントの村 ウィルの家の前―――――――
ウィル「ふぅ・・・」
ジム「そんなに緊張すんなって、素直に謝れば許してくれるさ」
ウィル「うん、入ろう!」
扉を開け中へ入る3人。
ウィルの父「お?ウィル、帰ってきたのか」
ウィル「ただいま、父さん。母さんは?」
ウィルの父「部屋にいるよ、顔を見せてやりなさい」
母の部屋に向かうウィル。
ウィル「母さん・・・」
ウィルの母「ウィル・・・?ウィルなのね!」
ウィル「母さーん!」
お互いを認識しあうように強く抱き締め合う2人。
ウィルの母「本当に心配したのよ!」
ウィル「ごめんよ、母さん」
ジム「へへへ、泣かせるねぇ」
2人の邪魔にならないように、そっとその場を後にするジム。
ウィル「母さん苦しいよう」
ウィルの母「これだけ母さんを心配させたんだから、文句言うんじゃありません」
ウィル「ジムが見てるだろ~」
ウィルの母「ジムなら出て行ったわよ?」
ウィル「えぇ!」
ようやくジムがいない事に気付いたウィルは、すぐに外へ飛び出しジムの後を追いかける。
ウィル「ジムー!」
ジム「どうした?」
ウィル「どうしたじゃないよ!突然いなくなるんだもの」
ジム「いやー、お邪魔かな、って思ってな」
ウィル「ジムのバカ!」
突然、大声で怒り出すウィル。
ジム「どうしたんだよ、急に」
ウィル「僕達は兄弟みたいなモノだって・・・、ジムが言ったんじゃないかぁ!」
そう叫ぶと抱きつくウィル。
ジムは照れくさそうに頭を優しく撫でる。
ジム「そうだったな・・・。悪かったよ」
ウィル「ぐすっ、ぐすっ」
ジム「ふぅ、わかったからもう泣くなって」
ジム「いきなり飛び出してきたんだろ?母ちゃんがまた怒っちまうぜ」
ウィル「うぅ~、そうだった・・・」
ジム「とにかく今日はもう家に帰るんだ」
ウィル「うん・・・、また明日ね」
家に帰ったウィルは、旅で起こった出来事、出会った人々の話を嬉しそうに両親に聞かせた。
そして翌朝、起床したウィルは1階へ下りていく。
ウィル「おはよう~」
ウィルの父「おはよう」
ウィルの母「あら、ウィルが自分から起きてくるなんて・・・」
ウィル「旅先では自分で起きなきゃいけなかったからね」
ウィルの父「ハッハッハ、それだけでも旅に行かせて正解だったな」
ウィルの母「そうね、すこし過保護にしていたかもしれません」
ウィルの父「そうだ、ウィル。お前宛にジムから手紙がきていたぞ」
ウィル「えっ?どうしたんだろう」
手紙には、こう書いてあってあった。
「ウィルへ
今回の旅で、まだまだ見たことの無い世界が沢山ある事を改めて実感した。
だから、俺はまた旅に出ようと思う。
お前に内緒で出て行くことを許して欲しい。
by.ジム」
手紙を読んだウィルは外に飛び出し大声で叫んだ。
ウィル「ジムのばかぁああーーーー!!」
こうして、ウィルの初めての冒険は幕を閉じたのあった。
最終話 完
最後まで読んでいただいた皆様、ありがとうございます。この作品は自分でもヒドイと思える所が多々ありますが、それも一つの思い出と思えばなかなか味わい深いモノ・・・。ってな訳で、今後も精進していきたいと思いまする。