第一話 旅立ち
主人公、ウィリアム(以下ウィル)は、村から一歩も出たことが無く、たまに村にやってくる詩人の話を聞いては、いつも心躍らせていた。少しずつ外の世界に興味を持ち始めたウィルは、今日も詩人の話を聞きに行くのであった。
――――――――――――リカントの村 ウィルの家――――――――――――
ウィルの母「ウィル~。朝よ、起きなさい」
ウィル「まだ眠いよ~」
ウィルの母「もう、早く起きなさい!外でジムが待ってるわよ」
ウィル「あっ!」
なにかを思い出したかの様に、急に起き上がるウィル。
すると、窓の外からウィルを呼ぶ声が聞こえてくる。
ジム「おーい、ウィル~。早くしないと、話が始まっちゃうぞー」
彼の名はジム。ウィルの親友であり、兄のような存在である。
ウィル「ごめんよジム、すぐに支度するよ」
布団から出たウィルは、窓から身を乗り出すようにしてジムに返事をする。
ウィル「母さん、もっと早く起こしてよ~」
ウィルの母「何度も起こしました。夜更かしなんかしてるから起きられないのよ」
ウィル「あ~もう、お説教は帰ってから聞くよ~」
母に説教されながらも、急いで服を着替え階段をおりていくウィル。
1階には朝食を食べていた父の姿があり、慌しい様子を疑問に思った父はウィルに問いかける。
ウィルの父「ウィル、随分と慌てているようだね?」
ウィル「ジムとの約束を忘れてたんだ」
ウィルの父「ハッハッハ、相変わらずだなウィルも」
ウィル「それじゃ、父さん、行ってくるね」
ウィルの父「あんまり遅くなるなよ~」
ウィル「はーい!」
勢いよくドアを開け、飛び出していくウィル。
外で待っていたジムが話かける。
ジム「まーた夜更かししてたのか?」
ウィル「そうなんだよ。ジムに貸してもらった本が面白くてね」
ジム「へへへ、そうだろうな。俺も朝まで読んでたからな」
そんな話をしていると、詩人のいる広場に到着する2人。
詩人「さぁさぁ、皆さんお集まりください」
ジム「なんとか間に合ったぜ~」
ウィル「あそこに座ろう」
空いていた席に座る2人。人々が席に座り終えたのを確認すると、詩人が語り始める
詩人「今日は伝説の楽園についてお話しましょう」
詩人「シャンネラ、それは人々が夢見た楽園」
詩人「草木が生茂り、花は咲き乱れ、川は透き通るように美しい」
詩人「楽園にはどんな病気でも治る植物や。見る者を虜にする美しい景色があるという」
詩人「けれど、誰も辿り着いたことが無い。誰も見たことが無い。」
詩人「これがシャンネラが伝説と言われる由縁なのです・・・」
詩人が語り終えると観客から拍手が送られる
観客「パチパチパチ」
詩人「ありがとうございます」
演奏が終わり1人また1人とその場を後にする中、ウィルはその場に残り、詩人に話しかける
ウィル「詩人さん!面白かったです」
詩人「やぁ、ありがとう。君はいつも来てくれているね」
ウィル「僕、外の世界の事がもっと知りたいんです」
詩人「なるほどね」
ウィル「シャンネラは本当にあるの?」
ジム「こんなの作り話に決まってるだろ?」
詩人「ははは、そうかもしれないね」
ウィル「そんな・・・」
詩人「だけど世界は広い、人が踏み入れないような場所にシャンネラはある。私はそう信じているよ」
ウィル「そうですよね!シャンネラはきっとあります」
ジム「お前は前向きだな~」
ウィル「えへへ」
詩人「少年、君に一つだけ良いことを教えてあげよう」
ウィル「なんですか?」
詩人「シャンネラは【虹の彼方】にある」
ウィル「どういう意味ですか?」
詩人「ははは、それは自分で考えないとダメだよ」
ウィル「わかりました、覚えておきます」
詩人「うんうん、それじゃ僕はまた旅に出るとするよ」
ウィル「また来てくださいね!」
詩人「あぁ、いつかまた寄らせてもらうよ」
こうして詩人は旅立って行き、2人は会話を続ける
ジム「それで、どうするんだ?」
ウィル「どうするって?」
ジム「シャンネラがあるか知りたいんだろ?」
ウィル「うん」
ジム「なら話は簡単だ、探しに行くんだよ」
ウィル「えぇー!でも村の外に出たことないし・・・」
ジム「それじゃ、一生この村からでないつもりか?」
ウィル「うぅ・・・、でも1人じゃ心細いし・・・」
ジム「誰も1人で行けなんて言ってないぞ?俺もついてってやるよ」
ウィル「えっ、本当!?でもいいの?」
ジム「なーに水臭いこといってんだよ。俺達は兄弟みたいなもんだろ?」
ウィル「そうだね!ジムが一緒に来てくれるなら心強いよ」
ジム「そうと決まったら旅支度しないとな」
ウィル「うん!あーでも、その前に母さんに聞いてみないと・・・」
ジム「親父さんには聞かなくていいのか?」
ウィル「父さんは許してくれると思うよ」
ジム「ん、どうしてだ?」
ウィル「僕と同じくらいの歳に、父さんも旅をしていたみたいなんだ」
ジム「へぇ~、血は争えないな」
ウィル「うん、だから父さんは平気だと思うんだ。ただ母さんが・・・」
ジム「ウィルの母ちゃん怖いもんな~」
ウィル「それでも僕は旅に出たい!」
ジム「ハハハ、その意気だ。そいじゃ俺は一旦家に戻るよ」
ウィル「うん、僕も家に帰って説得してみる」
ジム「準備ができたら家に来いよ」
一度家に戻る2人。
――――――――――――ウィルの家――――――――――――
ウィル「ただいま~」
ウィルの母「こんな遅くまで何処にいってたの!」
ウィル「ジムと話をしていたんだよ」
ウィルの母「ジムと遊ぶのはいいけど、ちゃんと時間を守りなさい」
ウィル「ごめんなさい」
ウィルの父「まぁまぁ、母さんその辺にしてあげなよ」
ウィルの母「あなたはウィルに甘すぎます」
ウィルの父「ハッハッハ」
ウィルの母「誤魔化さないでください!」
ウィル「あの~」
ウィルの父「ん?どうしたウィル?」
ウィル「実は2人に話があって」
ウィルの父「話してみなさい」
ウィル「シャンネラを探しに行きたいんだ!」
ウィルの父「シャンネラか・・・」
ウィルの母「なにを言ってるの!ダメに決まってるでしょ!?」
ウィル「ジムもついてきてくれるし大丈夫だよ!」
ウィルの母「なんと言おうとダメです!あなたからも言ってください!」
ウィルの父「行っておいで」
ウィルの母「あなたまでなにを言ってるの!?」
ウィルの父「君は過保護すぎるよ、男なら冒険の一つや二つするものさ」
ウィルの母「もう知りません勝手にしなさい!」
怒って部屋を出て行ってしまう母親
ウィル「母さん・・・」
ウィルの父「ウィル、これは少ないけど旅の足しにしなさい」
ウィル「ありがとう、父さん」
ウィルの父「母さんの事は父さんに任せて、お前は思う存分旅をしてくるといい」
ウィル「うん!行ってきます」
父から軍資金を貰い支度を終えたウィルはジムの家に向かう
――――――――――――ジムの家――――――――――――
ジム「両親に挨拶は済ませてきたか?」
ウィル「うん、母さんには反対されたけどね・・・」
ジム「いいのか?やめるなら今のうちだぞ?」
ウィル「母さんには悪いけど・・・、僕は行くよ!」
ジム「そっか、じゃあ行くか」
ウィル「まずはどこへ向かうの?」
ジム「そうだな~、一番近い所にあるから、医療の町シャイナだな」
ウィル「そこで情報を集めるんだね」
ジム「まぁ、そういうことになるな」
ウィル「それじゃあ、出発!」
こうしてウィルの旅は始まる 第一話 完
長編処女作品となります。色々と至らない所はございますが、楽しんで頂ければ幸いです。