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序章

 1995年7月14日

 街道を2人の青年が走っている。先頭を行くのは彫りの深い顔立ちをした、黒髪の17、8歳の男だった。

彼は振り返って呼びかけた。

「早く来いよ!」

「少しくらい待ってもいいだろ、バート!」

追走する薄い茶髪の男が言い返すと、バートはニヤリと笑ってそのまま右折。

「おい、待てって!!」

慌てて彼も右の道に入った。


 道を抜けたバートは、目の前の林道を駆け抜け、丘の上で止まった。前方に白煙が立ち上っている。

背後で足音がした。

「ようやく来たか、ネディ?」

ネディは息を切らして、死にそうな顔でバートとその向こうの白煙を見やった。

「あれか…?おま…お前の見せたいものって…」

ゼエゼエしながら問いかける。

「正解。昨夜の地震、隕石が原因とみた」

「…で?」

「立証しようと思ってな。ついでに暇そうなお前さんを連れて来た次第だ」

「サミーを連れて来ればいいだろ」

「サムが怒るぞ、その呼び方。あいつは俺らと違って勉学に精を出してるんで余裕が無い」

「あっそ…」

「そろそろ呼吸も落ち着いたな?行くぞ」

「はいはい…」

ネディは諦め顔でバートを追った。


 「こりゃ凄い……」

バートたちが見たのは、横倒しになっている何かの機体だった。

「軍の輸送ヘリじゃないかな?それも多分、相当デカい部類の」

「我が隕石説は撤回するとしよう」

「そうした方がいいだろうね…って、おい!」

バートはひしゃげたドアの隙間から機内を覗き込んでいた。

「おいやめとけって!」

「大丈夫だって」

「何があるか分からないだろうが!?帰って警察に知らせた方がいいって!」

ネディの言葉を聞き流しつつ、更に奥を見ようと身を乗り出した。と、

「逃げるぞバート!野犬だ!」

ネディが怒鳴り、バートを引っ張り出そうとした。が、バランスを崩し、諸共機内に転落する。

バートが身を起こしながら尋ねる。

「な、ナンダッテー!?」

「ネタやってる場合か!野犬の群れがいたんだよっ!とっとと逃げるぞ」

そう言って慎重に外に出て行くネディに続く。見れば、周囲の茂みには確かに黄色い目がそこかしこに光っている。

「3で走るぞ。1…2…」

「3!」

そのまま2人は風のように走り去っていった。


  だが彼らは逃げ切れたわけではない。むしろ、非情な運命の糸に絡め取られていたのだ。


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