天才型へのアドバイス
世間には、運動、勉強、遊び。何をやらせても他の人間よりうまく出来てしまう人間がいる。いわゆる天才型というやつだ。そういった人はやり方によっては偉業を成し遂げることができるだろう。しかし、現実はそう上手くいかない。むしろ、そういった人たちこそ失敗が多いのだ。ここでは、そんな天才型に成功のアドバイスをしようと思う。
まず、これを読んでいる天才型と自負する皆さんには、自分が人一倍高いプライドを持っていることに気づいてほしい。これは、ほぼ間違いなくといっていいだろう。自分で自分が天才型であることを感じている、ということは自分が人よりも高い能力を持っていると思っているということ。そこには自分に対する自信が間違いなくあるのだ。そして、アドバイスはそこにある。
「自信を失くせ」
自信を失くすこと。これは天才型の人間が成功するためにとても大事なことである。天才型の人間はどんな逆境にあっても、「自分はどうにかなる」と思っている。たとえば大事な試験が明日に迫っているのにいつも以上のことはしない、緊張感のない状態で臨んでしまう。彼らは会場に行くときに「あんまり勉強はしていないけど、本番には強いほうだしどうにかなるだろう」と思いながら行き、試験終了後にわずかな不安を持ちつつも、「なんだかんだいって受かるだろう」と思う。
そんなことはない!と天才型は思うのだろうが、そう否定している時点で君たちは心のどこかでそれを肯定していると思う。普通型の人間は、先ほどの例えを聞いたときに「前の日くらいはしっかり準備をしていないと不安でしょうがない」と言う。それが当たり前なのだ。だが、天才型は「不安」と言う物が無く(というより、不安でしょうがないと言うことが無く)、どこから来てるともわからない自信があるのだ。だから、結果が出ない。当たり前な話である。
成功をゴールとして普通型の人間と天才型の人間で競争するとしよう。天才型は普通型よりも走るスピードが速い。走り始めのまっすぐな道のころには簡単に差をつけてしまうだろう。そこまで無理をせずに普通型に差をつけた天才型は絶対的な自信を持ってしまう。逆に簡単に天才型に勝てないことと、自分の弱さを知った普通型は天才型を追い越したいという願望と、遅くても頑張るという努力を苦としない強い意志を持つ。
お互いそのまま次のステージへと進んでいくのだが、そこは今までの平坦な道とは違い坂道である。普通型を下に見ている天才型は面倒くさがり坂道を歩いて登る。しかし、大きな差と言えど、歩いている天才型と走っている普通型では速度が違う。しだいにお互いの差が縮まっていく。後ろから走ってくる普通型を見た天才型は歩くのをやめ、近くまで迫った坂の頂上まで一気に駆け上がる。そこから第三ステージに入るわけだが、このステージの終わりにお互い新たなものを手に入れる。追いついてきた普通型を簡単に引き離した天才型は、「俺が本気になれば普通型なんて相手じゃない」というさらに大きな自信を。対する普通型は、天才型との差が縮まってきたという実感と事実、もう少しで追い越せそうという希望が手に入る。頭のいい天才型の皆さんはこの勝負の結果がもう予想ついただろう。そう。勝つのは普通型である。
第三ステージは山あり谷ありの悪路。とても疲れる面倒な道だろう。しかし、始めに「努力を苦としない強い意志」を手に入れた普通型は変わらぬスピードで走り続けることができる。対して天才型は「きつい」と弱音を吐くばかりでまともに動こうとしない。いくら差があっても、そんな状態では簡単に普通型に追いつかれてしまう。さらに、絶対的な自信がある天才型は「俺が本気を出せばお前なんか」と思い、普通型に追い抜かされてもあせりもしない。「次のステージで抜き返してやる」と思いながらステージの終わりまで歩いてきた天才型はそこで気づく。取り返しようの無い差が、お互いの間にできてしまっていることに。普通型は天才型を追い越した後も走り続けていたのだ。このままやる気を失くし、ゴールにさえたどり着けない。これが天才型のBADENDである。
けれど、もし天才型が努力を苦としない強い意志を手に入れ走ることができていたら。それが無くても、せめて無駄に大きな自信を手に入れることが無く、普通型の接近に危機感を持ち必死になって走っていたら、結果はだいぶ違っただろう。
あなたに持つ無駄に大きな自信。それを捨てることは成功への近道だと考える。たまには危機感を持ってがむしゃらに頑張ってみてほしい。先ほどからの話で天才型にいいイメージは無いかもしれないが、あなたたちが普通型の人間のように頑張れば、誰も到達したことの無い高みへ行くことも可能だろう。あなたは選ばれた人と言うことを忘れないでほしい。