表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第七章:言霊の街、あるいは創造主の執筆

皆さま、お越しいただきありがとうございます。

暴力ではなく言葉を選び、ようやくオークテリアに平穏な再建の槌音が響き始めました。不惑を過ぎて、ようやく「責任」という荷物の背負い方が分かってきた気がしてるタイガです。 しかし、運命は非情です。


1. 瓦礫の上の沈黙

「……ひどいもんだな」

俺の脳内にある数多の「物語」をシステムに流し込み、暴走するバグを強引に上書きした翌朝。オークテリアの街は、奇跡的に「形」を保っていた。 黒い泥に呑み込まれた人々は元の姿に戻り、広場や路地で力なく倒れ込んでいる。だが、街を包んでいるのは安堵ではなく、重苦しい沈黙と、壊れた建物から立ち昇る白煙だった。

「お兄ちゃん、お疲れさま。脳、焼き切れてない? 1+1はわかる?」 キュアが心配そうに覗き込んでくる。彼女のマシンガンは、俺の「不殺の誓い」に従って、今はセーフティが掛けられたまま大人しく肩に収まっていた。 「……ああ。1+1は、2だ。だが、この街の損害は、足し算じゃ追いつかないな」

俺は、ズキズキと痛む頭を押さえながら、瓦礫の山を歩いた。 スカルはランドセルを抱え、半泣きで住人たちの救護に回っている。 「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」 彼が謝っても、住人たちは虚ろな目で彼を見るだけだ。一度バグに侵され、自分自身の「影」に食われた恐怖は、そう簡単には消えない。

「タイガ様……」 声に振り返ると、ガストン総支配人が、埃まみれの高級スーツを惨めに揺らして立っていた。 「街は壊滅的です。バルザス将軍を失い、オークの統治体制も崩壊しました。今、多種族の間で『誰がこの事態を招いたのか』という犯人探しが始まっています。……このままでは、内乱が起きますぞ」

45歳の独身作家、斉木大河。 これまで数々の「修羅場」を描いてきたが、現実の群衆が放つ負のエネルギーを前に、足が震える。だが、逃げるわけにはいかない。

2. 演説台という名の修羅場

広場には、不安と怒りに駆られた数千の住人が集まっていた。 人族、獣人、ドルフ……。彼らの視線は、高台に立つ俺たちに向けられている。 「あいつらだ! あの三人が来てから、街がおかしくなったんだ!」 「バルザス将軍を殺したのは誰だ!? オークの誇りを返せ!」

怒号が飛び交う。石が投げられ、キュアが瞬時にバリアを張る。 「お兄ちゃん、やっぱり一発デカいの撃ち込まないと静まらないよ!」 「ダメだ。暴力で黙らせれば、それはまた新しい『バグ』の種になる」

俺は、一歩前に出た。 マイクはない。だが、創造主としての「権能」を無意識に使い、俺の声は街の隅々まで、まるで心に直接響くように響き渡った。

「静かにしろ!……いや、静かにしてくれ」

俺の声に、広場が静まり返る。 「俺は、斉木大河。この異世界を……この街を、不器用ながらも愛している、ただの作家だ。今回の惨状、その元凶は俺たちにある。それは否定しない。……謝って済む問題ではないことも、わかっている」

俺は、瓦礫の山から一本の鉄パイプを拾い上げ、それを地面に突き立てた。 「俺は昨日、誓いを立てた。二度と武器を持たない、誰も殺さないと。……皆、見てくれ。俺には力がある。この街を消し飛ばすことも、お前たちをひれ伏させることも、容易だ。だが、そんなことはしたくない」

俺は、45年の人生で培った「言葉」のすべてを、魂に乗せた。

「この街は、多種族が共存する奇跡の街だったはずだ。オークの武力、人族の知恵、エルフの技……。それらが混ざり合って、この鉄壁の城を支えていた。……バグに呑まれた時、お前たちは何を見た? 隣人の恐怖か? それとも、自分自身の心の弱さか?」

「俺が描きたい物語は、誰かが誰かを支配する話じゃない。それぞれが、自分の足で立ち、隣人と笑い合える……そんな、ありふれた、だけど最も難しい物語だ。……頼む。俺に、その『続き』を書かせてくれないか。武器を捨て、瓦礫を拾い、この街をもう一度創り直す……その物語の、一員になってくれないか」

3. ペンは剣よりも……

沈黙が流れた。 永遠とも思える時間のあと、一人の老オークが、折れた槍を地面に捨てた。 「……バルザスが死に際、貴様に微笑んだという噂を聞いた。……ならば、我らも一度だけ、貴様の『物語』を信じてみようじゃないか」

一人、また一人と、武器を置く音が広場に響く。 45歳の俺は、全身の力が抜けるのを感じ、その場に膝をついた。 「……ふぅ。……胃が、死ぬほど痛い」

「お兄ちゃん、かっこよかったよ! 100点満点中、45点!」 キュアが、皮肉めいた、だが温かい言葉をかけてくれる。 「……45歳だからか?」 「当たり前でしょ!」

スカルが、ランドセルから何かを取り出した。 「タイガさん……これ。街の再建プログラムに、僕の『反省』を込めて、新しいアルゴリズムを組み込みました。もう、バグは起きさせません」

俺は、瓦礫の上に座り、懐からぬるくなった『えびさビール』を取り出した。 「……さて。再建の物語、第一章といこうか」

不殺の創造主、斉木大河。 暴力という近道を捨てた男の、果てしなく遠回りな、だが確かな歩みが、ここから始まる。


第7章、いかがでしたでしょうか。 「不殺」を貫くための、言葉による対決。45歳のタイガが、作家としての矜持をかけて群衆と向き合う姿を描きました。 力でねじ伏せるのは簡単ですが、心を通わせるのはこれほどまでに難しい。それでも、彼はその道を選びました。

次章、オークテリアの再建と、さらなる「異世界」の深淵へ。 武器を持たない神様が、次に何に出会うのか。

【感想・高評価のお願い】 「タイガの演説にしびれた」「キュアの45点評価が絶妙」など、皆さまからの感想や高評価をぜひお聞かせください。 皆さまの応援が、タイガの「言霊の旅」を支える何よりの糧となります! (ぺこり)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生, チート, ざまぁ 不殺, 既婚者ヒロイン, おばあちゃん) ディープステート, 暗殺, SNS
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ