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第五章:黄金の呪縛、あるいはバグの萌芽

皆さま、お越しいただきありがとうございます。

「城が建つ」ほどの大金……。前世でベストセラーを一本書き上げた時ですら縁のなかった額の資産を、キメラの石ころ一つで手に入れてしまいました。しかし、あぶく銭というのは恐ろしい。不惑を過ぎてなお、金に目が眩んだ連中の殺気には背筋が凍ります。 第5章は、豪華な接待と裏切りの予感、そしてこの世界の「バグ」が牙を剥く展開です。45歳、胃薬代わりにビールを煽る俺の奮闘、どうぞ見守ってください。


1. 迎賓館という名の鳥籠

「……ここが、宿か?」

俺が呆然と呟くのも無理はなかった。案内されたのは、街の喧騒から隔絶された丘の上に建つ、白亜の迎賓館だ。 「万種族商会」の総支配人を名乗る人族の男——名はガストンと言ったか——が、揉み手をして俺たちを招き入れる。 「左様でございます、タイガ様。これほど貴重な『魔獣核』をお持ちの貴方様を、汚い安宿に泊めるわけには参りません。ここはオークテリアでも最高級の施設でございます」

俺はキュアとスカルを振り返った。 キュアは、フリフリのドレスを翻して豪華なシャンデリアを鑑定するように眺め、スカルは「さすが僕の作った世界、内装のポリゴン数が高い!」とわけのわからない感心を上げている。 「……ガストンさん。俺たちはただの旅の商人だ。こんな大層なもてなしを受ける筋合いはないんだが」 「おやおや、ご謙遜を。あの石を換金した時点で、貴方様はこの街の有力者……いや、国家予算を動かせる立場なのですから」

45歳の独身作家、斉木大河。 年収数百万円で一喜一憂していた男が、いきなり「国家予算」と言われても実感が湧かない。だが、ガストンの細い目の奥に潜む、獲物を狙うハゲタカのような光だけは、嫌というほどはっきりと見て取れた。

「タイガさん、これ、完全に『囲い込み』だね」 キュアが、俺にしか聞こえない念話で囁く。 「だろうな。大金を持った素人を、野に放つはずがない。オークテリアの当局も、この商会も、俺たちの『正体』と『出処』を根掘り葉掘り聞き出すつもりだ」

2. 晩餐会の裏側と、スカルの「バグ」

その夜、俺たちはオークテリアの執政官代理を招いた晩餐会に出席させられた。 並べられた料理は、どれも地球の最高級フレンチをも凌駕する絶品ばかりだ。だが、俺の舌は砂を噛んでいるようだった。 正面に座るのは、顔に大きな傷跡を持つオークの将軍、バルザス。彼はワインを一口煽ると、低く唸るような声で俺に問いかけた。

「……タイガ殿。貴公が持ち込んだあの石、あれは東の『忘却の森』に住まう古のキメラのものだ。伝説では、あれを討つには一軍を動かさねばならんと言われている。……それを、貴公ら三人で仕留めたというのか?」

俺の背中に冷たい汗が流れる。 「……いえ、運が良かったのです。共食いでもしていたのか、弱っていたところを……」 「ほう。運、か。それにしては、貴公の連れている娘の担いでいる得物……あれは魔法杖スタッフには見えんが、凄まじい魔素を放っているな」

バルザスの視線がキュアの肩のマシンガンに注がれる。 「これ? これはただの護身用の飾りだよ、将軍さん!」 キュアが屈託なく笑う。 「……っ、キュア、余計なことを言うな」 俺は慌てて割り込んだ。45歳の胃がキリキリと痛み出す。

その時、隣に座っていたスカルが、突然異変を訴えた。 「……あれ? タイガさん……なんか、演算がおかしい」 「スカル? どうした」 スカルのランドセルが、不気味な振動を始めていた。 「僕のいじったコアプログラムの副作用かもしれません……。この街の『共存設定』、実は無理やりエントロピーを抑え込んで維持してるんです。そのリミッターが……外れかかってる!」

突如、館全体が激しい振動に襲われた。 シャンデリアが落下し、高級な磁器が粉々に砕ける。 「地震か!?」 バルザス将軍が立ち上がる。 「違う! お兄ちゃん、街の地下から巨大な魔素の奔流が溢れ出してる! これ、スカルの改ざんした『増殖アルゴリズム』が暴走してるんだ!」

3. 増殖する影、あるいは地獄の再来

窓の外を見て、俺は息を呑んだ。 美しい石畳の街並みが、内部から弾けるように隆起している。そこから這い出してきたのは、魔物でも、オークでもなかった。 それは、黒い泥のような質量を持った、「形のない生命体」の群れだった。 それらは出会う人々を飲み込み、その姿をコピーし、歪な人型の怪物へと変えていく。

「なっ……なんだ、あれは!」 ガストンが悲鳴を上げる。 「あれは……『虚無の写しヴォイド・コピー』。スカル、貴様……!」 「ごめんなさい! 人種を増やしすぎたせいで、プログラムが『もうテンプレートがないから適当に混ぜて増やしちゃえ』って判断したみたいで……!」

街中に悲鳴が響き渡る。 さっきまで笑い合っていた人族も、ドワーフも、エルフも。 その足元から湧き出した黒い泥に足を掬われ、次々と異形の化け物へと変貌していく。 「……お兄ちゃん、やるしかないよ」 キュアがマシンガンを構える。その瞳(サファイアの輝き)が、戦いの悦びに冷たく光った。

「……ああ、わかってる」 俺は、45歳の重い腰を上げた。 「平和を愛する博愛主義者」なんて、クソ食らえだ。 俺が創ったこの世界が、俺の目の前で、醜いバグによって食いつぶされていく。 それを、ただ眺めているわけにはいかない。

「キュア、掃射開始! スカル、お前はそのランドセルの中身を全部使って、リセットプログラムの残骸を探せ!」 「了解! いっけぇぇぇぇ、魔導極光マジック・レイ!!」

白亜の迎賓館のバルコニーから、極彩色の光線が夜空を切り裂いた。 俺の手には、いつの間にか一本の『えびさビール』が握られていた。 「……これを飲み干すまでに、このバグを全部掃除してやる」

45歳のタイガ。 人生二度目の修羅場は、黄金の宴から、絶望の駆除作業へと一変した。


第5章、お読みいただきありがとうございます。 ようやく手に入れた安息も束の間、スカルの「改ざん」が物理的なバグとなって街を襲います。 45歳のタイガが、大金よりも重い「世界の管理者」としての責任を突きつけられる展開。 次章、オークテリアの存亡を懸けた、創造主とバグとの死闘が幕を開けます。

【感想・高評価のお願い】 「スカルのやらかしが過ぎる!」「45歳、ビールの飲みっぷりがかっこいい」など、皆さまからの感想や高評価をお待ちしております。 皆さまの声が、私のキーボードを叩く指に魔法をかけてくれます(ぺこり)


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