第一章:クローゼットの終焉と、チープな雲海の彼方
皆さま、お越しいただきありがとうございます。
この世界は、私が望んだ理想郷ではありません。バグまみれで、不条理で、それでいてひどく愛おしい「ノイズ」に溢れています。私はここで、二度と誰の命も奪わないと誓いました。代わりに私のペンで、悪意ある者たちに「新たな役割(家畜)」を与え、世界を豊穣へと導くつもりです。
一人の作家として、そしてこの世界の不器用な創造主として、最高に泥臭い「ハッピーエンド」を目指して筆を進めます。
どうぞ、最後までお付き合いいただければ幸いです。
1. 狭隘なる終止符
俺か?……そう、これは俺だ。 鏡を見ているわけではない。俺は、クローゼットの中に押し込まれた「自分だった肉体」を、数歩離れた虚空から眺めていた。
45歳。働き盛り。独身。 締め切り前の修羅場を幾度も越え、ようやく中堅作家としての地位を固めつつあった俺の人生の結末が、この一畳にも満たない暗いクローゼットの中だというのか。 滑稽極まりない。
俺の足は床に着いていた。首を吊るには高さが足りないはずだが、身体は窮屈そうに折れ曲がり、無理やりその空間に収まっている。首には、使い古しのタオル。 タオルの結び目は俺の重みで食い込み、不惑を越えて少し弛み始めた頬はどす黒く変色している。
「……自殺、なのか?」 自問自答してみるが、記憶の断片は霧に包まれていて掴めない。 おかしい。あまりに不自然だ。俺は自分の部屋を見渡した。書きかけの原稿が散らばる机、飲みかけのコップが二つ。 来客があったのか? 誰と、何を話した?
意識が途切れる直前の記憶を探ろうとすればするほど、冷たい恐怖が溜まっていく。 やがて管理人の手で扉が開かれ、俺の肉体が運び出されていく。 俺はその背中を追おうとしたが、ふと足が止まった。 「……どうなるんだろうな、俺」 俺はベッドにへたり込み、一瞬、深く目を瞑った。
2. あの世のネットカフェ
次に目を開けた時、そこはもう俺の部屋ではなく、見渡す限りの雲海だった。 「……なんだ、このチープな風景は」 死後の世界というよりは、低予算の特撮セットのようだ。 遠くの方でうごめく死者の行列。隣の男に声をかけても「みんな並んでるから並んでるだけだ」と虚ろな返事が返ってくる。
俺は鼻で笑った。45年も生きていれば、群衆心理の空虚さは嫌というほど見てきた。 「勝手に並んでろ。俺は俺の道を行く」 天邪鬼な俺は列を離れ、雲海の上に突き出した巨大なピラミッド状の山を登り始めた。頂上には、壁のないドアが無限に続く、まるで「あの世のネットカフェ」のような空間が広がっていた。
3. 「Q&A」と不条理な契約
半開きのドアの一室。そこには「宇宙創造社ヤハ」が提供する**【異世界創造プロジェクト】**の端末があった。 「宇宙創造社……?」 SF小説のプロットか何かかと思ったが、項目は異様に具体的だ。 俺は投げやりな気分で「Yes」をクリックした。
その瞬間、身体中に未知のエネルギーが奔流となって流れ込み、視界が真っ白に染まった。
「スキャン開始。同調実行」
電子音が響き、現れたのは銀色レオタードに「Q&A」と書かれた顔面を持つ奇妙な生物。 「う、ほぉ〜ん、お兄ちゃ〜ん!」 俺は溜息を吐いた。死後の旅は、どうやらとてつもなく「センスの悪いもの」になりそうだった。 俺はこの生物を、俺の好みに合わせて「毒舌美少女コマンドー」へと再構成し、**「キュア」**と名付けた。
「キュア! 私はこれからキュアだよ! ありがとう、お兄ちゃん!」 「……45歳に向かってお兄ちゃんはやめろ。せめて叔父さん……いや、タイガでいい」 「いいえ、お兄ちゃんはおバカさんみたいだから、キュアがしっかりサポートしてあげるね!」
俺は「実行」ボタンを押した。 45歳、斉木大河。 人生の後半戦を異世界の「創世主」として迎えることになった。 それが、終わりのない苦労の始まりだとも知らずに。
さて、「平和を愛する博愛主義者」を自称しながら、次から次へと殺伐とした地獄絵図を描いてしまうのは、やはり私がこの歳になるまで人間の業というものを嫌というほど見てきたからでしょうか。
次は、キュアの猛毒に晒されながら、オークたちが支配する「城塞都市オークテリア」へ。 45歳の重い腰を上げ、タイガと共に私も旅を続けます。
【感想・高評価のお願い】 もし少しでも「続きが気になる」「このおじさんを応援したい」と感じていただけましたら、ぜひ感想や高評価をお聞かせください。皆さまからいただく温かな一言や評価こそが、孤独な執筆活動における何よりの栄養剤であり、次なる物語を紡ぐ最大の原動力となります。
皆さまと共に、このカオスな異世界の行く末を見守っていけることを願っております。




